保証書のデジタル管理から車・不動産、そして保険へ進むWarrantee
日本発InsurTechスタートアップが本格始動
クルマや不動産も管理するCRM
現在、Warranteeが提供するデータベースは家電製品のみならず、自家用車やマイホームといった高額資産にまでおよんでいる。その嚆矢として、2017年4月全国に修理・買取査定ネットワークを展開しているオートバックスセブンと業務提携。オートバックスからユーザーの自家用車の時価情報を得て、Warranteeを通してその資産価値をユーザーに提示するという。
「日本には車検というシステムがある。一般の自家用車が新車だと3年、中古車だと1年ごとに受けなければならない。このタイミングが、メンテナンスはもとよりタイヤの履き替えや自動車自体の買い換えの時期となっている。この時期を把握することがキーポイント。弊社では、ユーザーの車検証に印刷されたQRコードから車両番号、車種、グレードをデータベースに登録する。その情報に基づいて現在の所有車の買い取り価格を即座に表示することもできる。たとえば、オートバックスの店舗で販売されているタイヤのバーコードと照らし合わせて、所有車のタイヤに合うかどうかなど、専門知識を持った店員がいなくてもそれらの情報がわかるサービスを提供していきたい」(庄野氏)
このような基本的な情報に加えて、自動車保険証の写真を撮影して登録すると、次の保険の更新月を知らせることや新たなプランを提示することもできるそうだ。車検の更新月は自動車保険の更新月でもあるのでピンポイントでユーザーに案内できるというわけである。
同様に、マイホームの査定もアプリで行なっている。住所をはじめ、自宅の構造や築年数を入力するとすぐに現在の資産価値を表示してくれる。クルマや家電などの資産を一元管理して、常に現在価値を確認できるので、資産状況を意識して生活することが可能になる。
24時間単位で加入できる”オンデマンド型保険”を目指す
では、彼らの基本的なビジネスモデルはどのようになっているのだろう。これまでの話でのマネタイズの部分は、修理やリサイクルの手数料などが考えられる。
「基本的には、BtoB。法人が弊社のデータベースを利用することで、月額システム利用料プラス、データ数に応じた課金をいただくことでマネタイズしている。もちろん個人情報の取り扱いも含めてセキュリティーには注意している。このシステムでは、消費者が持っている家電の利用年数もわかるので、ある程度の年数が経った、たとえば冷蔵庫を購入後10年も経ったユーザーには、ピンポイントで新商品の広告を出すことができる。これはすべての製品に対応できるので、このような広告事業も視野に入れている」(庄野氏)
しかし、Warranteeが目指す本丸は、あくまで金融庁の壁を乗り越えて提供する製品毎に24時間単位で加入できる”オンデマンド型保険”にあるという。世界を見渡すと、トロブというカリフォルニアの会社が、オーストラリアとイギリスで1日だけのオンデマンド型保険という商品を提供している。彼らは法律的にやりやすいところからサービスをはじめているが、Warranteeが狙うのもこのオンデマンド型保険のプラットフォームとしての地位だという。
「我々は、日本だけでなく世界でも展開できるような素地がある。今まで年半かけて保証書管理をはじめとした製品のデータを提供してもらうなど、さまざまなメーカーとつながっている。これは日本だけでなく海外のメーカーも同様。この強みを活かして海外でもサービスを展開していきたい」(庄野氏)
シリコンバレーに背中を押されて起業
海外への意識が強い庄野氏だが、そもそも起業する前にシリコンバレーに行き、VCに起業プランをプレゼンする、いわゆるピッチを行なっている。
「在学中に内定をもらっていたが、卒業前にITの聖地、シリコンバレーに行ってみたいと思い、大阪市主催のシリコンバレーツアーに自腹で参加した。そこで以前から考えていた保証書の電子管理というアイディアを披露したら、リスクの話ばかりする日本とは違い、『もっとこうしたらいい』というような積極的な事業へのハンズオンを体験。自分がやろうと思っていたこと以上の成果が10日間ほどで得られた」(庄野氏)
シリコンバレー訪問をきっかけにVCから資金を得ることになり、大学卒業から半年ほど経った2013年10月に起業に至る。その資金を元に翌2014年にはアプリをローンチ、サービスを開始した。その後、クックパッドなどからも出資を得て、自動車業界のオートバックスや不動産業界のアットホームなどとも資本提携や業務提携をおこなっている。
「クックパッドがレシピ会社なのに対して、弊社は保証書管理アプリサービス。この関連性をよく聞かれるが、クックパッドのユーザーは、レシピを見て調理家電で調理する。しかも高級なこだわりの調理家電を所有しているユーザーが多い。その部分をサポートしていきたいという想いがクックパッドにあり、家電の保証をサポートする役割を弊社が担う」(庄野氏)