安倍総理や小池百合子都知事などが推し進める「働き方改革」。その一環として注目されている、通信を活用した在宅労働などのいわゆる「テレワーク」に対する意識調査をエン・ジャパンが実施し、調査結果を発表した。
調査は労働者向けと企業向けを実施。企業向けではテレワークを「IT等の活用で時間・場所の制約を受けない勤務形態」と定義し、それぞれ社会人9586名、企業642社から回答を得たという。
労働者と企業のニーズは乖離している
今回の調査では、全回答の50%とほぼ半数の労働者がテレワーク未経験で導入を希望している。一方でテレワークを導入しておらず今後も導入予定はないという企業は全回答の49%とほぼ半数にのぼり、テレワークに対する労働者側と企業側の温度差が浮き彫りになった。
テレワーク未経験の労働者は全体の53%が「テレワークで働いてみたい」と回答。年代別では20代が59%、30代が52%、40代が49%と、緩やかながら若年世代の方がテレワークに魅力を感じるという結果だった。その目的は「通勤時間を短くしてプライベートを確保する」が73%(全回答者の36.5%)となり、プライベートを重視する傾向が強い。あるいは多くが長距離/長時間通勤を解消したいと考えられる。
一方テレワーク未導入の企業は「テレワークに適した業務がない」ことを理由に挙げる回答が45%(全回答のおよそ41%)。ここからもやはり両者の隔たりは大きく、実際に9割の企業がテレワーク未導入ということから、現在は多くのケースで企業側の意向に労働者が従っていると言える。
長時間労働の削減がテレワークのポイント
実際にテレワーク経験済みの回答者を見ると、労働者側の67%が「今後も働きたい」、企業側の78%が「今後も積極的に推進する」と、互いに高い数値を示している。労働者側からは時間や場所の自由を理由と成果に挙げるものが多く、生活リズムの改善や急なスケジュール変更に対応できるといった声があった。内容の多くは「プライベートを確保」「業務に集中」といった内在要因で、「出産・子育て」「介護」といった外在要因は比率としては10%前後と少数だった。
企業側では、導入目的は生産性の向上が64%で最も多かった一方、オフィスコストの削減を挙げた企業は7%に留まった。実際の利点でも生産性の向上を挙げる企業が44%と最多だが、25%が導入目的に挙げた「長時間労働の削減」は、実際の利点に挙げた企業は7%だった。
テレワークは時間管理の問題を如何に解決するかが鍵となるだろう。実際に経験した労働者は仕事とプライベートの切り分けなどの問題を多く指摘しており、これはテレワーク未経験者の懸念事項と重なっている。企業側でも時間管理や会議出席といった点を多く問題として挙げているが、これらはいずれも時間に関連する要素だ。あるいは1日単位、1ヵ月単位といった現状の労働価値観とは異なる労働のあり方が、テレワークの成功には必要かもしれない。