自動運転で注目される技術はAIだけじゃない
自動運転時代を迎えると、自動車メーカーとIT/エレクトロニクスメーカーの結びつきは極めて強固になることを示すものになったといえよう。
自動運転の実現には、今回のCES 2017でフォーカスが当たったAI分野だけでなく、自動運転を実現する要素技術の部分でも連携が不可欠だ。
パナソニックの津賀一宏社長は「ヘッドアップディスプレーや電子ミラー、エンターテインメントシステムのほか、クルマ全体の制御シテスムなどで、パナソニックの提案が可能になる。強みを持つセンサーを活用することで、コックピットとつなぎ、自動運転の状況をいかにドライバーに伝えるのかといった提案も可能になる」とするほか、「さらに、コネクテッドカーという観点からも強みを発揮できる。スマホとの接続や、コネクテッドカーを実現するためのデジタル系プラットフォームの開発、接続用の通信アンテナなどのデバイスにも強みが発揮できる。コネクテッドカーの進化が進めば、パナソニックには大きなビジネスチャンスが生まれる」とする。
自動運転は、IT/エレクトロニクスメーカーにとってはまさに活躍の場が大きい市場なのだ。
そしてこんな観点からも、エレクトロニクスメーカーにはチャンスが生まれる。
家庭に「もう一部屋」新たに生まれる車室内空間
パナソニックの津賀社長は「自動運転によって、クルマそのものが変わってしまうことになる。別の言い方をすれば、クルマが家のような存在になり、『走るリビングルーム』になるかもしれない。そうすれば、これはパナソニックの得意分野。そこで新たなビジネスを作ることができる」とする。
CES 2017のパナソニックブースでは、2025年の自動運転の時代を想定した「車室内空間」を展示し、乗用車で対面シートを実現するインテリア技術を紹介した。
ここでは20型4Kタブレットやプロジェクションマッピング、ナノイー、カメラなどのパナソニックのコマーシャル技術およびコンシューマ技術を活用。木目調の内装部にはプロジェクションマッピングを活用したデザインが随時施され、窓には各種情報が表示される。名所旧跡の近くなどを通過したときに、窓に名所旧跡に関する情報が表示されるといった使い方が可能であり、同乗者と楽しく過ごす車内環境を実現できるという。まさに、車内のリビング化だ。
一方で、パナソニックのオーディオブランドであるテクニクスでは、ベルリンフィルと提携し、パナソニックが車載機器開発で培った技術力と組み合わせることで、車内でもコンサートホールにいるような臨場感のある視聴体験ができる空間の創造を目指して、共同研究を開始したところだ。すでに、パナソニック社内には、車内での音質を評価するための特別なクルマが、研究開発用に用意されているという。
これまでは、ドライバーに音場をあわせるのか、後部座席に音場を合わせるのかといった問題もあったが、対面座席になればそうした課題も解決しやすい。EV化によってエンジン音がなくなり、自動運転によって不要となるガラス窓部分を少なくすれば、音を聴く環境としても適していることになる。
考え方を変えれば、自宅内にオーディオルームを持てない場合にも、クルマを新たな一部屋ととらえ、自分好みのオーディオルームを作ることが可能になるともいえるだろう。
オーディオに特化した車内を作ることができれば、走っているときだけではなく、車庫に入っているときもオーディオルームとしての利用が可能になる。つまり、自動運転車を持つ家庭のすべてで、「もう一部屋」の空間提案ができるようになるともいえるわけだ。
「パナソニックは、自動運転の世界においてリーダーシップを取るつもりはない。いや、取れないと言った方がいい」と津賀社長は語るが、その一方で「自動運転の周辺の境界領域において、多くのビジネスチャンスが発生すると考えている。自動運転のコア以外の部分が、ビジネスの中心になる可能性もある」とする。
パナソニックは、自動運転の主導権を取らなくても、自動運転において最もビジネスチャンスを掴むことができる企業の一角を担うことにはなりそうだ。
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