これまでの中国では中古販売は成立しなかった
今まで中国でまともなPCスマホの中古販売・買取店は存在してなかったといっていい。
少なくとも筆者は長くウォッチしてきたが知らない。つまりPCやスマホを買い取ってもらったり、中古を購入するという習慣は多くの人にはない。
ジャンク屋とも泥棒市場ともいえるような個人商店や、「淘宝網」(Taobao)などのサイトで中古商品を出品する人もいる。
不良品や盗難品を販売しているだろうという認識から、これまで中古市場は未開拓の「ブルーオーシャン」の1つでありながら、誰も手をつけない領域だった。
日本でソフマップやじゃんぱら、最近ではツタヤやGEOやブックオフなどが中古販売や買取を行なえたのは、中古でもちゃんとチェックして商品として成り立つだろうという、消費者の信頼を得ているからだと中国から見て思う。
信頼と提携を武器に中古市場を開拓
そんな不毛の中国中古市場を突然「愛回収」が変えているのはなぜなのか。
2016年、愛回収をよく見るようになったが、それ以前から低空飛行ながらサービスをひっそりと行なっていた。
2013年にはECサイトとしてまずまず有名な「1号店」と提携の後、2014年には家電製品販売から拡大していったECサイト大手の「京東(jd.com)」と提携、2015年には小米(シャオミ)やサムスンと提携した。
メーカーによる提携により、中古で販売されるそのメーカーの中古製品の信頼があがるし、また京東はアリババ系の「天猫」同様、信頼ある=騙されないECサイトを目指している。
著名ECサイトやメーカーと提携し、これまでに欠けていた中古製品の信頼を獲得していく。リアルでは、各都市で人々の移動の導線に愛回収のスタンドを置くことで、愛回収の認知度を高めていった。
また、愛回収に将来性を感じた企業が愛回収に投資、その資金をもとに事業スピードを加速させている。
愛回収のユーザーデータを見てみれば、買い取りの利用者はこれまでの中古市場の悪いうわさをあまり聞かなかったり、中古市場にトラウマのない、20代に集中(46%)している。その世代やその下の世代が口コミを通じて中古を受け入れる文化を徐々に作るのではないか。
中国では今後中古市場がますます加速する!?
多くの中国人がスマホを所有する現在でも、年間1億台のスマホが中国で売れる。つまり毎年1億台が廃棄される可能性があるのだが、電子機器回収率は2%ともいわれており、リサイクルは不十分だ。筆者自体も愛回収以外では、リサイクルボックスは見たことがないし、どこで「正しく」廃棄していいか知らない(違法回収業者は電脳街で見かける)。
愛回収はまだ大都市での普及がはじまろうとしている段階といってよく、これからより利用されるだろうし、その先にはさらに大きな地方都市市場がある。
また愛回収が進出する前に、「これはおいしいビジネスだ」とばかりに、愛回収を模倣したサービスが出てきてもおかしくない。そうなれば一層中古市場浸透が加速するだろう。
この連載の記事
-
第211回
トピックス
日本のSNSでブレイクの「格付けミーム」は中国発 中国のコンテンツが日本で二次創作に使われる例が生まれる -
第210回
スマホ
中国で中古スマホ市場が真っ当化 中華スマホが安く買えるようになった -
第209回
トピックス
海外旅行でAIアシスタントを活用したら、見知らぬ場所にも行けて旅が楽しくなった! -
第208回
トピックス
中国のゲーマーが20数年待ち望んだ国産AAAタイトル『黒神話・悟空』の人気で勝手にビジネスを始める中国の人々 -
第207回
スマホ
折りたたみスマホが次々と登場する中国 カワイイニーズ&成金ニーズがキーワードか -
第206回
トピックス
AI時代に入り、中国独自の半導体による脱米国の可能性は少し出てきた!? -
第205回
トピックス
中国のガジェットレビューがメッチャまとも&有用になっていたのにはワケがあった -
第204回
トピックス
必死に隠して学校にスマホ持ち込み!? 中国で人気のスマホ隠蔽グッズは水筒に鏡に弁当箱 -
第203回
トピックス
死んだ人をAIを動かすデジタル蘇生が中国で話題! 誰もが「死せる孔明生ける仲達を走らす」時代に!? -
第202回
トピックス
停滞感があった中華スマホだが、生成AIが盛り返しのきっかけになるかも -
第201回
トピックス
ようやく高齢者にスマホが普及し始めた中国 ECで爆買い、そして詐欺のカモにされることも - この連載の一覧へ