Webサイトを活用した広告や集客手法は数多くありますが、そのひとつとして、近年多くの企業から注目を集めているのがネイティブ広告です。
従来のバナー広告よりもコンテンツに近い形でメッセージを伝えることができる一方で、ネイティブ広告にはユーザーとのエンゲージメント形成に関わる「デメリット」もあるため、慎重に運用していく必要があります。
ネイティブ広告を活用するにはなにに注意すればいいのでしょうか。そのポイントをまとめて紹介します。
そもそもネイティブ広告ってどういうもの?
一般的に企業の出稿する広告は、いわゆるバナー広告などのように掲載媒体の記事やコンテンツと区別されたデザインやフォーマットで規定の広告枠内に掲載されるものがほとんどです。しかし、ネイティブ広告の場合は、掲載媒体の記事やコンテンツと同じデザインやフォーマットで広告を制作し、コンテンツの一部として掲載することに大きな違いがあります。
運用について考える前に、ネイティブ広告がどのようなものであるのか、少しおさらいしてみましょう。日本インタラクティブ広告協会では、ネイティブ広告を以下のように定義しています。
デザイン、内容、フォーマットが、媒体社が編集する記事・コンテンツの形式や提供するサービスの機能と同様でそれらと一体化しており、ユーザーの情報利用体験を妨げない広告を指す。
引用元:ネイティブ広告の定義と用語解説 | 日本インタラクティブ広告協会
例えば、雑誌などで従来から掲載されている「記事広告」も、ネイティブ広告のひとつの形態です。FacebookやTwitterなどのフィードに掲載される「インフィード広告」や、情報サイトの上位に通常の検索結果と同じようなフォーマットで掲載される「プロモートリスティング」、ユーザーによって表示される広告がカスタマイズされ、ニュースサイトの記事下に「おすすめ記事」のような表記で掲載する「レコメンドウィジェット」もネイティブ広告といえるでしょう(「ネイティブアドと記事広告の違い(ネイティブ広告の解説)|デジタルマーケティングラボ」参照)。
もちろん、どの広告形態であっても、広告であることがわかるように「PR」と明記されていることが必須となります。
PRがあっても騙されたと感じる!? ネイティブ広告とユーザー体験
このように、ニュースサイトでも検索でもSNSでも、インターネットの世界では当然のように存在しているネイティブ広告。しかし、ここ数年では「ステルスマーケティング」の問題と相まって一部のネイティブ広告が注視されることも少なくありませんでした(「2015年の話題はこれだ!ネット広告業界総まとめ」参照)。
どんなに「PR」をしっかり表記したとしても、ユーザーがネイティブ広告自体に不快感を抱いてしまうことは起こり得ます。
「メディアが提供する記事だと思ってリンクをクリックしたら、突然外部サイトへ遷移してしまった」ということはないでしょうか。ネイティブ広告の定義にある「ユーザーの情報利用体験を妨げない広告」に則していうと、少なくともこうした体験はユーザーにとって好ましいものではなく「騙された」と感じる可能性も十分に考えられます。
このようなユーザーの情報利用体験を妨げる広告が随所に散りばめられることで、掲載しているメディア自体の信頼性が低下するというリスクもあるでしょう。
そのため、このようなユーザーの情報利用体験を妨げる不快感を解消することに対していかに真摯に取り組むかが、ネイティブ広告のカギを握っています。
ユーザーは広告の何が嫌いなのか
つまり、メディアが持つユーザーのインサイトを熟知した知見とユーザーからの信頼性を存分に活かし、純広告では届かないユーザーに企業のメッセージを届けるのがネイティブ広告と考えます。
この原則に立ち返ると、企業がターゲットとするユーザーに対し、ユーザーに適したコンテンツをいかに提供できるかが重要になってきます。自社製品やサービスの情報をただ配信するのではなく、あくまでユーザーの視点に立ち、情報を求めているユーザーに対して最適な情報を配信するという姿勢が、今後のネイティブ広告には必要になるでしょう。
そもそも、ネイティブ広告がネガティブに捉えられる原因には、ユーザー側が広告を有益なものではないと考えていることがあげられます。
