日本マイクロソフトの2017年度が、2016年7月1日からスタートした。
平野拓也社長体制となって2年目を迎えた今年度は、基本方針は前年度の姿勢を踏襲。「革新的で、安心でき、喜んで使っていただけるクラウドとデバイスを提供する」をスローガンに掲げるとともに、「徹底した変革の推進」を標榜。PCを核とした考え方から、人を核とした考え方への変革などに取り組む姿勢をみせた。
その中で具体的な数値目標として掲げたのが、2017年度にクラウドの売り上げ比率を50%にまで高めるという目標だ。
平野社長は、クラウドの売り上げ構成比が、2016年度第4四半期(2016年4~6月)で32%となったことを示しながら、「これは前年同期の2倍の規模。これをさらに加速させていく」と語る。「徹底した変革の推進」のひとつとして、販売重視から利用価値重視への転換を打ち出す中で、その象徴ともいえるクラウド事業の構成比を指標のひとつとして示したというわけだ。「日本においてはクラウドユーザーが急速に増加しており、日本のデータセンターのキャパシティも、1.5倍のスピードで増やしている」と、クラウド事業拡大に向けた準備にも余念がない。
50%という数値は、前年度から打ち出していた目標値ではあるが、2017年度通期での目標ではなく、2017年度第4四半期までの間に瞬間風速でも達成すればいいという目標値。年度末に向けて、一気にクラウド事業の構成比を高めてくることになるだろう。
グローバルにおいては、「インテリジェントクラウド」を軸に、デジタルトランスフォーメーションへの変革や、コグニティブサービスの提供、エンタープライズサービスの提供などにより、新たな提案を進める姿勢を強調。日本でも、「2017年度は、デジタルトランスフォーメーションが重要な取り組みになる」とし、「コグニティブサービスにおけるイノベーションに注力する」と、クラウドビジネスの基本的姿勢を示す。
業種別展開にも力を注ぎ、製造、金融、流通・小売など6つの業種を重点業種として、クラウドによるデジタルトランスフォーメーションの提案を加速する。
クラウド情報セキュリティ監査制度と「クラウドセキュリティ(CS)ゴールドマーク」
特に、日本のクラウドビジネスにおいて成長の柱のひとつに位置づけているのが、公共分野向けの取り組みである。
平野社長は、2017年度を「ガバメントレディクラウド元年」と表現。その言葉からも示されるように、日本における公共分野向けクラウドビジネスに重点的に取り組む姿勢をみせる。
平野社長が、「ガバメントレディクラウド元年」と語る背景には、ひとつの大きな動きがある。
それは、2016年2月に、日本セキュリティ監査協会JASA-クラウドセキュリティ推進協議会が制定した「クラウド情報セキュリティ監査制度」において、日本初となる「クラウドセキュリティ(CS)ゴールドマーク」を取得したことだ。同マークを取得したのは日本マイクロソフトが最初となる。
クラウド情報セキュリティ監査制度とは、クラウド事業者が提供するサービスにおいて、セキュリティ対策が、国際的な基準(ISO/IEC 27017)で求められる水準に達していることを示すことを目的とし、サービス提供の実態が、情報セキュリティマネジメントの基本的な要件を満たしているかどうかを評価する仕組みと位置づけられている。
日本マイクロソフトが重視しているのは、この制度が総務省および経済産業省の支援を得て実施されているものであり、いわば、Microsoft AzureやOffice 365、Dynamics CRM Onlineが、国や政府が認定したパブリッククラウドのセキュリティ基準に合致していることが認められたともいえるからだ。
平野社長も、「クラウドセキュリティゴールドマークの取得によって、政府が活用するためにパブリッククラウドに求める要件が揃ってきたと判断している」と発言。さらに、「個人情報保護の国際標準に準拠するとともに、セキュリティ、プライバシー、法令遵守などの幅広い取り組みを通して、高度化するセキュリティ上の脅威や、多様化するプライバシー保護やビジネス要請などに対応できる」と自信をみせる。
国内に2カ所のデータセンターを設置していること、オープンソースに力を注いでいることも、公共分野におけるクラウド提案を加速するのには欠かせない要素であり、こうした点でも、マイクロソフトのクラウドは準備が整ってきたといえる。
平野社長は、「政府に対するソリューション提案を強化していく」とし、いよいよ公共分野に向けて本格的な提案活動を開始し、これをクラウドの成長戦略の柱のひとつに位置づけようとしているのだ。これまで本格的には踏み込めなかった領域に、いよいよ一歩を踏み出す1年になるというわけだ。

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