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国内中堅企業の「IT動向調査」結果と、ビジネスIT強化を促す施策を発表

「ひとり情シス」はむしろチャンス?デルが中堅企業支援施策

2017年02月15日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 デル(Dell EMC)は2月14日、国内中堅企業(従業員数100~1000名規模)の同社顧客446社を対象に行った「IT動向調査」の結果と、「ひとり情シス支援」など中堅企業のIT活用を支援する新たな事業施策を発表した。

デル 広域営業統括本部 執行役員 統括本部長の清水博氏

デル CTO(最高技術責任者)の黒田晴彦氏

4分の1の中堅企業で「ひとり情シス」やIT専任担当者不在、人材不足は今後も

 今回、デルが初めて中堅企業層のIT動向調査を実施したのは、中堅企業顧客から「IT施策に関する他社の現状を知り、参考にしたい」という声が高まったためだという。企業動向、IT施策動向、利用するIT関連製品/サービスに関する26問の調査を通じて、中堅企業におけるIT担当者数やIT予算、IT投資の承認プロセス、セキュリティ対策などの実態が明らかになっている。

 特に注目すべきポイントとして、デルが挙げる結果と説明は次のとおり。

●IT人材の給与が2極化
 優秀なIT人材を“攻めの人材”として厚遇する企業と、あくまでバックオフィスの“守りの人材”と考え低報酬とする企業の2つに分かれている。

中堅企業のIT人材給与に関する調査結果。企業規模によっても傾向は異なる

●IT意思決定に関与する社長が70%に増大
 調査対象企業の社長平均年齢は59.3歳。大学生時代からコンピューターに親しんだ技術系出身の経営者が増え、ITに対する理解が一気に進み、意思決定に関与する割合も増大。

●「ひとり情シス」が14%、IT専任担当者なしが13%
 社内のIT運用管理を1人でカバーする「ひとり情シス」、およびIT専任担当者なしの中堅企業が3割弱。うち9割が、業績にかかわらず今後も増員予定なし。今後、IT人材不足が見込まれる中で、人材の引き抜きリスクも指摘。

中堅企業のIT人材数に関する調査結果

●21%がIT予算増額傾向、突発的に予算化する企業も28%
 突発的にIT予算が決定するケースが多いと回答した企業は、特に100~500名規模で多い。ビジネス環境が目まぐるしく変化するため、突発的に予算化されるケースが多いと見られる。中長期的な検討がしづらく、柔軟なIT投資が実行できるスキームが必要となる。

中堅企業のIT承認プロセス、決定サイクルに関する調査結果

●製造業/200~1000名の企業では77%が海外展開への取組みを実施、検討
 200名以上の規模の製造業では海外展開への取り組みが顕著。IT分野においては、海外でも現状と同レベルのサポートを受けられることが課題となる。

●IPAのセキュリティ対策ガイドライン、準拠は3%のみ
 IPAが定める「中小企業情報セキュリティ対策ガイドライン」に準拠している企業は3%、準拠に向けて対応中の企業は11%と、セキュリティ対策の取り組みは全般に遅れている。

 こうした調査結果から、現在の中堅企業が抱えるIT課題として「深刻なIT人材不足(ひとり情シス)」「突発的なビジネス変化への対応」「セキュリティ対策の大幅な遅れ」の3つが挙げられると、デル 広域営業統括本部 企画部長の石垣浩輔氏はまとめた。

調査結果からデルが考える、中堅企業におけるITの課題

 昨年まで長年にわたり三井物産のIT部門を率いていたデルCTOの黒田晴彦氏は、「中堅企業のIT部門はとても難しい役割をこなしている」と語る。

 エンタープライズの巨大な企業組織とは異なり、中堅企業のIT部門は経営者と直接コミュニケーションして経営視点でIT戦略を考えなければならない一方で、予算は少なく、“現場”とも密に連携していく必要がある。そして、常に人手が足りないため、自ら手を動かして幅広いITの運用管理を行うことになる。さらに、近年強く求められるサイバーセキュリティ対策なども推進しなければならない。このような、ひとり何役もの働きを求められることが「IT部門にとってとても重荷になっている」と、黒田氏は説明した。

ひとり情シスは「情シスの最終形」、“攻めのIT”実現のチャンス

 ただしデルでは、「ひとり情シス」は必ずしもネガティブな状況ではなく、今後はむしろ“攻めのIT”に転換していくチャンスを生む存在にもなり得ると捉えているという。

 デル インフラストラクチャ・ソリューションズ事業本部 本部長の木村佳博氏は、ITの進化によって、ひとり情シス担当者が「自身のアイデアを自身で実現できる」環境が整いつつあること、デルでは「ひとり情シスは『情シスの最終形』と考えて」おり、ひとり情シスが“攻め”に転ずるためのさまざまな支援ソリューションを展開していくことを説明した。

IT環境の変化で「ひとり情シス」にもチャンスが生まれており、それを支援していくとデル

 具体的には、VDIやハイパーコンバージドインフラ(HCI)、ユニファイドストレージ、クラウドDR、ハイブリッドクラウド活用といったソリューションを「9つの打ち手」として、情シス担当者の負荷軽減や管理の自動化/シンプル化推進、コア業務の内製化、ITと経営の一体化といった変化を促し、ひとり情シスの“攻め”への転換を支援していく。

「ひとり情シス」の支援ソリューション群として9つを挙げた

 このうち「ITコンシェルジュ」は、これまでの中堅企業向けインサイドセールス部門を強化するもので、より高度な顧客ニーズに対応するべく、ITコーディネータ資格や情報セキュリティマネジメント資格を保持し、ITを通じて顧客の潜在的な課題を解決する提案のできる人材育成を目指す。

従来の中堅企業向け営業=インサイドセールスの機能を強化していく

 そのほか、中堅企業向けのハイブリッドクラウドやERPを構成/検証済みパッケージで提供することで、検討や導入を短期化し、なおかつ低価格で提供すること、全国17都市でのセミナーを通じてIPAのセキュリティ対策ガイドライン普及を後押しすることなども、中堅企業向け施策として発表している。

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