たとえば、ファッション情報を得る目的でInstagramのフィードを見ている人に向けて、突然ドッグフードの広告が表示されても、その広告を求めている人はあまり多くないことが想像できます。しかし、もしそのドッグフードの広告がTwitterでペットの動画を多く視聴しているユーザーに表示され、さらに「ペットが不足しがちな栄養素」や「ドッグフードを楽しく食べてもらうコツ」といった情報も記載されていたとしたらどうでしょうか。
最終的にそのドッグフードを購入するかどうかはともかく、少なくともペットに興味関心があるユーザーにとっては有益な情報になり、ファッション情報を閲覧しているユーザーと比べて、不快に思う人はより少ないでしょう。
ここで重要になってくるのが、ネイティブ広告の定義にも明記されている「ユーザーの情報利用体験を妨げない」という概念です。
ほとんどの場合、ユーザーは広告を「自分には関係がないもの」として捉えており、広告を強制的に見せられることが不快感につながっていると考えられます。一方で、自分の興味関心とマッチした情報にはネイティブ広告であれバナー広告であれ、何らかのアクションを起こしているのは事実です。このことからも、広告は嫌われるばかりではないということです。
つまり、ユーザーは広告が嫌いなのではなく、広告に情報利用体験を妨げられることが嫌いということです。
進化するネイティブ広告、その新しい運用方法とは?
ユーザーのインサイトをしっかりとらえることが重要なネイティブ広告ですが、最近ではさらに進化して、従来とは異なる新しい運用をしている企業もあります。
美容や健康、住宅など、生活に関する情報サイト「All About」を運営する株式会社オールアバウト(以下、オールアバウト)は、2016年11月14日にネイティブ広告の態度変容効果最適化を目的として「運用型コンテンツマーケティング」への取り組みを開始したことを発表しました。これは、オールアバウトが独自に蓄積しているDMP(データマネジメントプラットフォーム)をベースとして、切り口の異なるネイティブ広告を複数パターン制作し、より効果的な広告を見出すことを目的としたものです。
この取り組みにより「商品に興味を持ち、より深く理解した質の高いユーザーを効率的にクライアントサイトに誘導」できるようになるということです。企業にとってはさらなる広告効果を期待でき、ユーザーにとっては自分の興味関心に沿った満足度の高いコンテンツが配信されるため、双方にとって有益な仕組みとなる様子です。
この取り組みはまだ始まったばかりなので具体的にどのような効果が上がるのかは続報が待たれるところですが、こうした運用方法が一般的になれば、ネイティブ広告はWeb広告の効果的な手法としてさらに普及していくのではないでしょうか。
ユーザーに受け入れられるためには、ネイティブ広告の正しい運用を
言うまでもないことですが、雑誌や新聞などメディアが存続するためには運営資金として収益が必要です。特にユーザーに無料で情報提供することが当たり前となっているインターネットメディアでは、事業を存続させるためにも広告収入への依存度は大きくなります。
だからといって、一方的に商品やサービスをアピールするような広告はユーザーに受け入れられず、むしろユーザーの情報利用体験を阻害するものとして不快感を与えてしまうことになります。こうしたユーザーの利用を損なうような広告の運用は、企業だけでなく、サイトを運営するメディアにとっても利益を損なうことになりかねません。
インターネットを中心とした情報が氾濫する現代では、ユーザーのリテラシーも向上し、企業やメディアが一方的に押し付けるだけの情報ではユーザーに届きません。テクノロジーによって、届けたい情報がある企業と知りたい情報があるユーザー、それをマッチさせるメディアのいい関係が生まれる今だからこそ、ネイティブ広告の重要性はさらに高まっていくのではないでしょうか。
■参考サイト
- ネイティブ広告の定義と用語解説 | 日本インタラクティブ広告協会
- ネイティブアドと記事広告の違い(ネイティブ広告の解説)| デジタルマーケティングラボ
(記事提供:D2Cスマイル)