グローバルモデルをそのまま投入した「HTC 10」の狙いとは
「HTC 10」は打倒iPhoneの第一手? HTC NIPPON社長インタビュー
2016年06月11日 12時00分更新
auの夏商戦向け新機種として発売された、HTCの新スマホ「HTC 10 HTV32」。前機種の「HTC J butterfly HTV31」から一転して日本向けのカスタマイズをほぼ加えず、フロントカメラへの光学式手ブレ補正搭載や、ハイレゾ対応イヤホンの同梱、そしてグーグルと共同で見直しを進めたUIなど、HTCの特徴を前面に打ち出したモデルとなっている。
そこで、HTCが日本市場に向けてHTC 10をそのまま投入した狙い、グーグルとの取り組み、そして日本における今後のスマートフォン事業の取り組みなどについて、HTC NIPPON代表取締役社長の玉野浩氏に話を聞いた。
グローバルモデルを再び投入した理由とは?
HTC 10は、今年の4月にHTCが発表した同社の新しいフラグシップモデル。今回はそのHTC 10を、ハード的には日本市場に向けたカスタマイズを全く加えることなく、au向けに投入している。
だがHTCは、2013年の「HTC J One HTL22」で、グローバルモデルをそのままの形で提供したものの、販売が振るわなかった経験を持つ。にもかかわらず、HTCはなぜ再び、グローバルモデルをそのまま投入するという判断に至ったのだろうか。
玉野氏によると、そこにはiPhoneの存在があるという。国内では2年くらい前から、ワンセグ・フルセグやおサイフケータイ、防水・防塵など日本で要求されるスペックを搭載したスマホが当たり前のものとなっている。だが、日本で最も売れているiPhoneには、それらの機能が一切入っていない。そのため「日本独自の機能はあった方がいいが、それがないから買わない訳ではないのではないか?という感覚を持っていた」と、玉野氏は話している。
もう1つの理由がコストだ。玉野氏は「できるだけ完璧にしたい考えはあるが、コストがかかる上に日本だけにしか販売できないハードになってしまう。なのであれば、コストを抑えてグローバルモデルをそのまま投入しようという判断に至った」と話している。日本仕様に対応させてコストアップするよりも、高機能なフラッグシップモデルを購入しやすい価格で提供することを重視した結果、グローバルモデルのHTC 10をそのまま投入することとなったようだ。
HTC 10のコストパフォーマンスの高さを象徴しているのが、ハイレゾ対応のイヤホン、そしてQuick Charge 3.0に対応した充電器とUSB Type-Cのケーブルが付属すること。「(日本仕様の)足りない機能があっても、余りあるお得感を与えた」と玉野氏は話しており、独自仕様の端末を開発しなかった分のコストを、付属品にかけることでお得感を打ち出す戦略に出たといえそうだ。
本体カラーに関しても、カーボングレイとトパーズゴールドのほか、グローバルではまだ提供されていない「カメリアレッド」が、日本向けに追加されている。グローバル展開するシルバーではなく、独自のカメリアレッドを採用した理由について、玉野氏は「日本で調査をすると、いつもシルバーの人気が低い。そこで3色展開するに当たり、シルバーではなくカメリアレッドを採用することになった」と答えている。赤はHTCのプロモーションカラーでもあることから、HTC 10でも赤系統の色のモデル開発を進めていたとのことで、それを日本市場に向けて最初に投入する形となったようだ。
そしてもう1つ、日本市場に向けた取り組みとして実施されたのが、ハイレゾ対応マークの取得であるという。ハイレゾ対応イヤホンをあえて同梱することからもわかるように、HTC 10はオーディオ関連の機能に力の入ったモデルだ。そこでHTCでは日本オーディオ協会に申請し、あえてハイレゾマークを取得したとのことだ。
確かに日本ではハイレゾが盛り上がってきていることから、ハイレゾ対応マークの取得が、オーディオファンなどには響くかもしれない。だがその影響力は、実は日本だけにとどまらないと玉野氏は説明する。「最近ではソニーのウォークマンが海外でも頑張っていることから、ハイレゾ対応マークは海外でも響く。特に欧米ではオーディオに造詣の深い人も多いことから、影響力があるのではないか」(玉野氏)とのことで、ハイレゾ対応マークの取得は、グローバルでの販売拡大を進める上でも効果のあるものと捉えられているようだ。