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男子育休に入る第13回

育休明け 職場復帰の支えは小学生レベルのバカ話

2017年06月14日 07時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita) 編集● 家電ASCII編集部

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About Article

34歳の男が家事育児をしながら思うこと。いわゆるパパの教科書には出てこない失敗や感動をできるだけ正直につづる育休コラム。

今日は会社の話です。もっと写真撮っておけばよかった

 家電アスキーの盛田 諒(34)です、おはようございます。水曜日の朝、育児コラム「男子育休に入る」の時間です。2月に子供が生まれ、8週間の育児休業を取った後、現在はおかげさまで無事職場復帰しています。

 最近、読者の方から毎日のようにFacebookにたくさんのおたよりをいただくようになりました。本当にありがとうございます。すべてが嬉しいのですが、中でもとくに感銘を受けた1通があり、ご本人の許可をいただきましたので、ご紹介させていただきます。

 39歳、育休中の男性の方です。

 3月末にお子さまが生まれ、4月から半年間の育休を取得されているそうです。連載第10回 地獄日記に共感いただけたそうで、ご自身が育休中に感じたこと、考えたことなどをメモにまとめて職場の上司に送られたそうです。ただ自分の気持ちが整理できただけでなく、

 「上司も『育休中の部下と組織との関わりについて改めて考えさせられた』と申しており、今度、課のミーティングでメモを配布するそうです。盛田様のコラムをきっかけに、休業中も職場と繋がるきっかけが出来て大変うれしく思いました」

 と書かれていて、感激しました。

 わたしが単に妻が怖いだの文鳥がかわいいだの書き散らしたコラムからアクションを起こされるとは、なんてすばらしい行動力なのでしょうか……そしていい職場ですな……

 メモの中身もわたしの体験談に負けない相当なリアルさで、「(夫婦関係を)『良好に維持する』ことは努力目標でして、『深刻な争いを回避する』ことが現実的な目標です」という表現には同志の契りを交わしたような気持ちになりました。個人的に共感したのは「一番の失敗は、娘の爪を切るときに手元を誤って、右手の人差し指も切ってしまったこと。まだ1か月半という時期だったので、さすがに焦りました」でした。わかります。めちゃめちゃ焦ります。

 男性から、今回は「復職後の仕事と育児(家事)とのやり繰りや、復職時の心構え」などについて書いてほしいとリクエストをいただきました。ちょうどネタに困っていたところだったので、喜んで書かせていただこうと思います。


●職場仲間との雑談が救い

 まず職場復帰の支えになったのは編集部で使っていたチャット(Slack)でした。休業中の2ヵ月間、チャット部屋でバカ話をしていたのはとても大きかったです。

 地獄日記にも書きましたが、職場ではチャットで情報交換をしています。LINEのグループチャット、Facebookのメッセンジャー、グループウェアを使っている会社もあるかと思います。チャットでは記事のネタ共有、原稿のチェックなどもしているのですが、わたしが作った部屋は9割以上がバカ話で占められています。Twitterで拾ったバカ記事を共有していたのも、このバカ部屋です。

 ためしに先週の話題を拾ってみますと、

「橋本環奈ちゃんクッソかわいい」
「彼女の写真勝手に上げないで」

「恋人がいない人は早歩きする」
「競歩の選手って全員独身なの?」

(「彼氏をお家にお招きコーデ」の記事に)
「お招かれコーデは?」

「Siri vs. Cortana 恋人にするなら?」
「ぼくのSiri(意味深)」

 といった具合です。本当に申し訳ないです。

 しかし、こうした小学生レベルのバカ話のおかげで、職場とのつながりを保てたことは大きな救いになりました。バカ部屋には「Aさん退職してる……」「まーた新しい会議が始まるのか」「向こうの部署引っ越してくるらしい」といった社内の話も投稿されるので、職場の変化も手に取るようによくわかりました。喫煙所や給湯室の役割を果たすオンライン井戸端会議のようなものです。

