日本マイクロソフトは8月1日、2018年度(同社会計年度の2017年7月1日~2018年6月30日)の経営方針記者会見を開催。同社 代表取締役 社長の平野拓也氏が今年度の方針と組織体制について説明した。
まず初めに、マイクロソフトのグローバルでの2017年度業績を振り返り、「法人向けクラウド事業の売上高は189憶ドルだった。2018年度に法人向けクラウドで200憶ドル達成が経営目標だが、近いところまで拡大してきている」(平野氏)と述べた。サービス別の売上増加率は、Microsoft Azureが前年度比97%増、Office 365が同43%増、Dynamics 365が同74%増。Office 365の売上高はオンプレ版のOfficeを超えたという。
日本法人のビジネスについては、平野氏は2年前の社長就任時に「クラウド売上比率50%」を目標に掲げていた。平野氏就任時の日本法人のクラウド売上比率は7%。これが、2017年度第4四半期実績では47%まで拡大した。「まだ3%足りないが、2年で目標に近いところまできた。国内では、働き方改革の啓発によるOffice 365採用の拡大、Azureの認知度向上がクラウド売上の増加につながっている」(平野氏)。
インテリジェントクラウド&インテリジェントエッジ構想とは
次に平野氏は、マイクロソフトのサティア・ナディラCEOが先ごろ打ち出した新しい経営戦略「インテリジェントクラウド&インテリジェントエッジ」を解説した。
「(マイクロソフトがこれまで推進してきた)モバイルファースト&クラウドファーストの世界観は変わらないが、自動運転カーから毎秒数GBのデータが生成される時代、あるいはエッジデバイス間でテキストデータが音声データに変換されて活用される時代においては、エッジ側にもAI機能の実装が必要になる」と平野氏。インテリジェントクラウド&インテリジェントエッジとは、自動運転カーなどのIoTデバイス、モバイルデバイスなどのエッジ側にもAIを搭載し、それがクラウドのAIと連携するという構想だ。
この構想の要素技術として、平野氏は、(1)エッジデバイス間でシームレスにデータ連携する「マルチデバイス、マルチセンサー」のテクノロジー、(2)クラウドとエッジに実装されるアプリケーションとしての「人工知能」、(3)マイクロサービス、コンテナー、サーバーレスなどクラウドとエッジにAIアプリケーションを実装するための新しいアプリ開発・管理手法「分散協調型コンピューティング」の3つを挙げた。
Azureでは業種特化型ソリューションの営業に注力
2018年度に日本マイクロソフトが注力する分野は「働き改革」、「インダストリーイノベーション」、「デバイスモダナイゼーション」の3つテーマ、および「セキュリティ」だとする。
働き方改革については、日本マイクロソフト社内での制度改革とAIの徹底活用を推進し、そのシナリオを顧客にも提供していく。働き方改革の外部への啓発が国内でのOffice 365拡販につながった前年度までの実績から、今年度も引き続きこのテーマに力を入れていくようだ。また、育児リタイアした女性を日本マイクロソフトでインターンとして受け入れ同社や同業他社への再就職を支援するといった新しいプログラムの投入が予定されている。
インタストリーイノベーションは、Azureの拡販戦略だ。金融、流通、製造、政府・自治体、教育、ヘルスケアの各業界向けに、Azureの業種特化型ソリューションの営業を強化する。具体的な施策として、平野氏は、「2016年に立ち上げたIoTビジネス共創ラボのような業界コミュニティを、HRテックや広告・マーケの業界でも作っていく」、「業種向けの営業部隊を再編し、1つの営業チームに業種ごとのスペシャリストを集めることで営業を強化する」などを挙げた。
デジタルモダナイゼーションでは、6月と7月に国内発売したSurfaceファミリーの新モデルを「働き方改革に欠かせないベストデバイス」(平野氏)として訴求するほか、Microsoft HoloLens、OEMのMR対応デバイスの拡販に注力する。また、Amazon EchoのようなCortana搭載のスマートホーム向けデバイスも今年度中に国内発売する予定だとした。
クラウドビジネスへのシフトに向け組織再編、エバチームは解体
マイクロソフトはグローバルで、ライセンスビジネスからクラウドビジネスへのシフトを目的とした組織再編を進めている。日本マイクロソフトも、2018年度のスタートに合わせて組織体制を大幅に変更した。
新たに、法人向けクラウド専門の200人規模の営業部隊「クラウド&ソリューション事業本部」、クラウド導入後に顧客企業のプロジェクト成功をサポートする100人体制のチーム「デジタルトランスフォーメーション事業本部」、100人の社員が大手企業向けにFace-to-Faceで営業・サポートする「インサイドセールス事業本部」などを設置した。パートナービジネスも刷新し、これまでパートナー種別ごとに分かれていた組織を「パートナー事業本部」に統合。パートナー事業本部は、パートナーとともにAzureの業種特化型ソリューションを売っていく。
多くのスターエバンジェリストが所属していた「デベロッパーエバンジェリズム統括本部」の組織は解体された。エバンジェリストの大半は「コマーシャルソフトウェアエンジニアリング本部」に移動するとのことだ。