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「OpenShift」導入で開発/テスト環境の柔軟さを向上、従来の制約を排除―「Red Hat Forum 2016」

日立、大規模受託開発環境にコンテナを採用した理由を語る

2016年11月02日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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パブリッククラウドも活用可能、柔軟さを増した新たな統合開発環境

 こうして日立 アプリケーションサービス事業部では今年4月、レッドハットのコンテナ基盤ソフトウェアである「Red Hat OpenShift Container Platform」を導入し、日立のJavaEEアプリケーションプラットフォームである「Justware」と組み合わせた統合開発環境を構築した。

 この開発環境の構築においては、将来の発展も見据えて「オープン」「自動化」「経験」という3点を重視したという。

 「オープンテクノロジーの採用で、開発者も慣れ親しんだ環境が利用できる。また自動化は、効率化もさることながら、われわれにとっては属人性を低減させて品質をより均一化することが狙い。さらに、当事業部の50年以上におよぶ経験から得たノウハウを、このプラットフォーム上で具体化していきたいと考えている」(広瀬氏)

新しい統合開発環境のコンセプトは「オープン」「自動化」「経験」

 具体的なインフラ/ソフトウェアスタックの構成はプロジェクトごとに異なるものの、インフラとしてオンプレミスサーバーだけでなく、パブリッククラウドサービス(Microsoft Azureなど)も活用できる構成としており、これまで問題だった準備期間(調達期間)の短縮、開発者数の急な増減への対応も実現している。

 そのほか、開発チーム自身がセルフサービスポータルから利用申請すればすぐに開発環境(ソフトウェアスタック)が用意され、その環境上でコンテナも活用できるなど、これまでの開発環境では得られなかった柔軟さと高い集約度が生まれているという。

新たな開発環境におけるソフトウェアスタックの一例。インフラ部分はオンプレミスサーバー/クラウドを選択可能、さらにコンテナ技術適用で柔軟さと集約度を確保

 より詳しく統合開発環境の内容を見ると、OpenShiftをベースとして、JavaEEベースのアプリケーションフレームワーク(Justware)、プロジェクト管理ツールやCI環境を含む開発支援環境で構成されている。

 なお日立のJustwareは今年4月、機能強化によってOpenShiftに対応し、OpenShiftのコンテナ技術やデプロイ管理機能との組み合わせによって開発/テストにおける柔軟性確保、効率向上を実現している。

アプリケーションフレームワーク

各種設計情報はリポジトリで一元管理

 またフロントエンド側の開発環境にも、レッドハットのMBaaSである「Red Hat Mobile Application Platform」と、アシアルのHTML5アプリ開発基盤である「Monaca」や「Onsen UI」とを組み合わせ、採用したことを同日、発表している

 前述したCI環境は、コードリポジトリの「GitHub Enterprise」やCIツールの「Jenkins」、ビルドツールの「Maven」などで構成されており、これらがDockerと連動して、コンテナイメージからのテスト環境の生成とアプリケーションのビルド、テスト実行までが自動化されている。

CI環境によりテスト環境の準備からビルド、テスト実行までを自動化している

将来の本番環境への導入、マイクロサービス化にも備えるコンテナ採用

 広瀬氏は、同事業部がコンテナテクノロジーを初導入するにあたり、レッドハットのOpenShiftを選択した理由を「商用サポートがあったから」だと語った。

 「コンテナ技術、Dockerならば、OSSを含めいろいろなプロダクトがあるのは事実。ただし、商用サポートが受けられるとなるとレッドハットだった。また、エンタープライズ市場ではすでにレッドハットの製品やプラットフォームが多く採用されており、(将来的に考えられる)顧客環境への導入も敷居が低いのではと考えた」

 今回、日立 アプリケーションサービス事業部がコンテナ技術を適用したのは、あくまでも開発/テスト環境においてだ。ただし今後、コンテナに対する顧客側の理解が進めば、コンテナ化したアプリケーションをそのまま本番環境にデプロイすることも十分に考えられる。

 また広瀬氏は、これから業務アプリケーションにも「マイクロサービス化」の波が押し寄せることになり、そのためにもコンテナ環境が欠かせなくなることを指摘した。

 「マイクロサービスとコンテナは“車の両輪”の関係。マイクロサービスを簡単、迅速にデプロイするためには、(OSからライブラリ、ミドルウェアまで)フルスタックの仮想マシンではなく、コンテナが適している。マイクロサービスとコンテナはそういうバランスで成り立っており、マイクロサービスの普及と並行してコンテナ普及も加速していくだろう」

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