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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第136回

Cubetto――木製がポイントのプログラミングおもちゃ

2016年10月25日 10時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII.jp

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幼児向けの木製プログラミングキット「Cubetto」

 電気部品が絡むKickstarterなどのクラウドファンディングプロジェクトは、非常に難しいですね。筆者も新しいアイディアが好きで投資、というか先行予約をしてみるのですが、なかなかうまくいかないことも多いのです。

 いくらたくさんの投資を集めていても、いざ、数百個作ろうという規模になっただけで、デザインや設計の甘さが露呈し、プロジェクト発案者が想定した機能を上手く果たしてくれないという知らせを、バッカー(支援者)宛のメールとして受け取ることが増えてきます。小さな磁石式の変換プラグ1つですら。

 なので、Kickstarterというそれを専門にしているサービスは、たまに爆発力あるプロジェクトもありますが、だんだん“話半分”という世界になっていくのではないかと思っています。Kickstarterは、マーケティングツールとしての活用が正しいようですね。

 ただ、このプロジェクトはぜひ成功してほしい、という思い入れのあるものもいくつかありました。そのうちの1つが、Primoの「Cubetto」です。ちなみにCubettoはKickstarterの支援者のほかに、きちんとした投資を受けています。

こどものおもちゃとして、よくできている

 Cubettoは名前の通り、立方体をちょっとつぶしたような四角い木製のロボットで、前進・後退・回転を行うことができる車輪が付いています。このロボットは電源をONにしただけでは動かず、付属してくるこちらも正方形のボードに、プラスティックのカラフルなブロックを並べてプログラミングします。送信ボタンを押すと、並べたブロックがCubettoに無線で送信される仕組みです。

 Cubettoには1辺15cmの正方形のマスにイラストが描かれた、布製のマップが付属してきます。このマップ上で、ゴールを決めて、そのゴールまでどのようにたどり着くかを、ブロックの組み合わせを駆使してプログラムするのです。

 Cubettoの対象年齢は3歳以上。でも、もうちょっと小さなこどもとも遊べるような配慮がなされています。Cubetto本体とコントロールボードの双方には電池を入れる必要がありますが、フタにはきっちりとねじ止めが施されています。

 また付属している部品で最も小さい物はブロックですが、こどもの手の平と同じほどの大きさで、誤飲することも難しいように見えます。またブロックの角は落とされており、若干形が分かりにくくなってしまっていますが、色分けされているため問題ないでしょう。

保育園が月数十万円かかるシリコンバレーで
トレンドになるアナログさ

 もう1つの特徴は、画面がないことです。

 これは、テクノロジーやプログラミングの考え方は学ばなければならない。しかし、画面を凝視するデジタルの世界とを切り離したいという親のジレンマを、絶妙なまでに解決してくれる可能性があるのです。

 シリコンバレー周辺の幼児教育は、朝8時から夕方6時まで保育園に預ければ40万円ほどになってしまいます。家賃と同じような高騰ぶりを見せているのです。そんな中でも最近注目されているのは、シュタイナー(米国ではウォルドルフとも)です。

 シュタイナー教育は、複雑な理論の上に成り立っていますが、欧州で宗教を主体とした教育から国家主体の教育へと移行する過程で、自由な精神の元で、体と心と精神の成長と調和を目指す考え方です。

 こどもの成長を「一つの芸術」ととらえ、教員は知識の伝達だけではなく、こどもの才能の開花を手伝う、アーティストのような姿勢が求められると言います。

 そんなシュタイナー教育では、キャラクターやテクノロジーを排除した、手触りを重視した環境が与えられます。身の回りで使う物も、食事やおやつも、おもちゃに至るまで、極力自然の物で手作り。

 その教育が、科学的にどう作用するのかという議論はさておき、デジタル漬けのシリコンバレー暮らしの親に人気があるのです。

 そんなトレンドがある中で、Cubettoは、画面がない、木製のプログラミングを学べるおもちゃ、を実現しています。厳格なシュタイナー教育の保育園が取り入れるかどうかはわかりませんが、この木製の筐体というのは、重要なデザイン要素なのです。

いざ、プログラミング

 Cubettoの記号的な意味合いとシリコンバレーの幼児教育トレンドについて、話が脱線してしまいましたが、ちゃんとプログラミングもしてみましょう。

 Cubettoのコントロールボードには、くねくねと曲がった1本道のタイムラインと、枠で囲まれたファンクションのボックスが用意されています。

 タイムラインにもボックスにも、ブロックを当てはめることができる穴が空いており、正しくセットされるとLEDランプが光ります。そして、送信ボタンを押してCubettoにプログラムを送り込むのです。

 ブロックは緑が前進、黄色が左回転、赤が右回転、青がファンクション。ブロックの総数は16個で、例えば前進は4つしかありませんが、布製のマップは5×5マスあります。1辺まっすぐ進もうとしても、前進のブロックが1つ足りません。

 そこで、ファンクションのボックスを活用しよう、という流れです。ファンクションには4つのブロックを配置でき、メインのタイムラインへは4つある青いブロックで呼び出すことができます。

 たとえば5マス前進したい場合は、ファンクションのボックスに2つの緑のブロックを並べて、タイムラインには2つの青いブロックと1つの緑のブロックを並べればゴール、というわけです。

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