業界標準の3分の1の価格でモデムを発売
モデムメーカーとして一躍有名に
こうしたAmiga向けの製品ラインナップを拡充する一方で、同じ1987年に同社が投入した新しい製品がモデムである。
1987年といえば、CIS(CompuServe Information Services)が全米でサービスを行なっており、AOL(American OnLine)の前身にあたるQuantum Computer Servicesもサービスを提供していた。もちろん草の根BBSの類も盛んだった時期だ。
日本と異なりアメリカの場合、Local Call(日本で言うところの市内通話に近い)はいくらつないでいても定額制のプランがあったため、それこそ電話が複数回線あれば、そのうち1回線を常時つなぎっぱなしにすることもできた。
したがって、電話回線を使ってオンラインサービスやBBSにつなぐのはごく一般的になっており、その際にはモデムが必要というわけだ。この市場、当時はHayes Microcomputer Productsの製品がデファクトスタンダードになっていた。
同社が1981年に投入した300baudの“SmartModem”は広く使われており、この“SmartModem”で採用されたHayes command setというモデム用のコマンド体系は、その後どんどん拡張されながら業界標準となった。
Hayesは300baudに続き、1982年には1200baudのSmartmodem 1200を699ドルで発売、1985年には2400baudに対応したSmartmodem 2400を549ドルで発売する。このSmartmodem 2400は1987年の時点でだいたい500ドル前後まで価格が下がっていたが、とはいえまだ高価な製品だった。
Supra Corporationは1987年、このSmartmodem 2400と完全互換なSupraModem 2400を、たった179ドルで売り出す。
画像の出典は、“Antic Magazine Archive”
機能が完全互換で価格が3分の1だったら、売れないほうがおかしい。当時の表現では“SupraModems sold like hotcakes.”(SupraModemはホットケーキ並みに売れた)そうで、あっという間に同社はモデムメーカーとして一躍有名になる。
この後、元気がなくなっていったHayesを尻目に、Supraは急速に業績を伸ばしていく。もっとも競合がないわけでなく、このあたりからUSR(U.S.Robotics)やTelebitといったメーカーが次第に勢力を伸ばしていった。
特に1986年にUSRがHST(High Speed Transfer)プロトコルを投入、これに対抗すべくTelebitも独自のプロトコルを採用したTrailBlazerシリーズを投入して、高価格帯で競っていた。
どのくらい高価だったかというと、USRが1986年にリリースしたCourier HSTは995ドル、Telebitの19200baudをサポートしたT2500という製品は当初1695ドルという価格がついており、直接Supraの市場とはぶつからなかったが、いずれは競合になることは明白であった。
ちなみにUSRは同じ1986年に、低価格向けの2500baudのCourier 2400を699ドルから599ドルに値下げしているが、これはSupraModem 2400の敵ではなかった。

この連載の記事
-
第864回
PC
なぜAMDはチップレットで勝利したのか? 2万ドルのウェハーから逆算する経済的合理性 -
第863回
PC
銅配線はなぜ限界なのか? ルテニウムへの移行で変わる半導体製造の常識と課題 -
第862回
PC
「ビル100階建て相当」の超難工事! DRAM微細化が限界を超え前人未到の垂直化へ突入 -
第861回
PC
INT4量子化+高度な電圧管理で消費電力60%削減かつ90%性能アップ! Snapdragon X2 Eliteの最先端技術を解説 -
第860回
PC
NVIDIAのVeraとRubinはPCIe Gen6対応、176スレッドの新アーキテクチャー搭載! 最高クラスの性能でAI開発を革新 -
第859回
デジタル
組み込み向けのAMD Ryzen AI Embedded P100シリーズはZen 5を最大6コア搭載で、最大50TOPSのNPU性能を実現 -
第858回
デジタル
CES 2026で実機を披露! AMDが発表した最先端AIラックHeliosの最新仕様を独自解説 -
第857回
PC
FinFETを超えるGAA構造の威力! Samsung推進のMBCFETが実現する高性能チップの未来 -
第856回
PC
Rubin Ultra搭載Kyber Rackが放つ100PFlops級ハイスペック性能と3600GB/s超NVLink接続の秘密を解析 -
第855回
PC
配線太さがジュース缶並み!? 800V DC供給で電力損失7~10%削減を可能にする次世代データセンターラック技術 -
第854回
PC
巨大ラジエーターで熱管理! NVIDIA GB200/300搭載NVL72ラックがもたらす次世代AIインフラの全貌 - この連載の一覧へ











