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まずはブロックチェーン分野から。アイデア創出から開発/テスト、本番展開まで短期間で

企業の先進的アプリ具現化を支援「IBM Garage」日本で開始

2016年05月26日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本IBMは5月25日、イノベーティブで先進的なサービス/アプリケーションの短期開発を支援する「IBM Garage」のサービス拠点を日本にも設立した。まずは、ブロックチェーンを活用するアプリケーションからスタートする。

日本IBM 執行役員 インダストリー・ソリューション事業担当の鶴田規久氏

日本IBM クラウド事業本部 IBMクラウド・マイスターの紫関昭光氏

日本IBM GBS事業 金融トランスフォーメーション アソシエイト・パートナーの高木隆氏

 IBM Garageは、IBMが1年半ほど前からグローバルで展開している企業向けサービス。先進的なビジネスアイデアや業務ソリューションを短期間で具体化したいと考える企業を、IBMが「ソリューション・デザイン・ワークショップ」「ソリューション検証サービス」「ソリューション開発サービス」の3サービスを通じて幅広く支援する。

 具体的には、IBMが自社の製品開発で利用するデザインメソッド「IBM Design Thinking」を活用したワークショップによるアイデア創出や課題の可視化から、ワイヤーフレーム設計、「Bluemix」クラウドを用いたプロトタイプ開発、ユーザーテストによる検証と改善、既存システムへの接続も含む本番環境へのデプロイまでをカバーしたものとなる。

IBM Garageの概要。アプリケーションのアイデア創出から実装まで幅広く支援し、6~13週間程度で具体化する

IBM Bluemix上で、短期間に開発/テスト/改善を繰り返すアジャイル開発手法を用いる

 日本におけるIBM Garageのサービス拠点は、日本IBMの東京ラボラトリー内に設置され、顧客とのワークショップ開催場所などとして使われる(要望に応じて別の場所での実施も可能)。ここではテクノロジーの専門家だけでなく、顧客の事業や業種特有の課題などに精通したビジネスの専門家も参加し、顧客とコラボレーションを行う。

IBM Garageはすでに米国、カナダ、英国、フランス、オーストラリアにあり、そこで培われた知見も共有される

 今回のIBM Garage日本進出に当たり、日本IBMではまず、ブロックチェーン領域のアプリケーション開発を考える企業への支援サービスを展開する。

 具体的には、IBM Garageの手法を適用する「IBM Garage Blockchain Service」と、IBMのグローバル ビジネス サービス(GBS)事業部門が国内外の取り組みで培ってきた知見に基づき提供する「GBS End to End Service」を組み合わせたものとなる。両サービスを通じて、ブロックチェーン技術を活用する決済、証券/債券取引、資産管理、サプライチェーンなどのアプリケーションの構築と実装を支援していく。

IBMの「ブロックチェーン戦略」全体像。黄色い部分が今回発表のサービス

 価格は案件ごとの個別見積もりだが、目安として「テスト環境の構築までだと大体2000万円から、本番環境へのデプロイまで実施すると大体4000万円から、といった価格感」(日本IBM)としている。

 なお、同サービスではブロックチェーン技術として、Linux Foundationが提唱するオープンソースの「Hyperledger(ハイパーレジャー)」、およびIBMの「Open Blockchain」が利用できるように対応するとしている。

「顧客企業にアジャイルなカルチャーを根付かせる」ことも狙いのひとつ

 発表会に出席した日本IBM クラウド事業本部 IBMクラウド・マイスターの紫関昭光氏は、IBM Garage日本進出の背景には、顧客からの期待の声が多くあったと語る。

 「IBMではBluemix PaaSを提供しているが、イノベーティブなアプリケーションを作っていくためにはツールだけがあっても実現しない。顧客からは、それを使って一緒に新しいアプリケーションを作っていく、そこまで踏み込んでIBMに手伝ってほしいという声をたくさん聞いている」(紫関氏)

 さらに紫関氏は、IBM Garageでの取り組みは顧客との双方向の作業であり、一方的にIBMが支援する図式ではなく、Design ThinkingやGarageメソッドを繰り返し実践することで「アジャイルなカルチャー、イノベーティブなアプリケーションを作るカルチャーを、顧客の中に生んでいく」ことを目指していると述べた。

海外におけるIBM Garageの顧客事例。俊敏な動きがしづらい大手企業がIBMとの協業を通じて“変革”を目指すケースも多いようだ

 一方、日本IBM 執行役員 インダストリー・ソリューション事業担当の鶴田規久氏は、経産省によるとブロックチェーン市場の全体規模は67兆円に達すると予測されており、「IBMとしても、この大きな市場の中にぜひ打って出たいと考えた」と述べた。

 ブロックチェーンGarageサービスの具体的なターゲットは、まずは金融機関だという。発表においては、SBI証券、JCB、マネックス証券、みずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループの国内金融機関5社からのエンドースメントも寄せられている。

 「昨年末から今年春にかけて、金融の顧客を中心にものすごい勢いで(ブロックチェーンに関する)問い合わせ、要望をいただいている。この動きは金融が圧倒的に先行しているが、最近では通信業、公共系の顧客からも要望をいただくようになった」(鶴田氏)

 日本IBM GBS事業 金融トランスフォーメーション アソシエイト・パートナーの高木隆氏は、ブロックチェーン技術を用いたイノベーションには、「既存の枠に囚われない発想」「業界全体、グローバル全体に及ぶ共通フレームワーク」「実現性のあるアプローチ」の3つが必要だと指摘。その3つの要件を満たすIBM Blockchain Garage Serviceでは、顧客のアイデアを確実に具現化していくと説明した。

IBM Blockchain Garageサービスは、ブロックチェーン・イノベーションに必要な3つの要件を満たすとした

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