ロールモデルになったJAWS-UGはグローバルへ
「立ち上げ期」「自走期」を経たJAWS-UGだが、現在では「ロールモデル期」になっているというのが、小島さんの分析だ。つまり、JAWS-UGが一つの成功例として認知され、フォロワーが増えてきたという段階になってきたわけだ。
まずAWSのグローバルでJAWS-UGのフォロワーが増えたという。「AWS社内では、『あのプログラムいいよね』ではなく、『あのプログラムやりたい』になってきた。まだまだコミュニティの小さいアジアでは、JAWS-UGのモデルを真似てユーザーコミュニティを立ち上げてみようという流れが、2015年くらいから顕著になってきた」と小島さんは語る。中国の「龍」や韓国の「AWSKRUG」などは、JAWS-UGの成功例をベースに、各国独自のアレンジを施して展開しているという。
もちろん、AWS以外にもフォロワーが派生している。「たとえば、ソラコムやサイボウズはJAWS-UGを学んで、自分たちなりのやり方でユーザーコミュニティをドライブしている。素晴らしいことだと思います。でも、自然発生を期待しているのではなく、コミュニティを大きくしたいというベンダー側の共通の意思がある」と小島さんは語る。コミュニティの真価を知ったベンダーが、JAWS-UGをロールモデルとして積極的にコミュニティを仕掛けているのは、現在のIT業界の大きな流れと言えるだろう。
エンジニア個人だけではなく、クラウドをビジネスにする企業や、クラウドを使いこなすユーザーにとっても、もはやコミュニティは必須の存在だ。
「クラウドのスピードって、ドキュメントやマニュアルを待っているだけでキャッチアップできるスピードじゃない。キャッチアップするには最前線に行って、話を聞くしかないんですよ。コミュニティに参加することで、いかに大きなメリットを得ているか、会社のバリューにつながっているか、もっとコミュニティ側で声を上げてもいいと思っています」(小島さん)。
小島さんがいなくなったJAWS-UGはどうなる?
今回、こうしたユーザーコミュニティの潮流を作った立役者の小島さんがAWSJを辞めることで、今後JAWS-UGとの付き合い方はどうなるのか? 当の小島さんは「JAWS-UGはこれまでも玉川さんや堀内さんなどいろんな人が担当してきた経緯があり、たまたま今、私が担当している時に卒業ということにはなりましたが、基本的には、これまでも今後も変わらない。でも、JAWS-UGときちんと対話できる人がAWS側に必要なのも事実ですよね。AWSにとってJAWS-UGはとても大事なので、AWSで対話できる人の顔をもっと出していくコミュニケーションをできるウインドウはむしろ増やしていく予定」と語る。
新たなJAWS-UGとのタッチポイントの1人になるAWS マーケティング本部の石橋達司さんは、「慣性の法則では回り出すまでは大変ですが、今のJAWS-UGは自走している状態。だから、少しスローになってきたら、われわれが手をさしのべるというのが、結果的に長く走り続けられる方法だと思います」と語る。コミュニティの声につねに耳を傾け、新しい情報を届け続け、必要なときにきちんと支援するというスタンスは今後も変わらないという。
また、JAWS DAYSに関しては、「今年も大きな盛り上がりだったので、来年はより大きな場を提供していきたいと考えている」(石橋さん)と言及。さらにCloud RoadShowにJAWS-UGを組み合わせるといったやり方も今後堅持し、地方支部のサポートも継続的に行なっていくという。もちろん、AWS社員がJAWS-UGに参加し、積極的に情報発信し、ユーザーのフィードバックを得るという流れも加速していくという。コミュニティの世代交代にあわせて、JAWS-UGをサポートするAWS側も世代交代の時期を迎えたと言える。
小島さんが作ってきたのは、まさに「コミュニティが自走する仕組み」。「結局、小島さんの手の上で踊っていた(笑)」というのは、クラウド界隈でよく聞かれるコメントだが、踊らされてハッピーになった人たちがJAWS-UGにはいっぱいいる。それはJAWS-UGでの取材の中で、日々実感することだ。多くのエンジニアがJAWS-UGに参加することで、クラウドに飛び込み、人生を変え、次の世代のITを作り続けている。こう考えると、小島さんの仕掛け人としての功績は計り知れないものがある。JAWS-UGに貢献したという意味では、まさに「元祖AWS SAMURAI」と言える小島さんの次の活躍が今から楽しみだ。Still Day 1!