ショップやサークルで、オリジナルのロゴを入れたアイテムを作ることがあるだろう。筆者もよく作るのだが、先日初めて中国のアリババを利用してみた。もちろん、安さを狙ってのことだが、手間がかかったり、チープすぎたりしても銭失いとなる。はたして結果は?
今回は、日本語で利用できるアリババのスマホアプリで、オリジナルグッズを大量発注する技を紹介しよう。
見たこともない価格の製品が大量に出品されている
筆者は、飲食店やウイスキー販売会社も経営しているので、業務用にいろいろなものを大量発注している。そんなとき、つきあいのある業者に見積りを取ると目が飛び出るような金額になることがある。確かに国内の企業はクオリティーが高いし、サポートもしっかりしている。しかし、用途によってはチープでもいいし、万全の保証がなくてもいいから、とにかく安くしてほしい、という場合もある。
そうなると、すぐ思い浮かぶのが中国製品。個人では輸入するのも面倒だし、かえってコストもかかりそう・・・・・・と、思っていた。そんな中、世界最大の流通企業「アリババ」のアプリが公開されていたので、なんとなく入れてみたら、なんと日本語で利用できるではないか。そこで、今回はスマホアプリで中国のアリババに大量発注してみることにする。もう騙されたらそれはそれでネタになると覚悟の上だ。
まずはアプリをダウンロードして、アカウントを作成する。「姓」「名」と書いてるので日本語で入力したら、英語のみとはじかれたので要注意。メールアドレスに加えてパスワードも設定するが、他のウェブサービスで使っている文字列を入力しないこと。
Alibaba.com(iOS版)
作者:Alibaba.com Hong Kong Limited
価格:無料
※アイコンの横の文字をクリックで、ダウンロードサイトにアクセスします。
アカウントを作成すると、アリババのショッピング画面が開く。試しに「Tシャツ」と日本語で検索してみると、大量にヒット。オリジナルロゴをプリントできそうな商品を見つけたので開いてみる。タイトルは「夏カスタマイズマルチカラーoネック卸売りプロモーションコットンtシャツ」となっている。原文は「Summer Promotion Plain Dyed O-Neck Short Sleeve High Quality Organic Cotton Blank Plain T Shirts」のところ、自動翻訳を利用しているようだ。
驚くべきは価格。プリントとTシャツ込みで53.3円~543.7円となっており、日本と比べると一桁安い。最低注文数は100枚なので、まとめ買いとなるが、それでも以前国内企業で作ったよりはるかに安い。
次に、ワイングラスを検索。「ワイングラス」とカタカナで検索すると出るは出るわ。100円とか200円とかの商品がごろごろ見つかる。そして、見た目のいい感じのグラスが、0.35~0.4ドルとなっている。38円から43.5円という計算だ。業務用が割安なのは当たり前だが、それでも安すぎる。不思議の国に迷い込んだのかと思うほど。
ただし、送料や入金方法などの情報が書いていない。そこで「お問い合わせを送信」をクリック。送信画面が開くのだが、すでに挨拶や製品について詳細を送るように定型文が入っている。日本語だが、自動翻訳されるのでそのまま「送信」をタップすれば送られる。
ちなみに、商品の画面でハートマークをタップするとお気に入りに登録できる。再検索するのは面倒なので、気になった商品を見つけたら追加しておこう。共有アイコンからは、他のアプリにURLを送信できる。
オリジナルUSBメモリーを50本作ってみる
販促のために筆者が経営しているBARのノベルティーを作りたかったので、アリババで購入してみることにする。「USBメモリー ロゴ」と検索し、ヒットした一覧を眺めていたらインテルのロゴマークの入った画像を発見。インテルのノベルティーを作ったところなら安心かも、と開いてみる。価格は1.9~9.9ドルで最低注文数は100個。1個9.9ドルだと日本の価格に近くなってくるが、まずは詳細を聞いてみることにする。日本語でもいいのだが、今回は間違いも防ぎたいので英語で聞いてみた。まずは個数は50個で発送先は日本と伝え、メモリー容量ごとの価格を質問した。
7月10日の15時14分に問い合わせを送り、返事が15時30分に到着。メモリーごとの価格が送られてきた。このスピード感はさすがだ。これだけで信頼感が増す。価格を見ると、なんと8GBで4.2ドルだと言う。個数が少ないのにそこまで高くない。ただし、ロゴの印刷費が22ドルかり、配送料が28ドルかかるとのこと。配送料はいいが、ロゴも別料金か! と思ったがそれでも合計金額は安い。
これならもっと買えるかもと100個200個の見積もりを取ったのだが、単価がそれほど安くならない。印刷代と輸送費だけが上がるので、今回は50個でいくことにした。
