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発売開始は8月14日!AMD、Vegaアーキテクチャーを採用したRadeon RX Vegaを発表

2017年07月31日 11時50分更新

文● 笠原一輝 編集●ジサトラ ハッチ

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 半導体メーカーのAMDは、米国ロサンゼルスで7月30日~8月3日(現地時間)に開催されているSIGGRAPH 2017の会期中に記者会見を開催し、同社がかねてよりSIGGRAPH 2017での発表を予告していた次世代GPUアーキテクチャー"Vega"を採用した新しいGPU"Radeon RX Vega"を発表した。

 AMDによればRadeon RX Vegaは、従来製品から大幅に強化された新しいCU(Compute Unit)を最大で64個備えており、バリエーションとして56個に限定したバージョンも用意される。ビデオカード単体の価格は上位モデルとなるRadeon RX Vega 64がNVIDIAのGeForce GTX 1080対抗と位置づけられており499ドル(約5万5000円)、下位モデルとなるRadeon RX Vega 56はNVIDIAのGeForce GTX 1070対抗と位置づけられており399ドル(約4万4000円)となっている。

Radeon RX Vegaのダイ

メモリ階層やCUの改良など5年に一度の大きなアーキテクチャーの改変になるVega

 AMDが今回発表したのは、開発コードネームVega(ヴェガ)で知られる製品。これまでAMDのGPUで採用されていたのは、Polaris(ポラリス)で、Vegaはそれに続く製品となる。AMDによれば、Vegaは5年に一度あるとされるアーキテクチャーの完全な更新だということだ。

改善にアーキテクチャーが更新されたVega

 Vegaの特徴はいくつかあるが、大きく言うとメモリー階層が変わっていること、そしてCompute Unitと呼ばれる演算に利用するユニットが大幅に更新されていることにある。新しいメモリー階層はHBCC(High-Bandwidth Cache Controller)と呼ばれており、メインメモリーも含めてページごとにメモリーを管理することができる。使い方に応じてページサイズを変更することが可能で、インクルーシブキャッシュ、エクスクルーシブキャッシュと呼ばれるキャッシュの使い方をプログラマブルに設定することができる。なお、キャッシュ容量はGPU全体で最大45MB、メモリーは最大で16GBのHBM2に対応している。

HBCC(High-Bandwidth Cache Controller)と呼ばれる仕組みが導入されている

ページごとのメモリー管理

キャッシュのインクルーシブ、エクスクルーシブをプログラム可能

 Vegaで採用されているCompute Unitは従来のPolaris世代の命令セットと互換だが、新しく40の命令セットが追加されている。これにより、IEEE互換の16ビット浮動小数点演算と完全な整数演算を行なうことが可能で、それらをパックにして演算することもでき、従来よりも高速に演算できることが特徴だ。また、グラフィックス周りにも拡張が追加されており、DirectX12とVulkanのサポートにも拡張が加えられている。

CUの特徴

40の新しいISAが追加されている

新しいグラフィックス関連の機能

 この他、ディスプレーエンジンは最大で6つの拡張がされているほか、回路設計全体も見直されており、高周波数で動くように最適化が加えられている。製造プロセスルールは14nm FinFETで、トランジスタ数は125億超、ダイサイズは486平方mmになる。

ディスプレーエンジン

回路設計の改良

水冷と空冷版が用意されるRadeon RX Vega 64、399ドルで10TFLOPSを越えるRadeon RX Vega 56

 今回発表されたVegaアーキテクチャーを採用した最初の製品はVega 10(ヴェガテン)の開発コードネームがつけられた製品となる。アーキテクチャーとしては56個のCompute Unit、4096個のストリーム・プロセッサーを内蔵しているという仕様になる。ゲーミングPC向けには、Radeon RX Vega 64、Radeon RX Vega 56という2つの製品があり、それぞれの製品スペックは以下のようになっている。

Radeon RX Vegaの各製品のスペック
製品名Radeon RX Vega 64(水冷)Radeon RX Vega 64(空冷)Radeon RX Vega 56
コンピュートユニット646456
ストリーム・プロセッサー409640963584
ベースGPUクロック1406MHz1247MHz1156MHz
ターボ時GPUクロック646464
ビデオメモリー8GB(HBM2)8GB(HBM2)8GB(HBM2)
メモリー帯域484GB/秒484GB/秒410GB/秒
単精度浮動小数点演算性能13.7TFLOPS12.66TFLOPS10.5TFOPS
ボード電力345W295W210W
価格Radeonパックとのセット販売のみ499ドル(約5万5000円)※399ドル(約4万4000円)

