2月、インフィード広告の成長が明らかとなった調査が2つ発表されました。
- 『2016年のインフィード広告市場、昨対比8割増の1,401億円/2022年には3,013億円に到達か』(MarkeZine、2017年2月9日)
- 『「2016年 日本の広告費」発表、運用型広告費が7,383億円(前年比118%)と好調』(Web担当者フォーラム、2017年2月23日)
『ネイティブ広告が「PR表記あり」でもユーザーに嫌われる、たった1つの理由』でも紹介したように、インフィード広告は掲載メディアの記事やコンテンツと同じデザインやフォーマットで広告を制作し、コンテンツに近い形式で配信できる「ネイティブ広告」の1つです。
日本では、インフィード広告が今後のインターネット広告市場の牽引役として期待が集まる段階である一方で、Web広告の先進国であるアメリカでは2014年の段階でネイティブ広告だけで79億ドル(約9559億円 ※1)の市場規模を実現しています。2016年の時点ですでにネイティブ広告がディスプレイ広告市場を上回っているという調査データもあります(※2)。
※1『1兆円規模にまで膨れたネイティブ広告ビジネスが活況 一方、記事と広告のあり方を疑問視する声も』(WWD Japan)
※2『先行く米国のネイティブ広告最新事情とは?【SmartNews Marketing Meet up】』(MarkeZine)
今回は、アメリカの調査結果を元にしたネイティブ広告とバナー広告の比較やネイティブ広告の6つの評価軸を紹介しながら、ネイティブ広告の本質はなにかを考えます。
ユーザーから見られる「バナー・ブラインドネス」という現象
バナー広告など従来からあるWeb広告と比較した時、ネイティブ広告にはどのような優位性があるのでしょうか。興味深い調査結果を紹介しましょう。
上の図は、アメリカのWebサイトにおけるユーザビリティの調査やコンサルタント業務を中心に手がけるNielsen Norman社が、Webサイトを見るユーザーの視線の動きについてヒートマップ分析を使って調査したものです。
この調査によると、ページ内で記事が展開されているメインカラムにユーザーの視線が集中しているものの、黄緑色の枠で囲まれたページ上部や左側のサイドカラムなどに配置されているバナー広告には、ほとんど視線が送られていないことが分かります。同社ではこの現象を「バナー・ブラインドネス」と呼び、ユーザーはバナー広告が置かれている場所から、無意識のうちに視線を外していると指摘しています。
Web広告を出稿している企業側には、少しショッキングな調査結果かもしれませんが、普段の自分がWebを利用するときを思い起こしてみると、納得できるのではないでしょうか。
特に最近はユーザーのリテラシーも向上し、自分にとって必要な情報かどうかを適宜見分けながらWebページを閲覧していると考えられます。中には、広告と分かった途端に避けてしまうユーザーも少なくありません。
このように、Web広告からユーザーへのアプローチ難易度が高くなっているということも、出稿や運用に携わる人であれば日々実感しているのではないでしょうか。
ユーザーの視線追跡調査から見るネイティブ広告の優位性
それでは、ネイティブ広告はこうした状況において、どの程度効果的なのでしょうか。
アメリカでネイティブ広告を提供するSharethrough社とIPG Media Labでは、過去に旅行、消費財、エンターテイメントなど、さまざまなWebサイトにおいて、4770人のユーザー視線追跡調査をしています。その結果、以下のようなことが明らかになりました。
1. 視線が止まりやすい
1回のテストでバナー広告が見られたのは平均2.7回、それに対してネイティブ広告は4.1回も見られており、バナー広告に比べネイティブ広告は1.5倍も注目を集めたといえます。
2. 共感を得てSNSでも拡散されやすい
ユーザーの反応にも大きな違いがあります。
ブランドに共感したユーザーの割合は、一般的なバナー広告が50%に対し、ネイティブ広告は71%。シェアやツイートなどSNSで何らかの反応があったユーザーの割合は、一般的なバナー広告が19%に対し、ネイティブ広告は32%という結果が出ています。
3. 購買にもつながりやすい
ネットの反応だけでなく、リアルのアクションにも違いが出ています。
ブランド好意度が向上したユーザーは、バナー広告が23%に対しネイティブ広告は32%。さらに購入意向が向上したユーザーは、バナー広告が34%に対しネイティブ広告は52%と1.5倍のユーザーが態度を変えています。
これらの調査結果から、従来のバナー広告と比べ飛躍的な数値の差が出ているわけではありませんが、「バナー・ブラインドネス」に阻まれリーチできなかったユーザーに対しても、ネイティブ広告によってアプローチできる可能性が高まるといえるでしょう。
よいネイティブ広告ってどんなもの?覚えておきたい6つの評価軸
SNSでの拡散から購入意向まで期待が寄せられるネイティブ広告ですが、いくら高い効果が期待できても、単にネイティブ広告の形式であればいいというものではありません。
オンライン広告の標準規格の策定や動向調査、法整備などを手がけるIAB(Interactive Advertising Bureau)が発表している「THE NATIVE ADVERTISING PLAYBOOK」では、ネイティブ広告の評価軸を、次のように記載しています。以下、THE NATIVE ADVERTISING PLAYBOOK(IAB)から引用した6つの評価軸の意訳です。
- FORM(形式)
広告の形式やデザインは、掲載媒体の記事と同じ形式やデザインになっているか - FUNCTION(機能)
広告は掲載媒体のほかの要素と同じように機能するか。また、同様の体験をユーザーに提供しているか - INTEGRATION(統一性)
リンクをクリックしたときの動作は、掲載媒体の他のコンテンツと同じか - BUYING & TARGETING(バイイングとターゲティング)
特定のページ、セクション、またはサイトに広告の掲載場所が確保されているか - MEASUREMENT(計測)
クリック数やコンバージョンだけでなく、エンゲージメントを重視した解析がされているか - DISCLOSURE(明示性)
広告であることがユーザーに分かりやすく記載されているか
6つの評価軸を踏まえると、広告であることがユーザーに分かりやすく記載されていることを大前提として、ネイティブ広告における見た目のデザインやクリックしたときの動作、クリック先のコンテンツ内容まで、あらゆる点において掲載メディアのコンテンツと同じ体験をユーザーに提供する必要があることが明示されています。これは、日本インタラクティブ広告協会が定めるネイティブ広告の定義「ユーザーの情報利用体験を妨げないこと」と同じです。
ネイティブ広告の効果を最大化するには?
『ネイティブ広告が「PR表記あり」でもユーザーに嫌われる、たった1つの理由』でも紹介しましたが、インターネットを中心とした情報が氾濫する現代では、ユーザーのリテラシーも向上し、企業やメディアが一方的に情報を押し付けるだけの情報ではユーザーに届きません。
ネイティブ広告の優位性が「ユーザーの情報利用体験を妨げないこと」にあるとすれば、ユーザーの嗜好や見せ方などをメディアごとに観察しそれぞれ最適な表現に変える必要があります。そのためには、情報を発信する企業としても、メディアを知りユーザーを知ることが今まで以上に重要となってくるでしょう。
常に言われている「ユーザー視点」が大事なのは言うまでもありません。ただ、それだけではなく、企業も1人のユーザーとしてメディアを通じた情報利用体験を深めることで、より効果的な広告手法を見出し、さらに、常に移り変わる広告手法の変化にもいち早く対応できるのではないでしょうか。
(記事提供:D2Cスマイル)