ネットワーク業界では
DECに続くNo.2企業に
1980年代のデータは入手できなかったのだが、1990年以降の売上や営業利益を有価証券報告書(Form 10-K)から抜き出すと、以下のようになっている。
1990~1997年の売上と営業利益 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年号 | 売上 | 営業利益 | ||||
1990年 | 4億3028万ドル | 2323万ドル | ||||
1991年 | 4億1324万ドル | -2383万ドル | ||||
1992年 | 4億2380万ドル | 796万ドル | ||||
1993年 | 6億1717万ドル (7億2323万ドル) |
3856万ドル (4505万ドル) |
||||
1994年 | 8億2700万ドル (10億1153万ドル) |
-2869万ドル (-1187万ドル) |
||||
1995年 | 12億9531万ドル (15億9347万ドル) |
1億2571万ドル (1億4456万ドル) |
||||
1996年 | 23億2710万ドル | 1億7785万ドル | ||||
1997年 | 31億4711万ドル | 3億7395万ドル |
1993~1995年のデータが2つあるのは、1995年までの報告書と1996年以降の報告書でこの数字が見事に食い違っているためで、これは1993~1995年にかけて同社が買収した多くの企業(Star-Tek、Synernetics、Centrum、NiceCom、Pacific Monolothics Inc.、AccessWorks、Sonix Communications、Primary Access、Chipcom)の売上や利益を後になって合算したためと思われる。
それはともかく1994~1995年あたりからは売上も確実に10億ドルを超え、利益も1億ドルの大台に乗る優良企業になっていたことがここからもわかる。
実のところ1988年には、ネットワーク業界ではIBMを追い越し、DECに続くNo.2の売上を誇っていたりした。ただし1989年にはNetWareの急速な進展により、特にクライアント向けのビジネスが大きく落ち込んだりもしたが、逆に3COMは最終的にNetWareを自社のサービスでサポートするという形でこれを補っている。
1990年になるとまずMetcalfe博士が退社、続いてKrause氏も辞任し、後任にはEric Benhamou氏(1987年に3COMが買収したBridge Communications Inc.の創業者)がついた。
この時期になると、まず3+製品(3+Shareや3+Remoteとか)の売上は芳しくなくなりつつあり、Benhamou氏はあっさりこの製品ラインを放棄。再びネットワークカードと、ルータやブリッジ、ルータなどの機器に絞り込むこととなる。
短期的にはこの再編によって営業利益が赤字化するものの、そのあとの業績建て直しにつながることになる。またこの時期から積極的に企業買収によるラインナップ拡充が行なわれた。
先にあげた例で言えば、Star-Tekの買収によりToken-Ring用のHubを、NiceComの買収によりATMネットワーク関連製品を、Pacific Monolothics Inc.の買収で無線ネットワーク製品をそれぞれ手に入れている。
1995年に買収したChipComは大規模なネットワークスイッチ向けのASICを開発していたベンダーで、この買収により3COMはエンタープライズクラスのスイッチソリューションを提供できるようになった。
もちろん、こうした買収によりネットワーク製品の充実を図る一方で、自社製品の開発にも余念がなかった。
1987年に発表したEtherlinkシリーズの最初の製品である3C501に続き、1990年に投入された第2世代のEtherlink II、1994年に投入された第3世代のEtherlink IIIといったネットワークカードは、その信頼性の高さや特に高負荷時の性能ではNE2000などの低価格イーサネットカードと比べ物にならない実力を持っていた。
それもあってビジネス用途では広く利用されており、この頃は「3COM製」というブランド力が確実に存在していた。
画像の出典は、“Wikipedia”
実際そのブランド力を当て込んで、わざわざライセンスを受けてチップセットに組み込んだIXP250というものもあったほどだ。こうしたネットワーク機器ビジネスがうまくまわっていたのが1990年代後半の3COMであり、ネットワーク業界No.1であったCISCO Systems Inc.に迫る勢いであった。
ちなみにそのCISCOはというと、1997年度の売上が64億5200万ドル、利益が10億4700万ドルで、それでも倍近い開きはあった。
この連載の記事
-
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