Limited EditionはRadeonパックとのセット販売のみ

空冷版のRadeon RX Vega 64 Limited Edition(Radeonパックとセットでのみ提供)

水冷版Radeon RX Vega 64、Radeonパックとのセットでのみ提供

バックパネル

補助電源は8ピン×2

 なお、Radeon RX Vega 64には、水冷のLiquid Cooled Editionと空冷版が用意されており、空冷の方が若干スペックが低くなる。Vega 10のスペック的には16GBのHBM2メモリーまでに対応可能だが、ゲーミング向けの製品は8GBまでの製品が用意される。

 AMDはこのRadeon RX Vegaをビデオカード単体だけでなく、Radeonパックと呼ばれるセット販売版を用意する。Radeonパックには、Samsung ElectronicsのFreeSync対応モニターを購入するときに使える200ドルのクーポン(割引券)と、Ryzen 7とそのマザーボードをセットで購入する時に使える100ドルのクーポン、それに2本のバンドルゲームをパッケージとしてもので、それがビデオカードとセットで販売される。AMDとして、ゲーミングPC全体をより安価に購入できるこれらのクーポンとセットで販売することで、ユーザーの利便性を図っていきたいという意向だ。水冷のRadeon RX Vega 64 Liquid CooledとセットにしたRadeon Aqua Pack、空冷のRadeon RX Vega 64とのセットになるRadeon Black Pack、Radeon RX Vega 56とセットになるRadeon Red Packという3つのRadeonパックが用意される。

 このうち水冷版のRadeon RX Vega 64はRadeonパックとのセット販売のみとなり、空冷のRadeon RX Vega 64のうちLimited Editionと呼ばれる特別なシルバーの冷却ファンを採用したモデルも、Radeonパックとのセット販売のみとなる。

Radeonパック

製品の構成

Radeonパックと単体カードの販売形態
製品名Radeon Aqua PackRadeon Black PackRadeon Red PackRadeon RX Vega 64(空冷)Radeon RX Vega 56
ビデオカードRadeon RX Vega 64(水冷)Radeon RX Vega 64 Limited Edition/Radeon RX Vega 64(空冷)Radeon RX Vega 56Radeon RX Vega 64(空冷)Radeon RX Vega 56
FreeSyncモニター(Samsung)200ドル割引券--
Ryzen 7/マザーボードセット100ドル割引券--
ゲーム2タイトル--
市場想定価格(MSRP)699ドル(約7万7200円)599ドル(約6万6100円)499ドル(約5万5100円)499ドル(約5万5100円)399ドル(約4万4000円)

 なお、Radeonパックは米国市場むけだけでなく、日本を含む世界中の市場で提供される予定だという。ただし、市場によっては例えばSamsungのモニターがあまり流通していなかったりという市場もあるので若干の調整が行なわれるということだった。

 注目の価格だが、空冷版のRadeon RX Vega 64は499ドル(約5万5100円)、Radeon RX Vega 56は399ドル(約4万4000円)に設定されており、それぞれNVIDIAのGeForce GTX 1080、GeForce GTX 1070の対抗と位置づけられている。AMDはFreeSyncを活用すると、4Kの解像度でもフレームレートが40~60Hzと快適に遊べるゲームが、NVIDIAのGeForce GTX 1080などに比べて多く、より現実的に4Kでのゲームプレイが可能になるとアピール。現時点ではどのゲームでどのぐらいのフレームレートになるかなど、具体的な性能は明らかにされていないが、単精度の浮動小数点演算性能はRadeon RX Vega 64は水冷が13.7TFLOPS、空冷が12.66TFLOPS、Radeon RX Vega 56が10.5TFLOPSとされており、いずれの製品でも10TFLOPSを越えていると説明している。

FreeSyncを使うと4K表示が可能な多くのゲームで高いfpsを維持し、快適にプレイできるとアピール

 販売開始は8月14日が予定されており、AIB(Add-In Board)パートナー(ビデオカードを製造ないしは販売するビデオカードメーカーのこと)によるオリジナルPCBやクーラー製品は第4四半期からの提供になる見通しだとAMDでは説明している。

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