今日ではオープンソースはどこにでもあり、世界を席巻しています。最近までVR(仮想現実)はすべてプロプライエタリ(独占的)な技術でしたが、OSVRの登場でこの流れが変わろうとしています。Elio Qoshiが『Sourcehunt: Emerging Tech Edition』でエマージングテクノロジーとして紹介したSourcehuntの記事を読んで、OSVRの概要をすでに知っている人もいるかもしれませんが、この記事でもう少し詳しく説明します。
OSVRは「Open Source Virtual Reality」の略で、ゲーム愛好家の間ではとても有名なRazerとVR製品の製造メーカーSensicsがヘッドセットとテクノロジーを開発しました。Intelなど業界を牽引する企業を含む300社以上がこのプラットホームをサポートしています。
OSVRとは?
OSVRは単なる新しいヘッドセットのことではなく、プラットホームやハードウェアなどの総合的な動きを指します。開発者によると、プラットホームは同業他社と競うことが目的ではなく、OSVRは他社のヘッドマウントディスプレイ(頭部搭載型ディスプレイ)でも動くよう設計され、既存のデバイスやソフトウェアが相互運用できるオープン標準を作るという使命を掲げています。
開発者や消費者は、OSVR対応のヘッドマウントディスプレイを設定すれば、すぐにでも使い始められます。OSVRのWebサイトではすぐに使える互換性のあるソフトウェア(「体験」とも呼ばれる)を大々的にアピールしています。すでにゲーム、メディアプレイヤー、エミュレーターなどがあります。SteamVR向けコンテンツもたくさんあります。
現在OSVRに対応するOSはAndroid、GNU/Linux、OS X、Microsoft Windows です。
ヘッドセット(HDK)
OSVRを試してたくなりましたか? ちょうどいま、2種類のHacker Development Kit(HDK)と呼ばれるヘッドセットを選べます。
OSVRのHDK1は2015年7月に発売され、5.5インチ有機ELディスプレイ、解像度1920×1080ピクセル(片目で960×1080)、加速度計、ジャイロスコープ、コンパスなどのセンサーを備えています。USB 3.0用ポートは内部に2箇所、外部に1箇所の合計3箇所です。価格は300ドルからになります。
OSVRのHDK2は2015年に公開されHDK1と性能はほぼ同じですが、ディスプレイが改良されています。解像度2160×1200ピクセル(片目で1080×1200)、画素密度 441PPI、動画のなめらかさはHDK1の60FPSに対しHDK2は90FPSです。基本キットの価格は400ドルです。
OSVRのHDKには内臓のオーディオ出力も入力もないので、外付け装置を使用します。
HDK1に必要なシステム要件は、少なくとも3GHz Intel Core i5 か同等のCPU、グラフィックカードはNVIDIAのGeForce GTX 660で最低でも8GBのRAMが搭載されていると良いでしょう。一方HDK2の場合は、Intel Core i5-4590相当かそれ以上のCPU、グラフィックカードはNVIDIA GeForce GTX 970もしくはAMD Radeon R9 280と同等で、少なくとも8GBのRAMの搭載が推奨されています。
ここでエコシステムを持っているのはHDKに限らず、サードパーティ製ディスプレイと互換性があることも書き加えておきます。一番良いのはどれでしょうか。OSVRのオープンスタンダード用に開発されたソフトウェアであればどれもOSVR対応のハードウェアで動くはずです。ここで重要な役割を果たしているのは開放性(オープンネス)と包含性です。
OSVRの情報はどこ?
プロジェクトコードはApache License 2.0でGithubから入手できます。目的を問わず誰でもソフトウェアの使用、修正、配布できるというライセンスです。HDKのデザイン、設計についても同様で、3Dプリンターと適切な素材を使って、誰でも一から好きなように作れます。
ほかのたくさんのオープンソースプロジェクトと同様に、OSVRにもコミュニティがあり、開発者向け、利用者向け、興味がある人向けと多岐にわたります。OSVR Forums、OSVR Subredditなどのオンラインリソースもあります。またDeveloper SectionのWebサイトや、Developer Portalも公開されています。開発者同士のコミュニケーションを目的としたメーリングリストもあります。さらに、Freenodeの#osvrというIRCチャンネルでチャットで交流できます。
ユーザーサポートは、サポートチケットを送信してドキュメントに接続できるSupport Portalがあります。
OSVRのソーシャルメディアもあります。FacebookやTwitterで情報を確認してください。
開発者にとってのOSVR
ゲームエンジンの場合、CryEngine、SteamVR、Unity、Unreal、WebVRなどの主要なプレイヤーは参入しています。ゲーム開発をしてみたければ、公式のドキュメントが役立ちます。近々、もっと多くのチュートリアルが公開されるはずです。
開発者だけでなく、開発者とはまた違うスキルがあるVR愛好者もぜひプラットホームの発展に協力してください。協力者を募集中のGiTHubが一覧になっているWaffle.io boardも公開されています。習得すべきプログラミング言語に関しては、大多数のプロジェクトコードがC++で書かれています。次に多いのは主にハードウェアで目にするJSONです。
2016年6月にOSVR開発者向けファンドが始まりました。現在いくらぐらい集まっていると思いますか? 500万ドルからさらに増えています。これまでにRazerは数百の応募から選んだ15のVRゲームに投資しています。このファンドは誰にでもチャンスが開かれており、まだ登録受付中です。
おまけ情報: OpenVR
OpenVRはVR機器にアプリケーションを接続するAPIです。APIはValve Softwareでサポートされていて、BSD 3-Clause Licenseです。
2015年、RazerはOpenVRとOSVRの提携を発表しています。
今後の展望
OSVRのヘッドセットはライバルとしのぎを削っており、価格はかなり下がってきています。さらに、プロジェクトは専用デバイスに制限されないので、現在と未来のテクノロジーをもっと組み合わせようとしています。
OSVRはまだまだ始まったばかりです。リソースはWebサイトのあちこちに散らばっていて、これから始めようとしている新しいファンにとっては出端をくじかれる程かもしれませんが、豊富にあります。けれども、オープンソースとオープンハードウェアの真の価値が理解できるものばかりで、個人でも貢献でき、自身のハードウェアさえも作れるのです。
全体的に見てOSVRは非常に前途有望で、重要な使命と大きな可能性が秘められています。VRがみなさんの手に届きますように!
[翻訳:和田麻紀子/編集:Livit]