 これがなかったら育休中に職場で何が起きたかわからず、感覚を取り戻せないまま、浦島太郎状態になってしまっていたと思います。実際に復帰したときは世界の違いに驚き「会社はすごい、誰も泣いてない」などと言っていましたが、ギャップは少なく、スムーズに戻れた方だと思います。

 逆にわたしの状況は育児日記として発信していたため、編集部どころか全社的に把握されていました。バカ部屋では「赤ちゃん寝ません」「盛田さん泣かないで」「ホギャー」といった会話もしていました。我ながらバカですね。

 育児日記は復帰後も効果がありました。

 「日記読んでるよ~大変だね~」と先輩社員からニヤニヤされたり、久々に会った同僚と「うちも深夜に帰ってきてオンラインゲーム始めたら妻が怒っちゃってさあ……」といった会話もできました。余談ですが、社内で男同士が家庭の話をするタイミングというのはなかなかないもので、会社で子供の話ができたのは新鮮でした。別部署に異動した同僚が「記事読んだよ~、最近何してるの?」と話しかけてきて、「今度一緒にこういうことやりましょうか~」と仕事っぽい話もできました。あまり好きな言葉ではないですが、職場でも“子はかすがい”です。ちなみに深夜にネトゲをやって怒られたお父さんは会っただけでも3人いました。

 職場復帰は何かと不安がつきまといますが、こうした相互の情報発信、肩の力が抜けたコミュニケーションが不安を軽減するところはあるのではと思います。


●育児体験が働き方を変えた

 次に、復職後の仕事と育児のやりくりについてです。わたしの場合は残業しないことを心がけるようになりました。フレックスで8時間勤務が目標です。

 初めは「赤ちゃんが生まれたからには9時~17時だー!アフター5で赤ちゃんと遊ぶぞー!」とはりきっていたのですが、朝のうちに家事をしているとすぐ9時近くになってしまうのでまず無理だと分かりました。そもそも午前中に取材や商談が入ることもあり、現実的ではなかったです。代わりに定時ではなく、8時間で仕事を終わらせることに集中して、夜はできるだけ早めに帰るようにしています。

 仕事そのものは「できない仕事は断るか、条件を交渉する」「できる仕事だけを受ける」「代わりに受けた仕事には全力を挙げてかかる」「仕事が終わったらすぐ帰る」というスタイルに切り替えました。もちろん休憩は入れるし、チャットでは変わらずバカ話をしているのですが、時間の区切りなくダラダラ働かなくなりました。わたしはもともと何があっても20時には会社を出るというルールを自分に課していたのですが、さらに空気を読まないヤツという感じになりました。

 家で妻が家事育児をしていると考えると、早く帰って手伝わねば、という気持ちにもなります。やるとわかりますが、家事育児は仕事よりキツい面があります。

 家事はまず、時間が厳密です。朝が来たら朝食を作り、洗濯機を回し、昼になるまでに干し終わる必要があります。仕事に1時間でも遅滞があれば容赦なく自分の積み残しとなりますので、基本必死です。目はつねに時計をにらみつけています。そこに育児が加わると難度はさらに上がります。わが家の赤ちゃんはコミュニケーション能力に長じており、数十分おきに「そのほう、つまらぬことはやめよ、余をかまえ」とお泣きになります。そうなると家事は中断、だっこをして、おむつを見て、絵本を読み、階段の踊り場から街並みを見せ、ミルクを作らなければならなりません。

 会社で言いますと、数時間おきの締切りに向けて仕事をしている中「これやって~!」としょっちゅう割り込み案件が入るようなものです。クライアントは仕様書を作らないどころか要件も伝えてくれず「なる早~!なる早~!」とわめくのみ。お分かりですね。地獄です。

 その上赤ちゃんは生きていますのでプレッシャーがとても大きいです。クライアントの命を直接預かるわけですからボディガード並みの緊張感があります。

 ついでに言うと、家事育児をしながらだと、ちょっとしたメールさえ集中して返信できなくなります。かつて「赤ちゃんがいてもVPNがあれば仕事くらいできるのでは?」と思っていた自分自身をビンタしたい気持ちです。あなた何も分かってないのね! 職場と家では時間の流れ方が違いすぎます。かつて写真家の星野道夫さんはアラスカで「もうひとつの時間」を感じたそうです。わたしの場合は家でした。

