3月中旬に満を持して最新のフラッグシップスマートフォン「Galaxy S8」を発表したSamsungだが、同社にとって風向きは必ずしも良好とは言えない。要因の一部がHuaweiだ。Huaweiは端末のシェア争いで猛攻をかけるだけでなく、4月初めには中国における訴訟でSamsungに勝訴を収めた。

MWC直後のバルセロナの空港では大々的に「HUAWEI P10」をアピールしていた
中国でSamsungに勝訴したHuawei
訴訟はHuaweiが地元中国の福建省泉州市中級人民裁判所でSamsungを相手取って起こしていたもの。ここで同社は、Samsungが20機種以上のスマートフォンとタブレットで自社の特許を侵害したと主張、Samsungの中国での子会社3社を訴えていた。2016年5月のことだ。
「20機種以上」には、Samsungのフラッグシップ「Galaxy S7」も含まれているという。特許はアイコンやウィジェットのデザインやレイアウトなどユーザーインターフェイス(UI)が関係した特許のようだ。Huaweiは該当する製品の販売台数を3000万台とし、これに対して損害賠償を求めていた。
今回、裁判所はこの主張を大筋で聞き入れ、Samsungに対し損害賠償金として8千万人民元(約13億円)の支払いを命じた。HuaweiはApple、Googleに対しても同様の訴訟を起こしているようだ。
Reutersなどの報道によると、Samsungは提訴された後に、北京の知財権裁判所でHuaweiを反訴しているという。2社はこのほか、米カリフォルニア北部連邦地方裁判所、深センの人民裁判所でも戦っており、ここでは4G通信が関連した特許が含まれる模様だ。
Huaweiの特許出願件数はZTEに次いで2位
一方で、Huaweiは英国では、特許料の支払いが求められている。Samsungとの訴訟の判決がおりたのとほぼ同時期、英国のイングランド・ウェールズ高等法院はHuaweiに対し、英国だけでなく、世界で販売するスマートフォンに対してライセンス料を支払うようにと命じた。
これは、米国の特許保有会社であるUnwired Planetが自社がもつ特許に対するライセンスの支払いについて、どの地域を対象とするかでHuaweiと争っていたもの。裁判所は今回、英国のみとするHuaweiの訴えを退けて、世界ベースとするUnwired Planetの主張を支持した。特許は4Gに関するもので、同社が以前にEricssonなどから取得したFRAND(公平で、合理的、かつ非差別的な条件)特許と言われている。Unwired PlanetはGoogle、Samsungに対しても特許侵害で訴訟を起こしていたようだ。
スマートフォンは訴訟の多い市場だが、特にスマートフォンで携帯電話市場に参入した新興ベンダーは、スマートフォンでの特許戦争に巻き込まれないために多数の特許を保有することで防御できる。これによりクロスライセンスが可能になるからだ。
Huaweiは2016年に3700件近い国際特許を出願している。これは同じ中国のZTEに次ぐ数となる。

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