新年最初の、業界に痕跡を残して消えたメーカーは、Media VisionとAureal Semiconductorを取り上げたい。建前上は別のメーカーで、少なくとも経営陣には継続性はないのだが、実質的には1つのメーカーである。
どちらもサウンドカードを扱っていた会社であり、Creative Technologyと長く争ったメーカーでもある。いきなりMedia Visionの話をする前に、まずCreative Labsを中心にサウンドカード市場の生い立ちを簡単に解説しよう。
ちなみに、古い読者の方にはCreative TechnologyではなくCreative Labsの名前の方が親しみがあるかもしれない。Creative LabsはCreative Technologyの子会社にあたり、本社はシンガポールにあるCreative Technologyである。
現在ではCreative Labs America/Europe/Asiaという3つの子会社があり、それぞれがその地域における営業やサポート、トレーニングなどを担う形になっている。Sound Blasterなどの製品には両方の表記があったりする関係で、どちらでも間違いではないのだが、本稿ではCreative Technologyで統一する。
ビジネスをPCからサウンドカードに切り替えた
Creative Technology
Creative Technologyは1984年、Sim Wong Hoo氏とNg Kai Wai氏の2人によって創業された。なお、創業に当たって集めた資金は6000ドルほどだったようだ。
当初はショッピングモールの小さなパソコンショップで、おもにApple IIに向けた拡張カード類などを扱う店だったが、そのうちApple IIをベースにしたCubic 99なるマシンを製造した。
Cubic 99は、独自のサウンドチップを搭載して音を鳴らしたり喋ったりできたのがApple IIとの違いで、“Talking Computer”として知られたらしいが、商業的に成功したか否かは不明である。
1986年、同社は50万ドルあまりを投資して、IBM-PCのマーケットに参入する。特にシンガポール地域に向けて英語と中国語を翻訳できるようなマシンとしてCubic CTというシステムを作るが、これは商業的には失敗だった。
ただCubic 99の頃からSim氏はサウンド周りに強みがあったこともあり、ビジネスをサウンドカードの製造に切り替える。1987年に同社が開発したC/MS(Creative Music System)は、PhilipsのSAA1099という6声の同時発声可能なチップを2つ搭載して12声を同時発声できることを強みにしていた。
これを完成させてからSim氏は米国にCreative Labsを設立し、米国での売り込みを図るものの、Ad Lib, Inc.のALMSC(AdLib Music Synthesizer Card)にあえなく敗退する。
画像の出典は、“The Centre for Computing History”
Ad Lib, Inc.は1987年に創業し、同年このALMSCを発表したばかりだが、いくつかのゲームが当初からALMSCのサポート(語感の都合か、普通はAdLibのサポートという表現になっていた)をうたっており、これが理由で多くのソフトが追ってAdLib互換をうたうようになっていた。こうなるとALMSCと互換性のないC/MSは受け入れられなかったわけだ。
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