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ソフトベンダーTAKERU 30周年 レトロPC/ゲームを振り返る 第5回

『TAKERU』約20年ぶりのアキバ登場に大興奮!? レトロPCと一緒に展示された2日間

2016年12月06日 18時00分更新

文● 宮里圭介

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予約で満席&立ち見も多数のトークステージ

 TAKERU30周年イベントは展示物だけでない。トークステージも注目度が高く、予約がほんの数日ですべて埋まるほどだ。2日間で6つのセッションが用意されていたが、実際どんな話がされていたのか、簡単に紹介していこう。

1日目の13時開始を最初に、2日目の16時半まで、全部で6つのトークステージが用意されていた。

事前予約で満席となっていたため、当日のキャンセル待ち列が長蛇に。座れなかった人も、立ち見で参加していく人が多かった。

#1日目セッション1
「奇跡の再集結!? あの編集者たちと語り尽くす「TAKERU時代」

右から順に、高橋ピョン太氏、忍者増田氏、くしだナム子氏の元ログイン編集部3名が登壇。

 最初のトークステージは元ログイン編集部の3名による、当時のゲーム思い出話がメイン。

 高橋ピョン太氏は元々プログラマーとして参加していたが、その後編集者になり、6代目編集長まで務めた。毎号プログラムを掲載し、入力することで遊べるという史上初の「連載RPG」を手掛けた。なお、TAKERUのソフト販売数ではトップクラスとなる『まみりん』(RPG作成ツール)の作者だが、開発が遅れ、発売が半年も遅れてしまった。ようやく出来上がったソフトの引き渡し時に、担当者が名古屋から新幹線で取りに来たという。

リストを一括で掲載するのではなく、連載という形式にしているのが新しい。1回目ではメインプログラム、2回目以降はシナリオプログラムを掲載。

 忍者増田氏は、元はログインの常連投稿者。ポイントを集め、『X68000ACE』をもらったそうだ。その後アルバイトとしてログインに参加。人気コーナー「WIZでござるよ」を担当し、ログイン以降の時代も含め、21年間も続く長寿コーナーとなった。『まみりん』は予約するも発売日が伸びたため、返金されたという話を披露。

基本的にはウィザードリィの話がメインだが、たまに脱線することも。終了や再開を繰り返し、21年もの連載に。

 くしだナム子氏は、PCゲーム誌にいながらファミコンやラジコンを担当することが多かったという。「足軽」(アルバイト)として奉公。先の『まみりん』つながりでは、発売後のユーザーからの電話を取っていたものの、肝心の高橋ピョン太氏がおらず、対応に苦労したとか。

本人はゲーム以外のページが多いといっていたが、ちゃんとゲーム関係のページも担当。

 ログインといえばゲーム雑誌ではあったのだが、バカ記事の多さも特徴。例えば戦国シミュレーションゲームの特集のはずなのに、“戦国体質”になろうという主旨になっていたりと、切り口がかなり特異だ。『天下統一』も普通にプレーするのではなく、メーカーにお願いして特別に改造してもらい、なんと58人でプレーするというおかしなことになっていた。

攻略やゲーム紹介ではなく、独自路線をつき走る特集。そもそも改造ゲームだというのもおかしい。

 この後、思い出のゲームということで、『ARCHON』(忍者増田氏)や『ヤンパラアドベンチャー ヒランヤの謎』(くしだナム子氏)、『オリオン/クエスト』(高橋ピョン太氏)をはじめ、10本以上が紹介された。

国内PCへと移植される前から遊んでいたという『ポピュラス』。編集部の全員が「上げたり下げたり」して遊んでいたそうだ。「親の心ポピュラス」というコーナーも作ったとのこと。

#1日目セッション2
「1986 ゲームミュージックの夕べ」

右から順に、高橋俊弥氏、池田公平氏(五代響)、三橋正邦氏(大葉浩美)が登壇。

また、司会補佐の解説役として、上野利幸氏(ゲヱセン上野)も登壇した。

 初日2つ目のステージは、ゲームミュージックにスポットを当てたもの。80年代後半といえばFM音源チップなどの登場でゲームミュージックの重要性が高くなり、サントラCDなども発売されるようになった時代。どうやってゲームミュージックを作るのか、また作る時の苦労話などで盛り上がった。

 高橋俊弥氏は『ザナドゥ』の音楽を担当。当時ログインにいたのだが、ファルコムの取材から帰ってきたM氏から音楽担当がいないという話を伝えられ、そのまま連れていかれ音楽を担当することに。すでに机が用意してあったという。音楽を作るのに世界観の説明とか、ゲームの画面を見せてもらうとかは一切なかったそうだ。少し作ってみては「いいね」とか「よくない」とかいわれ、直していったとのこと。最も苦労したのは、冒頭にある「シャキン!」という効果音。ある程度できてくるといろんな人が聞きに来て、「これは日本刀の音だから違う」などといわれ、西洋の剣らしい音になるまで何度も作り直したそうだ。