 このような窮状を経験してから職場に戻ると「校了前のヤマ場でない限り、時間を区切って集中すれば仕事は終わる」「仕事で何があってもまあ命に別条はない」という、ある種の覚悟のようなものが芽生えてきます。ヤバいのは会社より家です。ただ、わたしの場合は1人で済ませる仕事が多く、上司も相当好きにやらせてくれているので、業務をコントロールしやすいという面が大きいと思います。職場に恵まれていたからこそこうした自由な働き方ができているのだと感じます。職場で先ほどのような地獄のクライアントがついていたら終わる仕事も終わらず途方に暮れていたと思います。

 一方、育児と仕事の両立でキツかったのは睡眠不足です。

 夜中、妻が授乳する4時間おきのタイミングでなんとなく目がさめ、しばらくしてふたたび眠るというプロセスをくりかえしていました。睡眠時間はさほど変わらないのですが、眠さのヴェールに覆われるような毎日になりました。仕事中に昼寝の時間を設けられないかと考え、ホテルを探したりもしました。妻に眠さを訴えたところ「全然寝てるじゃん」とそのとおりすぎる文句を言われましたが、妻は翌日から授乳時、寝室の隣にあるリビングに移ってくれるようになりました。今は比較的すっきり目覚められるようになりました。ありがたいです。

 最後に家事育児についてですが、出勤前は、

・ゴミ出し
・洗濯機回し
・洗濯物干し
・洗い物
・朝食の準備
・赤ちゃんおむつ替え
・赤ちゃん抱っこ
・赤ちゃん絵本読み聞かせ

 などを妻と適宜分担しています。最近は赤ちゃんのオイルマッサージもしています。マッサージを始めてから赤ちゃんは不思議とあまり泣かなくなりました。話の筋とは関係ないのですが赤ちゃんを抱っこすることの大変さは過小評価されていると思います。

 一方、帰宅後は、

・洗濯物畳み
・部屋の片づけ
・(元気があれば)洗い物

 といったところを担当しています。本当は面倒くさがらずに洗い物をすれば翌朝がラクになるのですが、気力がなくてシンクに放置というケースが多いです。食器洗い乾燥器や洗濯乾燥機などの家電が何のためにあるのかあらためて分かった気がします。


●働く親の生活 知ってほしい

 難しいなあと感じるのは、実際に家事育児・会社仕事の両方をやっている人でないと、こうした現状がなかなか想像しづらいということです。想像できないと「なんだあいつ赤ちゃんができたからって仕事やる気あんのか」ということにもなりかねません。

 6月10日、毎日新聞に「<イクメン>上司にも妻にも責められる男たちの苦悩」という記事が載っていました。男性が育児参加している境遇を職場に理解してもらえず、妻と会社の板挟みにあうという内容でした。夫の言い分、妻の言い分がどちらもわかって、とてもつらかったです。記事の結びにもありましたが、実際に子育てをしながら働いている親たちの現実がもっと広く伝わるといいなあと思います。共働き育児のつらさ・楽しさを笑いとともにみんなで受け入れられる、社会規模のバカ部屋があってほしいと感じました。いやバカである必要はないんですが……

 といったところで今回はおしまいです。連載は来週も続きますが、最後に読者のみなさんに1つお願いがあります。

 読者の皆さんからFacebookにお寄せいただいているメッセージ、育児体験談が本当にリアルですばらしいので、連載の中で紹介したく思っています。中でもいいなと思っているのはリアルな「赤ちゃんビフォー・アフター」。育児が始まり、大変になったこと、変えたこと、新たに始めたことなど、みなさんの悩みや工夫を広く共有できればと思っています。ともにがんばっている人がいると感じられることは本当に救いになります。もちろん匿名、ペンネーム(ハンドルネーム)で大丈夫です。みなさんからのおたより、お待ちしています。



書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味。0歳児の父をやっています。Facebookでおたより募集中

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