支払いが「T/T」(電信為替送金)かPayPalかと聞かれたので、PayPalを選択。すると、請求書が送られてきた。印刷費も輸送費もメールで聞いた金額と違うし、PayPal決済手数料というのが13ドル乗っかっていた。うーん、ちょいちょい高くなっていく。しかし、全部込み込みで8GBのUSBメモリーが5.43ドルというのは安い。
お金の支払いはPayPalが便利。クレジットカードを登録して利用するのだが、相手にはクレジットカード番号は通知されず、セキュリティ面で安心なのだ。もちろん、ウェブサイトは日本語に対応している。アカウントを作成したら、「支払いと請求」から「商品またはサービスの代金を支払う」をクリック。支払いのために教えてもらったメールアドレスを入力し、金額を指定すればいい。確定したら、自分のクレジットカードに課金され、相手にはPayPal経由で支払いが完了する。
入金後、先方が印刷などの準備に入る。印刷が完了したときに、製品の画像を送ってもらえるなど、日本企業でもしないようなサービスをしてくれるのに感心した。ステータスは随時報告され、発送時には追跡番号まで送られてくる。フェデックスのサイトでどこにあるのかを確認できるのも安心だ。
10日後に筆者の手元に届いた。日本の過剰包装に慣れた身にとっては、外装はまぁ海外の企業だな、といった感じ。中身はきちんとしており、注文通り50個ぴったり入っていた。容量も注文通り8GB。Windows 10のインストールメディアを作成できる容量だ。
しばらく使っているが、カバーが外れたり、印刷が消えたりすることもなく、十分なクオリティー。早い安い旨いで、がらっと海外ショッピングサイトに対する印象が変わってしまった。
オリジナルロゴ入りボールペンを1000本作ってみる
USBメモリーのショップが大当たりしただけなのかもしれないので、もう1回チャレンジ。今度はBARのロゴを入れたノベルティー用のボールペンを注文してみることにした。
前述の通り、アプリで問い合わせをしたのだが返事がない。催促すると、メールアドレスの方に返事をしたという。このあたり、対応は自由な感じだ。
価格は1000本注文時に、1本当たり0.685ドルで、送料が100ドル。フィルム費で50ドル、サンプル費で50ドル、生産日数は20日とのこと。Paypalで注文できることを確認し、ロゴデータを送ると、サンプル写真に入れ込んだ画像を送ってくれた。とても親切だ。もちろん、注文した。ボールペンが1000本で685ドル、印刷費と輸送費が100ドルずつ、Paypalの決済手数料はやっぱり取られて20ドル。しめて905ドルを振り込んだ。
USBメモリーと同様、サンプルロットの仕上がり画像、梱包中の画像が送られてきて、発送後はフェデックスの追跡番号を教えてくれた。作成期間で20日間かかると言われていたのだが、8月4日に振り込んで23日に届いたので、やっぱりちょっと早い。きっちり期間にマージンを取り、しかもそれに引きずられないで作業しているようで頼もしい。
相変わらず外装は汚いが、内装はきちんとしている。ボールペンは1本1本ビニール袋に入っている。印刷も問題なく、書き味も思っよりいい感じ。普通に普段使いできるクオリティーのボールペンだ。これで正味1本100円というのはとても安い。
その後もアリババでいろいろとやり取りしているが、きちんとビジネスをしている印象を受ける。まず、とにかくリアクションが早い。総じて日本よりもレスポンスがよく、何より逐次報告があるのが助かる。こちらの返事が遅いとがんがん催促してくるし、見積書さえ出ればそこから何か問題が発生することもない。今回の取引では、期限は守るし、製品のクオリティーも大満足。
もちろん、ステッカーや単なる印刷物など、日本企業の方が安い製品も多い。きちんと見積もりを取り、リスクも検討したうえでコストを抑えたいなら、アリババを活用するという選択肢を持っておいて損はないだろう。
筆者紹介─柳谷智宣
1972年生まれ。ネットブックからワークステーションまで、日々ありとあらゆる新製品を扱っているITライター。パソコンやIT関連の媒体で、特集や連載、単行本を多数手がける。PC歴は四半世紀を超え、デビューはX1C(シャープ)から。メインPCは自作、スマホはiPhone+Xperia、ノートはSurface Pro3とMacbook Air。著書に「銀座のバーがウイスキーを70円で売れるワケ」(日経BP社)、「Twitter Perfect GuideBook」(ソーテック社)、「Dropbox WORKING」(翔泳社)、「仕事が3倍速くなるケータイ電話秒速スゴ技」(講談社)など。筋金入りのバーホッパーで夜ごとバーをハシゴしている。好きが高じて、「原価BAR」を共同経営。現在、五反田・赤坂見附・銀座で営業中。
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