AMDのGPUも、なかなか新製品が出ないということもあって、こちらも昨年7月の連載363回以来のアップデートである。前回はRadeon RX 480が発売された直後で、Radeon RX460/RX470の発売が間もなく……というタイミングだったので、まずはこのあたりから解説しよう。
Radeon RX 470/460を投入
マイニング需要で価格高騰
2016年8月、まずRadeon RX 470が、次いでRadeon RX 460がそれぞれ発売開始となった。どちらもミドルレンジ向けとして、そこそこの性能と手頃な消費電力ということもあって、それなりに人気を博している。
もっとも今年3月あたりから、突如として仮想通貨マイニングが流行り始めた。Radeon RX 470が最も効率が良いということで、これが最初に市場から払底したというのも凄い話ではあるのだが。
この結果、今年2月にはRadeon RX 470が2万円そこそこ、Radeon RX 460が1万円少々で購入できていたのが、今ではRadeon RX 470の価格は4万円以上に跳ね上がっている。需要と供給で価格が決まる世界なのでこれは致し方ない。
ちなみに本気でマイニングを始めた場合、問題になるのは消費電力あたりのマイニング性能、要するに電気代であって、数ヵ月回すとビデオカードの価格などどうでもいい(たとえカードの価格が10万円であっても、消費電力あたりのマイニング性能が高ければ元が取れる)世界なので、高くても売れていくという、ある意味HPC向けシステムと同じ論理が働いている。
それもあって4万円でも安い、というユーザーは確実にいるようで、結果マイニングをしないユーザーに手が届きにくくなってしまっているのはどうしたものやら。
話を戻すと、連載363回でPolaris 11コアのダイサイズを110~120mm2と推定したが、実際は123mm2であった。微妙に外れている気もするが、まぁ許容範囲内と考えてもらえれば幸いである。
さて、ここから半年以上の間、同社は新製品を追加してこなかった。厳密に言えば、中国市場向けにRadeon RX 470Dという製品を2016年8月に追加しているが、これはRadeon RX 470の仕様をもう少し落としたグレードである。
シェーダーの構成を2048:128:32から1792:112:32に変更。動作周波数は据え置きであるが、その代わりメモリーをGDDR5 6.6GHzからGDDR5 7GHzに引き上げたもので、中国市場向けに低価格化したバージョンになっている。
VideoCardzのレビューによれば、中国における価格は、RX 470に比べて200元(執筆時のレートでは3200円ほど)安いことになっている。
| 中国市場でのRadeonの価格 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| Radeon RX 460 | 899元(約1万4400円) | |||||
| Radeon RX 470D | 1299元(約2万800円) | |||||
| Radeon RX 470 | 1499元(約2万4000円) | |||||
| Radeon RX 480 | 1599元(約2万5600円) | |||||
個人的にはマイニング向けに性能のバランスを取ったバージョンという気もする。もちろん中国市場向けなので、他の地域では流通しておらず、日本でも販売されたという情報はない。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ

