ショパン:ピアノ協奏曲第1番、バラード集
チョ・ソンジン、ロンドン交響楽団、ジャナンドレア・ノセダ
みずみずしいショバンとは、このような演奏のことをいうのだろう。2015年ショパン国際コンクール優勝のチョ・ソンジン初のスタジオ録音。新鮮な登場感満点だ。叙情性と躍動感のバランスがよく、歌うフレーズでは、ごくわずかにためを作るのが感情的で、聴いていて心地良い。バックのノセダ/ロンドン交響楽団も、豊潤な響きと感性の豊かさで、チョ・ソンジンの歌心に見事に応えている。指揮者の情熱がピアニストと共感し合っている。録音も細部までの解像感の高さと音の弾力性、丁寧な描写性が高い次元でバランスしている。2016年6月にロンドン、9月にハンブルク=ハールブルクで録音。
FLAC:96kHz/24bit
Deutsche Grammophon 、e-onkyo music
ドレスデンの名ピアニスト、ペーター・レーゼルの二度目のベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集。1度目はクラウス・ペーター・フロール指揮ベルリン交響楽団との共演で1988年から1991年にかけての録音。今回は1957年ザクセン生まれの指揮者、ヘルムート・ブラニー/ドレスデン国立歌劇場室内管弦楽団(1994年にシュターツカペレ・ドレスデンのメンバーによって設立)との協演だ。
以前この欄で、フリードリッヒ・グルダとホルスト・シュタイン/ウィーン・フィルのベートーヴェン全集にも感心したが、本ペーター・レーゼルの2度目全集もたいへん素晴らしい。高剛性でありながら、しなやかさも色濃い確固たる歩みで綴られるピアニズム。DSDならではの空間感が麗しい。オーケストラとの有機的で濃密な対話が空間を通じて行われていることが実感できる。2管編成というコンパクトなオーケストラは各楽器の見渡しとフォーカスが良い。響きの滞空時間は長いが、透明度が高く、直接音もクリヤーに伝わってくる。
WAV:192kHz/24bit、FLAC:192kHz/24bit、DSF:2.8MHz/1bit、5.0ch WAV:96kHz/24bit、5.0ch FLAC:96kHz/24bit、5.0ch Dolby HD:96kHz/24bit
キングレコード、e-onkyo music
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱つき》
アンドレア・バッティストーニ、東京フィルハーモニー交響楽団
超スピード第9として話題の演奏。余計な逡巡を排し、直線的にまっしぐらに高速道路を疾走する総タイム58分25秒の第9は、若さの爽快だ。第4楽章の大胆で過激な速さはかつてのノリントン/ロンドン・クラシカル・プレーヤーの強烈さ以上だ。まるで、ギャロップのような低弦だ。オーケストラは過激なのだが、独唱と東京オペラシンガーズの合唱がごくふつうで、かなり丸いのが、アンバランス。渋谷のオーチャードホールの録音だが、
私はコロムビアのバッティストーニの録音でいつも感じることだが、ソノリティが濃すぎるのではないか。この録音も(サントリーホールでのライブほどではないが)ホールトーンが豊潤に入っているのだが、過剰だ。バッティストーニは速さもさることながら、切れ味の鋭さは当代一の音楽を作るのだが、このホールトーンが豊かすぎる録音では、先鋭な美質が丸くなる。もっとドライでクリヤーなバッティストーニを聴きたい。2015年12月20日、Bunkamuraオーチャードホールで録音。
WAV:96kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit
DENON、e-onkyo music
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