同人ソフトの販売や「名作文庫シリーズ」に手を広げる
人物紹介
株式会社 マグノリア
代表取締役社長
広沢 一郎
当時ブラザー工業および事業移管後エクシングにてTAKERUのソフト販売に携わる。
※TAKERU30周年イベントに広沢さんも登壇予定!(詳しくはこちら)
メジャータイトルはなかなか出してもらえないという苦悩
「そこまでやる?」といわれるほどの通信最適化やコストダウンを続けてきたTAKERUだが、肝心の商品となるソフトに売るものが少ないというのが悩みだった。
「メーカーは、最初こそニューメディアとして歓迎していたようですが、では、ソフトをすぐにTAKERUで売ろうという話にはなりませんでした」
これにはいくつか原因があり、まずは多少安くTAKERUで売ったとしても、売れる数はパッケージと比べて大したことがないと思われていたこと。また、汎用のFDに書き込まれたTAKERUのものより、キレイな箱やシールといった購入特典グッズなどが付属するパッケージソフトのほうをユーザーが選びがちだという現実があった。とくにゲームでは、ソフトだけでなくパッケージそのものの商品価値が高かったのだ。
「なので我々は早々に有名メーカーの最新タイトルはあきらめて、攻めるべきはニッチだろうと舵を切りました。例えばソーサリアンであればタイトルそのものではなく、ちょこちょこしたシナリオ集とか、雑誌と連動したシナリオコンテストの作品などであれば、それを扱わせてもらえないかと」
今でいうなら、ソフトそのものではなくそのコンテンツを売る、ダウンロードコンテンツの販売に近いアイディアだ。メーカーがこういったものを売るとなれば、ソフト本体と比べ単価は相当安くなるし、扱う商品点数も増加してしまうため、パッケージで売るメリットがかなり薄まってしまう。それならこの部分はTAKERUに任せよう……という感じで、売れる商品を少しずつ増やしていったのだ。
過去のヒット作を廉価で提供する「名作文庫シリーズ」
有名メーカーの有名タイトルは、毎年のように続編が出ることが多かったが、すべての人が必ずしも前作をプレイしているとは限らない。そのため最新作品だけでなく、それ以前の作品をプレイしたいという人も少なからずいた。とはいえメーカーとしては、いつ売れるかわからない古い作品をパッケージで作り続け、在庫しておくわけにもいかないし、もちろんショップだって商品棚に限りがあり、いつまでも置いておけない。
「新しい作品が出たら古いのは引き上げてしまうのが基本ですが、その旧作をいただけませんかと、メーカーにお願いしました。新品で買えば9800円するものを、旧作ということでTAKERUで3800円で売れば、安くなってるなら買って遊んでみようかな、という需要があるだろうと考えたのです」
この目論見は見事にあたり、以後「名作文庫シリーズ」として定着する。書籍が最初ハードカバーで販売され、数年後に廉価の文庫として再販されるというのをイメージした名称だ。在庫をもたないTAKERUだからできるシナリオ集などの「ニッチ」な部分と、旧作を長期間売り続けられる「ロングテール」がTAKERUの強みとなっていった。
オリジナルタイトルの開発にも着手
有名メーカーだと主力ソフトは自社でパッケージ販売してしまうので、なかなかTAKERUに入れてもらえない。そのため、開発資金を出してTAKERU向けに新作を作ってもらったのがオリジナルタイトルの最初だ。しかし金額は吹っ掛けられるし、やはり他社向けということもあって大ヒットするような作品はなかなか作ってもらえず、うまくいかないことが多かった。
「このパターンはダメだということで、後半はお金や実績の少ない出来たてのメーカーさんと組むことが増えました。サイレンスの『宝魔ハンターライム』もこのパターンで、これは非常にウケました」
『宝魔ハンターライム』はその後、家庭用ゲーム機へと移植されたほか、OVA化もされるなど非常に人気の高いシリーズとなった。
「これ以外に、風景写真集のようなCD-ROMのパッケージソフトも作りました。販売店との取引口座があったので、パッケージソフトも売りやすかったんですよね。とはいえ、これはもうTAKERUじゃないじゃないよね、などといわれましたけど」
当時はちょうどWindows95が流行ったときで、解像度も色数も増えていき、PCでの写真鑑賞ができるようになってきた時代。しかし、スマホどころかデジカメすら一般的ではなかったため、画像や写真は需要が高かったのだ。
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