4月4日、インフォテリアはイギリスのデザインコンサルティング企業であるThis Place Limitedの買収を発表した。「デザインファースト」を見据えた買収戦略により、グローバル展開の戦略を加速させる。
英国にはすばらしいIT企業が数多く存在する
2011年創業のThis Place Limitedはロンドンに本社を置くデザインコンサルティング企業で、ワールドワイドでT-MobileやSamsonite、BBCなどの顧客を持つ。今回の買収金額は700万英ポンド(約10億円)で、買収後5年間This Placeの業績によってインセンティブが支払われるアーンアウト(Earn Out)のスキームで実施されるという。2017年4月20日以降、This Placeはインフォテリアの100%子会社となり、CEOのデュサン・ハムリン(Dusan Hamlin)氏は、インフォティア執行役員グローバルCOOに就任する予定となっている。
駐日英国大使館で行なわれた発表会において、インフォテリア代表取締役社長/CEOの平野洋一郎氏は、This Placeとの出会いが英国大使館の紹介であったことをアピール。「今までシリコンバレーやボストン、東南アジアに目が行きがちだった。でも、実際に英国に行ってみると、素晴らしいハイテクスタートアップやユニークな企業がいっぱいあった」(平野氏)と振り返る。こうした中、欧米で実績を積みつつあるThis Placeと3年前に出会い、同社がグローバル展開するタイミングで買収の決定に至ったという。
今後はデザインファーストがビジネス戦略の核となる
今回の買収の背景には、IT業界における「デザインファースト」へのシフトがある。昨今、Accenture、McKinsey、Facebook、Capital Oneなどのプレイヤーが次々とデザインコンサル企業を買収しており、機能重視からデザインファーストに移っている。デザインファーストの典型例であるiPhoneの成功例を挙げた平野氏は、「デザインがビジネス戦略の核となる。ソフトウェア産業もその例外ではない。デザインファースト、デザイン思考になっていく」と指摘。「Data」「Device」「Decentelized」に続く4つ目の「D」として、「Design」に注力する戦略を明らかにした。
This Place CEOのデュサン・ハムリン氏は、1990年代テクノロジーによってリードされた製品開発が、デザインによってリードされるようになってきたと業界全体を概観。フロントエンド開発と戦略コンサルティングに強みを持つThis Placeと、バックエンド開発とプラットフォーム戦略に長けたインフォテリアとの統合により、新世代のエコシステムが完成するとアピールした。
インフォテリアとThis Placeは、同社の次世代版Handbookとして開発されている「Tristan」ですでに協業を行なっており、デザインだけではなく、機能もシンプルな「Handbooks」という製品名で英語圏に公開している。こうした実績を元に、今後はデザインファーストの思考を製品に取り込み、グローバル戦略を加速させるという。