プログラマーの木屋善夫氏、グラフィックの山根ともお氏と共に3人で作ったという。X1版が一番最初で、会場に流れた音楽もこのX1版だ。

 池田公平氏は『テグザー』の音楽を担当。ゲームと曲は別物と考えて、作りたいように作ったという。新しいサウンドボードを搭載したPC-8801mkIISRが登場し、正月休みだけでいいから貸してくれとNECから奪うように借りたのはいいが、肝心のFM音源の使い方がわからなかったという。解析してようやく音の鳴らし方がわかったものの音色の変え方がわからなかったため、パイプオルガンの音だけにしたとのこと。結局テグザーは3か月で開発し、4月に発売。最後の方はFDにひたすらコピーするという手作りでやっていた。

会場で流れたテグザーの曲は、新しくアレンジしたもの。他の人がアレンジしたもののいい部分を取り入れているという。

 三橋正邦氏は『シルフィード』を担当。シルフィードの曲が多いのは、開発が遅れたからという裏話が……。ゲームの進行と音楽が同期できないため、音楽がものすごく盛り上がっているのに平原を歩いているだけ、みたいなことにならないよう、ゲーム音楽は一本調子で作るのがコツとのこと。シーンに合わせてシームレスに切り替えたくなって作ったのが『ファイアーホーク』。曲もパーツで作り、切り替えポイントをいくつも用意してそこでシームレスに切り替えていたそうだ。

起動直後からライバルに「かなわない」と思わせたくて、音声合成でしゃべらせたとのこと。シルフィードのオープニングは今見てもカッコイイ。

#1日目セッション3
「ブラザートークセッション TAKERU開発秘話」

TAKERUの開発者である安友雄一氏。1981年にブラザー工業へ入社し、1983年にニューメディア事業としてTAKERUの開発を始めた。

 初日最後のステージは、TAKERUの開発者である安友雄一氏による「開発秘話」。

 ブラザー工業はシンガーミシンの輸入・修理からはじめ、1932年に自社のミシンを発売。1950年代にはバイクも作っていたが、伊勢湾台風で工場が流されてしまい撤退。また、1960年代はタイプライターを始めたほか、1970年からはドットインパクトプリンターなども手掛けるなど、ミシンだけでなく、かなり手広く事業を展開していたそうだ。そして1980年代となり、時代はニューメディア(通信ネットワーク)だとなったときに、白羽の矢が立ったのが安友雄一氏だ。

 当時のPCソフトはパッケージ販売が主流だったが、売れても補充がなかなか来ず、そして売れないものはいつまでも残るといったように、扱いにくいものだった。この商品を店先でオンデマンド製造できれば売り切れも売れ残りもなくなるのではと考え、ニューメディアを使った自動販売機として作られたのが『TAKERU』だ。

当時は通信速度が遅いうえ、通信網そのものも貧弱だった時代。このときにオンデマンド製造で販売するというのは、実現不可能なアイディアだと考えるのが普通だろう。

 この開発にまつわる詳しい話は別記事にまとまっているので、そちらを参考にしてほしい。

 ステージでは「田町にある会社から75万円のモデムを10万円まで値下げさせた」話や、「撤退費用の改造費への転用」、「ISDN回線での無課金通信」など、詳しく書くと怒られそうな裏話があり、大変盛り上がっていた。また、「月商1億いったら家族もみんなハワイ旅行に連れて行ってやる」と社長が口約束したものの、実際到達したら知らぬ存ぜぬで押し通され、部下との板挟みにあったといった話も飛び出した。

 年商10億を超えても「100億以上ないと認めない」といわれたため、新事業として4500億円市場のカラオケを狙うことにしたそうだ。社内では怪しい商売だのカラオケなんて絶対に許さないだのといわれ、コードネームとして「CK」(コンピューターカラオケ)とつけたらクレームが多数くるなど、かなりの反対があった。しかし、名前を「CMS」(コンピューターミュージックシステム)に変えたとたんピタッとクレームがなくなったという。このことから、「1円でもいいから黒字にすること」と「ネーミングセンス」の2つが重要だと話していた。

TAKERUがいたソフト販売ビジネスはマーケット規模が200億円。10億円(5%)はとれたものの、会社からは100億以上という指示が……。そこでカラオケに目を付けたそうだ。

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