DiamondMaxシリーズが大ヒット
このあたりから、なんとかMaxtorは軌道に乗るようになった。1996年~2000年の数字を示すと以下の具合だ。
| Maxtorの売上と営業利益 | ||
|---|---|---|
| 年度 | 売上 | 営業利益 |
| 1996年度 | 12億6900万ドル | -1億2280万ドル |
| 1996年末 | 7億9890万ドル | -2億5630万ドル |
| 1997年 | 14億2430万ドル | -1億 990万ドル |
| 1998年 | 24億 850万ドル | 3120万ドル |
| 1999年 | 24億8610万ドル | -5010万ドル |
| 2000年 | 27億 480万ドル | 3180万ドル |
1996年に同社は決算期を3月末から12月末に変更しており、計算方法が以下になっていることに注意されたい。
1996年度:1995年4月1日~1996年3月31日の決算
1996年末:1996年4月1日~1996年12月31日の決算
1996年までは、旧来の製品をなんとか売って凌いでいたが、1996年以降はDiamondMaxシリーズやCrystalMaxシリーズに代表される新世代製品が軌道にのり、確実に売上げと利益をあげられるようになってきた。
とくに1998年にDiamondMaxシリーズで、大容量HDDを他社に先んじて投入、これでマーケットシェアを獲得できたのは同社にとって大きな強みとなり、売上もさることながら営業利益を大幅に伸ばすことに成功した。
同社がシェアを伸ばしたというのは他社のシェアを喰ったということでもあり、その最右翼がQuantumである。というわけでQuantumは連載375回で語ったとおり、DLSG(テープドライブ部門)を存続させてHDDG(HDD部門)の売却の道を探る。
ここで仮にQuantumをSeagateに買収されてしまうと、Maxtorとしては再びSeagateに大きく差をあけられてしまう。仮に1999年における業績で合算した場合、両者が合併すると60億8500万ドルの売上と2億263万ドルの損失という計算になる。
利益が出てないのはなんとかしなければならないが、Seagateの1999年の業績は61億8000万ドルの売上と12億7800万ドルの利益ということで、会社規模的には並ぶ格好になる。
あとは設備や人員の整理、投資などの最適化を図れば、利益を出してSeagateに拮抗できるという絵を描いても不思議ではない。
Quantumを買収するも黒字化ならず
ついにSeagateに買収される
では、2001年にQuantumの買収を行なった結果はどうかというと、売上げは10億ドルほど増えたものの営業利益は極端に悪化しており、結果から言えばQuantum買収は失敗であった。
| Maxtorの売上と営業利益 | ||
|---|---|---|
| 年度 | 売上 | 営業利益 |
| 2001年 | 37億6550万ドル | -6億1490万ドル |
| 2002年 | 37億7950万ドル | -3億3410万ドル |
| 2003年 | 40億8640万ドル | 1億 270万ドル |
| 2004年 | 37億9630万ドル | -1億8190万ドル |
2004年頃のForm 10-K(有価証券報告書)を見るとQuantumの買収にともない、MKE(松下寿電子工業)への支払いがあることが大きな要因に挙げられている。
Maxtorは自社で製造ラインを持っているため、これをフル稼働させて従来のQuantumの製品ラインに送り出せば、稼働率もあがり部材調達コスト削減などの相乗効果が期待できた。
ところがQuantumは松下寿電子工業と長期契約を結んでおり、この契約に基づいて生産委託を行なわなければならなかった。つまり、生産ラインでの相乗効果がまるで期待できなかったわけだ。
その一方で商品ラインの統合に時間をかけている間に、SeagateやWDC、IBMなどがQuantumの持っていたシェアを奪っていた。売上げが伸びず、赤字が増えるわけである。
2003年あたりからMaxtorはCEOがころころ入れ替わるが、もうCEOを変えればなんとかなる状況ではなくなっていた。結局2005年12月、MaxtorはSeagateに株式交換の形で買収される。
交換比率はMaxtor1株に対しSeagate0.37株で、総額19億ドル相当とされた。この買収によりSeagateはMaxtorのシェアを握って自身のポジションを磐石なものにするとともに、Maxtorのブランドを利用可能とした。
もっとも現状Maxtorブランドを利用しているのはわずか2シリーズのみであり、そう長くないうちに消えていくことになると思われる。

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