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日本のモノづくり手法、大手からベンチャーにシャープ新施策

2017年02月06日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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(左から) シャープ 研究開発事業本部オープンイノベーションセンターの村上善照所長。tsumugの牧田恵里CEO&President。ABBALabの小笠原治代表取締役。

シャープとさくらインターネットの取り組み

 シャープが、IoTベンチャー企業を対象にしたモノづくり研修サービスを開始している。

 データセンター事業を展開するさくらインターネットとのパートナーシップにより実施している同サービスは、「SHARP IoT. make Bootcamp supported by さくらインターネット」と呼ばれ、シャープの研究開発拠点である、奈良県天理市のシャープ総合開発センターにおいて、10日間の合宿形式のモノづくりブートキャンプを実施。約70時間に渡るモノづくりに関する学習カリキュラムを用意し、シャープの現役技術者が講師となり、同社が培ってきた量産設計や品質、信頼性確保などモノづくりの技術やノウハウを教えるものになる。

SHARP IoT. make Bootcampの概要

 また、モノづくりブートキャンプにおいては、さくらインターネットも講師として参加し、ソフト/サーバー技術およびプラットフォームなどについて解説。さらに、投資ファンドのABBALabが、資金調達などに関して説明し、参加したスタートアップ企業への出資も検討する。

モノづくりブートキャンプのコンセプト

 さらに、2016年12月からは、10日間の合宿研修に参加した企業を対象に、量産アクセサラレーションプログラムを新たにスタート。量産に向けた設計、品質、信頼性、生産、検査のほか、量産後のアフターサービスや廃棄、リサイクルまでの取り組みを、シャープと共同で長期間に渡って進めていく内容となっている。

開始の陰に、鴻海の意向あり?

 シャープは、これまでにも、大学と共同で技術開発したり、大阪府下の中小企業と技術連携したりといった経緯はあったが、プログラム形式でスタートアップ企業の支援に乗り出すのは初めてのことだ。

 シャープ 研究開発事業本部オープンイノベーションセンターの村上善照所長は、「2016年春に、スタートアップ企業をモノづくりの観点から支援できないと考えたのがきっかけ。シャープが、メーカーとして100年以上培ってきた歴史を生かすことができると考えた」とする。

 振り返れば、2016年春は、鴻海精密工業によるシャープの子会社化に向けた動きがやま場を迎えていた時期だ。

 だが、今回のベンチャー企業を対象としたモノづくり研修サービスをスタートした背景には、鴻海の動きが強く影響している点が見逃せない。むしろ、シャープが鴻海グループ入りしたからこそ実現したサービスともいえる。

 というのも、今回のサービスにおいて、パートナーシップを組むABBALabの小笠原治代表取締役が、鴻海の郭台銘会長兼CEOの長男である郭守正氏とビジネスパートナーとして交流があったことや、さらには、鴻海グループ側でもベンチャー支援に対して前向きな姿勢を持っていたことから、この話はむしろ加速する形で進んでいったともいえるからだ。

 そして、「シャープのモノづくりのノウハウを活用して、それを事業化できないかという狙いもあった」と、シャープの村上所長は明かす。

 シャープは、8月12日に鴻海からの出資を得たが、8月27日付けで実施した最初の組織改革のなかで、今回のプログラムの実行部隊である研究開発本部を、研究開発事業本部へと改称している。

 「事業」という言葉がついたように、研究開発部門もプロフィットセンターに位置づけられるようになったのが大きな変更点だ。

 つまり、今回のSHARP IoT. make Bootcamp supported by さくらインターネットは、こうした研究開発部門のプロフィットセンター化の動きとも連動するものになっているというわけだ。

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