最近iPhoneがパッとしないこともあり、Androidの世界シェアはさらに増えている。IDCの最新のフォーキャストではシェアは84%近くに達すると予想している。だが、市場の独占状態に対してライバルや規制当局など目を光らせる向きもあり、まさに約15年前のPCにおけるWindowsと同じ様相を呈してきた。一方で、突如としてGoogleが新しいOSを開発中という噂も出ている。
”ロシアのGoogle”Yandexがスタートしたロシアの独禁法訴訟
8月に入り、ロシア政府がGoogleに対し、4億3800万ルーブル(約6億9000万円)の制裁金を科したことが明らかになった。AndroidにおけるGoogleの行為が同国の独占禁止法に反していると判断されたためだ。4億3800万ルーブルという金額は、Googleがロシア市場でモバイルより得る売上の1~15%とのことだ。
ロシアは2015年にGoogleを独占禁止法違反の疑いで調査、その結果クロとの判定を下した。同国で販売されるAndroidスマートフォンで、Googleがライバルのアプリを禁じて、自社アプリのプレインストールを要求していた。Googleはこれを不服としていたが、3月に開かれた仲裁裁判所のための審理で決裂に終わったようだ。
Googleの独禁法訴訟の引き金となったのは、ロシアで検索やマップなどGoogleと同種のサービスを展開するYandexによる訴え。YandexはAndroid向けにアプリストアを展開したり、Yandex.kitとしてAndroid Opensource Project(AOSP)ベースに自社サービスをバンドルしたファームウェアを提供するなど、Androidを採用するOEMに対してGoogleサービスを不要にできる代案を提示していた。
ロシアは検索市場におけるGoogleのシェアが低く、インターネットマーケティング会社のReturn on Nowによると、調査対象の30ヵ国でGoogleがトップではない市場は中国(Baidu)、韓国(naver)とロシアの3ヵ国のみ。ロシアのトップはYandexで58%、Googleは34%となっている。
EUでもMicrosoftと同じ運命になる?
同じような懸念は欧州連合(EU)でも持ち上がっている。4月、欧州委員会(EC)はGoogleに異議告知書を送った。Androidの利用にあたってGoogleが端末メーカーとオペレーター(通信事業者)に課す制限は、EU競争法(独占禁止法)に反しているという暫定結果に基づくものだ。
持ち上がっているのは主として検索エンジンとブラウザーで、競合の検索エンジンの搭載を禁じるような条件を課していたとしている。また、端末メーカーがAndroidのオープンソースコード(AOSP)をベースとした競合OSの搭載に対して阻止するような行為があり、Google検索を独占的にデバイスにプリインストールするのを奨励する目的でメーカーとオペレーターに対して金銭的な報酬を払っていたとのことだ。
EUと言えば、しつこくWindowsとメディアプレイヤー(「Windows Media Player」)の抱き合わせに目を光らせ、Microsoftは最終的にWindows Media Playerをバンドルしていない「Nエディション」を作った。だが、Nエディションに市場は関心を示さなかった。今回のAndroidについては、ドイツベースのGartnerのアナリスト、Annette Zimmermann氏が「Microsoftのときとは違って、Googleは独占的立場を利用して競合を抑えようという明確な動きがない」とFinancial Timesにコメントしている。
そして今回も、これらがAndroidのシェアになんらかの影響を与えることはなさそうだ。IDCのフォーキャストでは、Androidのシェアは年成長率で6%増えて、2020年のシェアは85.1%に達すると予想されている。
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