都内運行しているタクシーの3台に1台は対応
今回の協業は、JR東日本のSuicaの利用履歴データを活用。Suicaを使って乗車した都内のJR各線や地下鉄、私鉄、バスの近距離交通の経費データだけに留まらず、日本交通、国際自動車、大和自動車交通のタクシー会社3社の支払いにSuicaを使用した場合にも、経費データを「Concur Expense」に連携することができる。つまり、地下鉄やバス、タクシーも、Suicaを使用している限り、経費データをConcur Expenseで自動処理できるというわけだ。
Suicaの使用履歴はSuicaデータサーバーに蓄積され、このデータをConcur Expenseに自動転送し、経費処理を自動化する。
「タッチした翌日、あるいは翌々日には経費精算が自動的に完了している。近隣交通費の決定版であり、日本のスタンダードになるサービスだ」と三村社長は自信をみせる。
実証実験に参加する日本交通では全国約5400台、国際自動車では約3600台、大和自動車交通では約2500台のタクシーを持つ。
三村社長は「トップ3のタクシー会社が、この取り組みに賛同したことになり、都内を日中運行している法人タクシーの3台に1台が対応することになる」とする。
日本交通の川鍋一朗会長は「日本ではアプリでクルマを呼び出すといった利用率が低く、93%の人が流しのタクシーを捕まえている」と前置きし、「だが、Suicaでタクシー料金の支払いをすることはすでにスタンダードとなっており、今回のサービスはこの上ない利便性につながる。すぐに実験に参加することを決めた。まずは、東京の企業では、交通経費の精算の必要がなくなるという世界を築き上げたい」とした。
東京以外の地域ではSuicaで決裁できる車が少ないが、一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会の会長を務める立場からも川鍋氏は「2020年には、全国の半分のタクシーでSuicaを利用できるようにしたい」とも語る。
また国際自動車の西川洋志社長は「2008年3月からSuica対応を行なっているが、今年に入ってからSuicaによる決済の伸びが高まっている。7月には、前年同月比46%の伸びを示した。しかも、1300~1400円の利用が多く、単価も安定している。利用頻度はあがっているなかで、今回の協業は経済的および時間的コストの削減などにもつながり、働き方改革にもつながっていく。この取り組みの成功を期待している」と述べた。
大和自動車交通の前島忻治社長は趣味だという俳句で、「事務処理の一歩前進、豊の秋」と詠み、「この一歩がさらに前進して、豊かな実りがあることを期待している」と発言。「IT技術活用の重要性が増すタクシー業界において、働き方改革の面からお手伝いができる」などとした。
Suica以外のICカード実験についても交渉中
2年間に渡る実証実験で、市場規模や利便性、提供価格、効果測定などをし、2020年の正式サービスを見込んでいる。この間、パイロット企業として従業員500人以上の企業5社を対象に実証実験を実施。サービス対象を全国の鉄道路線、タクシー会社に拡大することも視野に入れている。また、コンカーではSuica以外の交通系ICカードでの実証実験の実施に向けて、すでに2社と交渉をしていることを明らかにしており、活用範囲はさらに広がることになりそうだ。
利益を生まない間接費の代表とされる経費精算業務の削減は、重要な要素であると多くの人が気づきはじめている。
「今回の協業が、近隣交通網を高頻度で使うビジネスパーソンに対し、新しい価値を提供する大きな一歩であると確信している。今後、この取り組みを全国に展開することにより、日本全国のビジネスパーソンの利便性向上、働き方改革の推進を支援する」と三村社長は語る。自動化により、日本から交通費精算の作業をなくすのが、将来に向けたコンカーの目標となる。
これまでにも経費精算のデジタル化により改善を提案してきたコンカー。外資系企業でありながら、日本の市場に根ざし、改善をさらに続ける姿勢は崩さない。
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