柱事業の変更もありうる
「原子力部門では、重粒子線の技術を持っており、これを医療分野に生かせることができる。5年後に大きく咲かないか、ということを考えている」と、綱川次期社長は期待する。
重粒子線は、がん治療装置としての利用が可能であり、東芝は、この技術で先行している。綱川次期社長は、これを将来に向けた成長事業の切り札のひとつに据える考えを示す。
また、綱川次期社長は、「エネルギー、社会インフラ、ストレージの3つの事業領域に集中していくが、事業環境の変化によっては、ポートフォリオの組み替えが必要になることもあるだろう。臨機応変に勝てるところ、強いところに集中したい」とする。この言葉からも、東芝が改めて医療を主軸に据える可能性は捨てきれない。
人事は新生東芝を推し進めるため
今回の社長交代は、「室町社長の主導のもとで事業構造改革に一定の目処が立ったこの時期に、新たな経営体制へ移行し、新生東芝の具体化に取り組むことが最適であると判断した」(東芝 指名委員会の小林委員長)のが理由だ。
室町正志社長も、「株主総会の節目も含めて、このタイミングでの交代は、新体制を立ち上げた方が将来の東芝にとっていい形になるという指名委員会の判断に従ったもの」とし、「私が退任する目安として掲げた特設注意市場銘柄の指定解除には至っていないものの、今後も、特別顧問としてサポートする立場にあり、志半ばという悔いはない」と語る。
新社長は、社外からの人選を含めて幅広く議論を重ねた結果、最終的には社内から候補を10人程度に絞り込み、その1人1人と面談を実施して、経営委員会が指名したという。
綱川次期社長は、「新生東芝への路線を引き継ぎ、あらゆるステークホルダーからの信頼回復、強靱な企業体質への変革に取り組む。また、財務基盤の改善を最優先事項として取り組み、特設注意市場銘柄の指定解除による資本市場への復帰を果たし、永続的な発展を遂げられる企業への再生を図る」と、新社長としての抱負を語る。
そして、従業員に対する思いも口にする。
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