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タブレットは教育現場をどのように変えたのか?

1650台のSurfaceを導入した畿央大学、3年目の現場を見た

2016年11月01日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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タブレットを活かす西端さんの3つのチャレンジ

 現在、西端さんは3つのチャレンジを抱えている。1つ目はタブレット導入初年度の学生の教育実習だ。

 タブレットを使いこなした学生たちが初めて実習に向かう今年度、実習させていただく小学校や教育委員会のレギュレーションに対応しつつ、創意工夫を求められた場合に、いかにユニークな授業を展開できるかという難しい課題に日々西端さんは学生ともども立ち向かっている。実際、畿央大学でも導入当初はタブレットに対する抵抗感が教員の間でもあった。しかし、紆余曲折を経て今ではすっかり教育現場に根付いている。この過程は、学生たちが向かう学校でも必ず起こると西端さんは語る。

小学校の教室を模したスペースも用意されている

「学生にはSurfaceを教育実習に持ち込んで欲しい。便利そうという先生もいるかもしれないし、そんなもん使うヒマあったら、子どもたちや黒板に向かえとおっしゃる先生もいるかもしれません。でも、そういう世代を超えたコラボレーションがそろそろ始まり、持っているノウハウを相互に吸収しつつ、現場で活用する方法をきちんと見出してきて欲しいです」(西端さん)

 次にチャレンジしているのが、日本学術振興会や日本マイクロソフトから助成を受けている特別支援教育分野における教材データベースの開発だ。特別支援教育の分野では、発達段階や特性に合わせた自作教材が作られており、たとえば、ある子どもはおにぎりが大好きなので、おにぎりからスタートするようカスタマイズされている。一方、別の子どもは、間違ったときにビープ音がするとパニックを起こしてしまうので、教材から外される。「こうしたカスタマイズされた教材をいろいろなお子さんで利用できるデータベースを作っているんです。そしてマシンラーニングを使ってお子さんの好みを学習したり、動画配信には自動的にモザイクをかけるといったことを試しています」と西端さんは語る。

 3つ目のチャレンジは、初等教育におけるプログラミング教育を推進することだ。現在、プログラミング教育に対しては、「プログラミングで何を学ぶのか」という教育意義に対するさまざまな意見や「そもそも誰が、何を教えるの?」という課題などがある。「これって10年前、小学校に外国語活動のときと同じ。でも、現在外国語活動がまがりなりにも浸透しているのは、電子黒板とデジタルコンテンツの普及があると思っているんです」と考える西端さんはこうした課題を解消すべく、プログラミング教育でもハードのみならず、コンテンツが重要だと考える。「朝の活動など、ちょっとした時間に、本当に少ないステップで簡単なゲームを作ってみるとか、安心感のあるコンテンツをタブレットで供給する必要があるだろうなと思っています」(西端さん)。

カフェテリアにSurfaceを持ち込む学生たち

 Surfaceをツールとし、西端さんが目指しているのは、学生が自ら5年先に自分で新しい教育方法を考え、実践するための教育。そのため、学生に身近なモノゴトからテクノロジーに近づき、現在の学生が持っている認識と最新技術のギャップを埋めていく。ポケモンGOからAR、回転寿司の話からICタグの話、最近では顔写真から人物や年齢を特定するアプリで遊んでから、目の不自由な人がSmartglassを使って目の前の人物の表情を識別する人工知能プロジェクトを紹介したという。

「最新技術も、単に紹介するだけだと、学生も『そんなことできるんやー』で終わるんですけど、私はその世界に行くためのステップを教えていきたいんです。そのとき未来として描いた世界も、5年経ったら当たり前のことになっています。学生時代に聞いた話を思い出して、次の世界を描けるようになってもらいたいんです」(西端さん)

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