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リアルなデータを用いた機械学習やマイクロサービスに強み

誤解されがちなオラクルのクラウドコミュニティが面白そう

2016年07月05日 09時30分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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Oracle Cloudが1%も使われていないこともある

 Oracle Cloud Developersの取り組みは、われわれが想像するオラクルのイメージと大きく異なる。ベンダーが過剰にコミットする官製コミュニティでも、資格取得者によるクローズドな集まりでもなさそう。そして、後発であるがゆえ、既存のクラウドコミュニティを研究し尽くしている感があり、予想を覆すような取り組みが随所に見られる。

 たとえば、プロプラエタリのイメージのあるオラクルの勉強会とは思えないオープンな登壇者。1回目の勉強会に登壇したのは、セールスフォースのパートナーであるフレクトCTOの大橋正興氏や、AWS界隈ではおなじみのアイレット(clodupack)の後藤和貴氏。「オラクルからしてみたら、コンペになりうるような登壇者で、参加者の人たちも驚いていた。オープンなイベントで、話もすごく参考になったというお声をいただいた」と中嶋さんは振り返る。内容に関しても「Oracle Cloudが1%も使われてない事例もある(笑)」とのことで、開かれた勉強会を目指している。

 また、従来から展開している「JPOUG(Japan Oracle User Group)」とはまったく別物として新規に生み出されたコミュニティであるという点も面白い。「当初はすでにユーザーベースも多いJPOUGを拡張する形のほうがよいと思っていたのですが、JPOUGの関心事はOracle Databaseの構築・運用ノウハウが中心。一方、クラウド開発者達はむしろそれらが隠ぺいされたプラットフォーム上での開発にフォーカスしています。これを鑑みると、JPOUGはこれまで通りデータベースを追求するコミュニティとして活動しつつ、クラウド開発者については異なるコミュニティとしてスタートさせるべきと考えました」と中嶋氏は語る。こうした背景から、JPOUGのメンバーだけではなく、新しいユーザーが次々とOracle Cloud Developersに流れ込んでいるようだ。

 コミュニティに対するオラクルの立場もシンプルで、あくまでコミュニティの一員という立ち位置。「われわれはベンダーの立場なので、社員はプロダクトについて詳しい。だから、現状はわれわれが話すことのほうが多いが、あくまでコミュニティの一員としてナレッジを共有することを目指している。理想的には、われわれが行かなくても、勉強会が成立すること」と中嶋氏は語る。参加者募集もコミュニティのメンバーとして行なっているため、ユーザーのリードなどもまったく取得していない。得意なデジタルマーケティングでガッツリ分析していると思ったので、ここも正直意外な点だ。

支援の効果、無料枠、懇親会の割り勘など課題もある

 目指すところは明確だが、課題も多い。まず社内的にはコミュニティ支援の効果をどのように計るかは1つの課題。「以前、クラウドコミュニティへの支援が途絶えていたというのは、効果測定が難しかったからでもあるんです」と中嶋氏は語る。オラクルのような外資系ITベンダーであれば、当然ながらここはシビアに見られる。

 これに関して中嶋氏は、「オラクルに対する興味の強さを計るインバウンドの問い合わせが増えるはず」という仮説を置いている。また、他のコミュニティの活動状況を指標化することで、「他のベンダーがコミュニティのエンゲージに成功している」という危機感を醸成し、マネジメントに認知してもらうのも重要なようだ。

 また、クラウドコミュニティで必須となる無料枠に関しても、まだまだすべての製品で使えるわけではないので、頭を悩ませているところ。総じて、既存の社内文化とどうやって整合性をとるかというのは、中嶋氏にとっても、オラクル全体にとっても大きな課題のようだ。

 ユーザーコミュニティで大きな割合を占める懇親会の運営もなかなか解決できない問題。基本的にはベンダーとしてはお金を出さないポリシーなので、会場は提供しても、懇親会は割り勘になる。当然ながら、参加人数がギリギリまで読めないという泥臭い課題に突き当たる。「金曜日にHUBのようなパブに行こうとするとめちゃくちゃ混んでいる。(オラクルオフィスの近くの)神宮球場で野球があったりすると、目も充てられない(笑)。難しいなあと思いながら半年間を過ごしている」と中嶋氏は吐露する。コミュニティらしいコミュニティを目指すオラクルのチャレンジは今後も続きそうだ。

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