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中音域にスポットを当てたシリーズは新たな選択肢

カラバリならぬ音バリ、同設計の1万円台イヤフォン「TITAN」シリーズの違いは?

2016年03月26日 12時00分更新

文● 四本淑三

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チタン振動板が美味しく楽しめるのはどっち?

 TITAN 3とTITAN 5に先駆けて発売された「TITAN 1(タイタン ワン)」という製品もあります。これはチタン振動板のドライバーを搭載した最初の製品でしたが、若干ハイ上がりで、高域は暴れ気味のように感じました。初物のドライバーということで、チューニングに苦労があったのかもしれません。

2014年末発売のTITAN 1。価格は1万5980円

 その後、TITAN 1の上位機種として登場したのがTITAN 5。これは気になる高域成分をうまく削られていて、新しい振動板を使ったチューニングの落としどころとして納得できるものでした。が、そこに間髪入れずTITAN 3も発売され、前述のように「メリハリ」の3、「フラット」の5という位置づけになります。

 さて、両機種の差ですが。

 “5”に比べると“3”はかなりブライトで、言ってみればTITAN 1のキャラクターに若干振り戻したように感じました。ただ、TITAN 1で耳についた高音域の粗さは抑えられており、ボーカルの帯域が強調された中音域主体のチューニングになっている。それに比べると5はフラットとはいえ、相対的に中抜け気味にさえ感じられるくらいです。

 つまり最初に出したTITAN 1がハイ上がりだったので、フラットにしたTITAN 5を出し、TITAN 5で削った成分を若干復活させたのがTITAN 3、というような関係にも見えます。

 どちらを選ぶかが問題ですが、私はTITAN 5が気に入っています。

 TITAN 3の明るいキャラクターも魅力的ですが、可聴帯域の下限、上限に近い成分は、人間の耳がより高い感度を持つ中音域の情報量にマスクされがちです。だから、中音域ベースのチューニングだと、広帯域再生が魅力のドライバーを載せた機種としては、ちょっともったいない感じがする。

 TITAN 5の良いところは、可聴限界付近の高域の解像感が楽しめる点。そして、バスドラとクラッシュシンバルを同時にヒットした際のような、ダイナミックレンジの広さ、エアー感が出る場面にも、それは現れていると思います。これは限界域の高域と同時に、ボトムエンドの情報量もかなりあるということです。

 ただ、TITAN 5は確かにボーカルは引っ込みがちで、音も全体的に重い。だからTITAN 3が生まれた理由も理解できますし、ボーカル主体に聴いている方なら、TITAN 3がおススメです。中音域の豊富な情報量を十分に引き出せるのも、またこのドライバーのよさでもあると思うからです。

 最後に、TITANシリーズは結果としてそうなっただけかもしれませんが、同じ筐体で「ノーマル」「ヘヴィー」「ハード」と音質の傾向を明示して、ユーザーの選択に任せるのはアリだと感じました。世の中の1万円以下のカナル型は、判で押したように低域強調形ばかり。若年層は低音の効いた音が好きなので、手に入れやすい価格帯の製品もそうなりがちなわけですが、中にはひねくれの者の中学生や、イヤフォンにお金を掛けたくない大人だっているはずですから。



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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