あなたは大丈夫? 確定申告間違えると大損します
申告漏れや提出ミスなどでちょっと間違えると損をしてしまうこともある確定申告。具体的にどこに落とし穴があるのでしょう? 税理士・宮原裕一先生に聞いてみました。
1.申告漏れが多い経費はどんなものがありますか?
やはり、事業のために使ったものでも領収書のないもの、でしょうか。
取引先関係の慶弔事での支出などがあてはまりますね。取引先とのよい関係を続けるために必要なものですが、当然ながら相手から領収書をもらうことはできません。このようなときは招待状や会葬御礼などをとっておき、出金伝票などにいくら包んだかを書いておくとよいでしょう。
また、電車やバスなどに現金で乗ったときや、ミーティングでのお茶を自販機で買ってきた場合などもつけ忘れてしまいがちですね。塵も積もれば山となるで、年間にするとそこそこの金額になったりします。最近では電子マネーで決済すると会計ソフトなどで自動的に取引を取り込んでくれるサービスもありますから、利用されてみてはいかがでしょうか。
2.申告漏れが多い控除にはどんなものがありますか?
社会保険料控除の中で、国民健康保険を忘れる方が多いですね。
というのも、国民年金や生命保険などは控除を受けるために控除証明書が必要になるわけですが、国保についてはその年に支払った金額を記載するだけで、とくに証明書は発行されないからなんです。市区町村によってはサービスで年間支払額の通知を出してくれているところもありますが。
また、その方の世帯状況などによって適用される控除、例えば寡婦控除や障害者控除などというのは、知らなければ適用しないままになってしまうということがあります。
申告漏れでこれだけ損する!差額まるわかり表
【註】
※横軸の課税所得とは事業所得などから扶養控除や社会保険料控除などを差し引いた税率をかける前の所得のこと
※縦軸の「経費・控除漏れ」は税額の計算からもれてしまった金額
※例えば課税所得300万円の人が国民年金20万円を引き忘れていたら所得税・住民税で4万円差額が出てしまう
3. そのほか確定申告で損をする箇所はありますか?
後から指摘を受けて損をする、というかそもそも間違ってるというところでいうと、明らかに経費でないものを経費に入れてしまっている場合ですね。例えば、
・所得税や住民税(都道府県民税や市区町村民税)を経費にしてしまっている
→これらは経費になりません。
・本人・家族の生命保険や国保・年金を経費にしてしまっている
→これらは必要経費ではなく、生命保険料控除や社会保険料控除など所得控除の対象です。
これらについて後で指摘を受けた場合、特に税金関係は控除にもなりませんので経費からはじかれた分に対して追加で税金を納めることになります。
4.申告書の提出遅れにはどれくらい税金が課されますか?
法定申告期限(所得税は年明け3月15日)を過ぎてしまうと、期限後申告扱いでペナルティ対象になります。まず無申告加算税というものがあり、確定申告で本来納める税額について50万円までは15%、50万円を超えると20%の割増しで税金がかかります。ただし調査を受ける前に申告すれば5%に軽減されますし、これまでにやらかしてなければ期限後1ヵ月以内であれば許してもらえます。
税金を納めることが遅れたことに対しては延滞税があり、平成29年だと法定申告期限から2か月以内は2.7%、それを超えると9.0%の割合で遅延利息がかかります。これらの加算税は申告書の提出があってから、税務署の方で計算して通知を送ってきます。
加算税もさることながら、それより痛いのが青色申告でしっかり複式簿記の帳簿をつけていている方。最大65万円の青色申告特別控除は期限内申告が要件になっていますから、期限後申告では適用できず最大10万円どまりとなってしまいます。課税所得400万円の方が65万円の控除を適用できずに10万円となってしまった場合、所得税・住民税で16万5千円も税額が違ってしまいます。
「天引きされた源泉所得税が戻ってくるから遅れてもいいや」なんて考えていると、この部分で痛い目を見ることになりますよ!