Azureを牽制、Google Cloud Nextの2日目基調講演

Google Cloud Platformは安価、オンプレへの投資も再利用できる

文●羽野三千世/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

分散RDB「Cloud Spanner」が東京リージョンでも利用可能に

 2つ目のトピックとして、GCPが“インテリジェント”だという文脈で機械学習サービスとビッグデータ関連サービスが紹介された。

Google Cloudエンジニアリング部門バイスプレジデントのブラッド・カルダー氏

 Google Cloudエンジニアリング部門バイスプレジデントのブラッド・カルダー氏は、まず、5月にGA(一般提供)になったGCPの分散データベースサービス「Cloud Spanner」を取り上げ、「業界初にして唯一の水平スケーリング可能なリレーショナルデータベース(RDB)である」とアピールした。

 Cloud Spannerは、世界9拠点のGCPリージョンにデータを自動同期レプリケートする分散RDBサービス。「ユーザーが、データにどうインデックスをつけたらいいか、ストレージ容量は足りるかどうかといったことを考えなくてもよいフルーマネージドのサービスとして提供する」(カルダー氏)。SQLトランザクションに完全対応し、数千ノードにスケーリングする。「分散配置したリージョン間でデータの一貫性を確実に保証しつつ、リージョン間の通信にGoogle自前のプライベートネットワークを使うことで高いパフォーマンス、低遅延を実現している」(カルダー氏)。もともとはGoogleの社内向けに開発されたもので、Google内部では2007年から本番環境で利用されてきた。

 デモでは、Google Cloud ソリューションアーキテクトの八木橋徹平氏が、グローバルなチケット販売サービスをCloud Spannerで展開するケースを紹介した。「世界中でチケットを販売するサービスの要件は、すべての購買客が同一のデータベースにアクセスできるデータの一貫性の保証。また、データストアとしてスケーラブルであること、遅延が少ないことも求められる。Cloud Spannerはこのようなサービスの要件をすべて満たす」(八木橋氏)。

 Cloud Spannerは、まずインスタンスの名前をつけて、展開先のリージョンを選択し、インスタンスに何ノードのリソースをあたえるかを選択するだけで利用開始できる。データベースのテーブル設計は、トラディッショナルなRDBと同じだ。八木橋氏は、北米、アジア、ヨーロッパの3つのリージョンに分散したチケット販売サービスのシステムで、サービスを稼働させたままノードを追加するデモを行い、「ダウンタイム無しに、スキーマ構成の変更や、キャパシティの追加ができる」と説明した。

Cloud Spannerのインスタンス名、展開先リージョン、リソースを設定

Cloud Spannerで3リージョンにチケット販売サービスのデータベースを配置

Cloud Spannerのデータベースのテーブル設計はトラディッショナルなRDBと同じ

サービス稼働中のCloud Spannerにノードを追加

 Cloud Spannerは、6月16日からGCPの東京リージョンで利用可能になる予定だ。

「BigQuary」のエコシステムが拡大中

 続いてカルダー氏は、GCPのビッグデータ分析サービスとAIサービスを紹介した。

 GCPでは、WebやIoTからデータを取り込む「Pub/Sub」、データを変換する「Dataprep」「Dataflow」「Dataproc」、データ分析を行う「BigQuary」、分析結果を可視化する「Data Studio 360」「Cloud ML Engine」というように、エンドツーエンドのビッグデータ分析サービスを提供している。

 このうち、BigQuaryはSQLでデータ解析ができるデータウェアハウスだが、そのエコシステムが今、急拡大しているとカルダー氏は説明した。「BigQuary Data Transfer Service」(GoogleのAdWords、DoubleClick、YouTubeなどのSaaSからBigQuaryへデータを取り込むマネージドのデータインポートサービス)でのデータインポートに対応するサードパーティーのSaaSが増えている。BigQuaryと一緒に閊えるETL、アナリティクスサービス、BIや可視化ツールも増えているという。

BigQuaryのエコシステム

 AIについては、「AIを必要とする企業が、簡単に使えるようにすることに投資をしている」とカルダー氏。Googleは、深層学習フレームワーク「TensorFlow」をオープンソースとして公開し、TensorFlowのモデルのトレーニングを高速に実行する「Cloud Machine Learning」をGCPから提供している。「しかし、TensorFlowのモデルサポートがあっても、AIは複雑なもの。より簡単にAIをビジネスに取り入れたいユーザーは、APIでトレーニング済みの機械学習アルゴリズムを使うという手もある」(カルダー氏)。

 GCPでは、トレーニング済みのAIをアプリケーションに実装できるAPIとして、自然言語理解API「Cloud Natural Language API」、音声理解API「Cloud Speech API」、機械翻訳API「Cloud Translate API」、動画解析API「Cloud Video Intelligence」、画像認識API「Cloud Vision API」を提供している。

「Cloud Video Intelligence」で動画の中の野球のシーンをテキストで検索するデモ

 デモでは、Cloud Video Intelligenceを使って、「野球」とテキスト検索すると、複数の動画の中から野球のシーンがある動画だけを抽出できる様子が紹介された。

過去記事アーカイブ

2024年
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
12月
2023年
01月
02月
03月
05月
06月
07月
09月
12月
2022年
03月
04月
05月
06月
07月
08月
12月
2021年
02月
04月
05月
06月
08月
09月
10月
11月
2020年
05月
06月
2019年
04月
11月
2018年
07月
09月
10月
2017年
06月
2014年
07月