SerialATAに移行し
IDEは影響力を失う
このあと同社は2001年末、FastTrak TX2000を発表する。こちらは最終的に2005年にANSI INCITS 397-2005として標準化されたUltra DMA/133を前倒しでサポートした製品だが、これに対応した製品はMaxtorの一部程度で、ほとんどのHDD製品はUltraDMA/100どまりだった。
これはHDD側だけでなくコントローラー側もそうで、VIAのチップセットなどは後追いでUltraDMA/133をサポートしたが、インテルのサウスブリッジはついに最後までUltraDMA/100までのサポートだった。
理由は簡単で、SerialATAへの移行が見えていたからだ。実際ANSI INCITS 397-2005にはUltraDMA/133と一緒にSerial ATA 1.0の規格も統合されている。2002年頃からはぼちぼちSerial ATA関連製品も登場し始めており、もうIDEケーブルの時代ではなくなりつつあった。
結果、FastTrak TX2000はそれまでのUltra33/66/100やFastTrak33/66/100ほどには売れなかった。
もちろんPromiseもこうしたことはきちんと理解しており、2002年のIDFではSerial ATAに対応したプロトタイプを発表したり、同年10月にはネイティブでSerial ATAに対応したFastTrak S150 TX2/TX4を発表(国内では2003年3月に発売)するなど努力はした。
しかし、FastTrak S150は発熱が多く、チップ上にヒートシンク必須な上に価格も高かったため、あまり流行しなかった。
むしろSerial ATAでは早くからSerial PHYの技術に定評のあったSilicon Image製コントローラーが広く利用されており、Promiseはどんどんシェアを落としていく。
もちろんPromiseはIDEに特化といっても、いろいろやっていた。初期にはOctet StationなるHDDのデュプリケーターや、LS120ドライブ(フロッピーに似た構造だが120MBの容量がある独自のもの)をサポートするFloppyMAX I/Fカードなどを販売していたし、1998年にはSimpleSCSIやSCSIPlus、SCSIULTRA40/SCSIULTRA80といったSCSI I/Fも手がけていた。
またFastTrakの上位機種としてRAID 5に対応したハードウェアRAIDエンジンを搭載したSuperTrak66/SuperTrak SX6000などのカードもラインナップ。さらにはこのSuperTrakをベースにしたRAID SubsystemであるUltraTrakシリーズなども手がけたが、ことコンシューマー向けのビジネスではどんどん影響力を失っていく。
画像の出典は、“Web Archive”
ストレージサービスに業務を転換し
業界で生き残る
IDEの影響力を失っていく代わりに、2004年からV-Trakと呼ばれるiSCSI向けの製品を順調に拡充しており、最近はこれに特定用途向け製品(監視カメラ向けのVESSシリーズ、クラウドストレージ向けのFileCruiserなど)やストレージ関連ソフトウェアなど、完全にビジネス向けのストレージサービスを提供する会社になっており、もはやI/Fカードの会社ではなくなっている。
ただ、会社そのものは安定している。下のグラフは2003年以降の同社の売上をまとめたものだが、日本円換算で1兆円を超えたのは2013~2014年のみとはいえ、2008年以降はそう悪くない売上が続いている。
2016年の落ち込みが激しいのは、9月までの分しか集計されていないためで、同社の場合12月の売上が増える傾向にあることを考えると、実際には昨年より微減程度で収まると思われる。
浮き沈みが激しいPC業界を捨ててエンタープライズ向けに振ったことで、安定したビジネスができているということかもしれない。
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