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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第366回

業界に痕跡を残して消えたメーカー CPU設計に大きな影響を与えたDEC

2016年07月25日 11時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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PC市場への進出がことごとく失敗し
DEC社内でもPCはタブー扱い

 2つ目に属する話が長すぎたが、3つ目のPCの話をしよう。もともとDECは、PCに対して非常にアレルギーを持っていた。同社の場合、まず最初に投入されたのが、DECmateというシリーズである。

 元になるのは、1977年(1978年説もある)に発表されたVT78という“Video Data Processor”である。これはVT52という端末の筐体に、Intersil 6100というPDP-8互換のCMOS製マイクロプロセッサー(ただし動作周波数は2.2MHz)を収めて、ワープロなどを使えるようにした製品である。

 こちらもほとんど売れなかったのだが、そこでへこたれずに今度はVT100の筐体の中に、10MHzに高速化したPDP-8互換プロセッサーを収めたのが、1980年に投入されたDECmate Iである。こちらも売れたとは言いがたい。

DECmate I。上に載っているのが本体で、下の台がフロッピードライブを収めたもの。本体は、キーボードの色を除くとVT100とかVT80と見分けがつかない

 それとは別に1982年に投入されたのがRainbow 100である。内部は8088+Z80という不思議な構成で、MS-DOSとCP/Mが走るという物だが、フロッピードライブの制御はZ80が、その他のI/Oは8088が担った。

Rainbow 100の見かけ。フロッピードライブが独特の構造をしているのがわかる

 Rainbow用のMS-DOSは他のMS-DOSとの互換性がかなり低く、アプリケーションの移植が必要になるという代物で、結局ターミナルエミュレーター以外にあまり利用されずに終ってしまった。

 このRainbow 100の筐体を使いつつ、プロセッサーをHarris 6120(Intersil 6100の後継で、Harrisが生産していた)に載せ変えたのが同じく1982年に登場したDECmate IIである。Z80カードを装着するとCP/Mも利用できたが、基本はPDP-8の延長でこちらもあまり売れたとは言いがたかった。

 ちなみに同じ1982年に、やはりRainbow 100の筐体を流用しつつ、よりパワフルなPDP-11互換のF-11/J-11チップ(どちらもDEC製で、PDP-11シリーズにも利用された)を搭載したのがDEC Professionalシリーズである。

 プロセッサーそのものは同じでも周辺回路が異なるため、PDP-11用のソフトウェアがそのままでは動かず、CP/MやMS-DOSのアプリケーションも動かないとあって、結局VAX 8000シリーズの起動用コンソールとして使われたのが主要な用途という有様だった。

 これで懲りたかと思ったら、まだ懲りていなかった。1984年には、VAXstation 2000の筐体を流用したDECmate IIIと、翌年にはHDDも搭載したDECmate III+も投入する。

さすがにHDDは収まらなかったのか、DECmate III+は筐体が2つ並ぶ形になった

 主な違いは画面がカラー化された(CPUの速度は8MHzに下がった)ことであるが、基本的にDECmate I~IIIでまともに動いたのはWPS-8なるワープロが利用可能なOSのみで、他にDIBOL(Digital's Business Oriented Language)という開発言語が利用できるCOS-310というOSも用意されたが、利用者は少なかった。

 さすがにこのあたりでPDP-8ベースの製品は競争力に欠けると判断されたのか、後継もないままラインナップは終了している。

 これらに代わり、IBM-PC/AT互換機として1986年に投入されたのがVAXmateである。オンボードでCGAを搭載(ただしCRTはモノクロ表示)しており、普通にMS-DOSが動作した。

VAXmate。モニターの右脇の蓋に5.25inch FDDが隠れている。マウスやキーボードは、当時のVT220やVAXstation用と共通のデザインだ

 また当時としては珍しくDEPCAというイーサネットカードを内蔵可能で、これを利用してVAX/VMSが動くVAXシステムとファイル共有やジョブ/プリント制御ができるというのがウリであった。

 ちなみに価格は当初4065ドル(1987年には3750ドルに値下げ)と結構な価格で、それもあってかあまり売れたとは言いがたかった。こちらも1990年を待たずに販売中止となる。

 余談だが、日本にも2台だけVAXmateがあったらしい。当時はまだDOS/Vが登場するはるか前で、それもあって日本語は一切使えず。そうしたこともあって、顧客から要望されてもサポートできないということで顧客には販売しなかったらしい。

 そんなこんなで、Olsen氏の時代にはPC市場への進出はことごとく失敗していたため、DEC社内でもPCはある種タブー扱いされていた。

 この時期唯一動いていたのが、後にPCSAという名前を経てPathworksという商品名で販売される前身だった、VAX/VMS Services for MS-DOS(VAX/VMS側)&DECnet-DOS(MS-DOS側)なるソフトウェアと、DEPCAくらいしかなかったといっても過言ではない。

DEPCA外観。種類としてはXTカード(8bit)であるが、ISAバスのフルサイズである。10BASE-2での接続となっている。DEPCAも実際にはいくつかバージョンがあり、この写真のものはかなり早い時期のものと思われる

 ところがOlsen氏が会社から去ったことで、このあたりが急に切り替わった。Palmer氏はPCにアレルギーはなく、まず1992年にはDECstation 200/300/400シリーズを投入する。200/300/400はそれぞれ286/386/486をベースとしたシステムだが、これはTandy CorporationやOlivettiによるOEM品である。

 DECstation 200/300/400シリーズに続き、自社設計の製品が次第に投入されてゆく。デスクトップではDECpc LP/MT/XLというシリーズに続き、Venturis/Celebris/Celebris GLといったラインナップを経てDIGITAL PCというラインナップが投入された。

 サーバー向けにはDECpc ST/MTE/XL Serverを経てDIGITAL Priorisシリーズ、次いでDIGITAL Server 500~7300といったラインナップとなる。

 ノートではDECpc NM/NC/NTを経てDigital HiNote/HiNote Ultraが投入された。特にこのHiNote/HiNote Ultraはそのデザインの秀逸さや、当時としては画期的な薄さもあってファンも多かったが、価格もなかなか素敵とあって、高嶺の花扱いされていた感もある。

これはFDDドッグを下面に装着した状態。厚さ30.5mm、重量1.8Kgは当時としては破格であった。最上位の475CTは当時の国内販売価格が55万8000円だった

 これらの製品は一定のシェアは獲得したが、DECの売り上げを支えるには十分とは言いがたく、結局COMPAQとの合併によりDECのPC関連製品ラインはそのまま消えてしまう運命となった。

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