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山谷剛史の「アジアIT小話」 第120回

東芝の白物家電に中国家電メーカーが求める「品質」のイメージ

2016年03月17日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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壊れても新品に交換! サポートがある意味すごい!

とある中国都市部の家庭。新しい家電もあるが、昔からの家電も残る

 「中国の家電でも悪くない」という評判の広がりと、中国メーカーの近年の白物家電が問題ないかというのは別の話となる。筆者の訪れたいくつかの家庭では、時間が経過し、なんらかの機能、ないしはどこか物理的に壊れた中国メーカー製白物家電をしばしば見かけた。

 日本で売られている日本の家電とは、使用可能期間でだいぶ異なる印象がある。筆者自身の購入と使用経験でも、さまざまな家電が自滅し、5年単位で使い続けている家電はサムスンにLGといった韓国メーカーのものばかり(筆者はレビューも考慮し、中国では日本メーカーの製品は基本的に買わない)。

 壊れやすいとしても、なおも中国の家電メーカーが勢いがあるのは、経済成長とオンラインショッピングの成長の中で、交換のペースが早まったことと、中国メーカーは修理を依頼すると基本新品と交換してくれる、というサポート体制にある。

 このような経緯を経て、中国人は美的について「お手頃価格で買える著名家電メーカー」という印象を持つに至る。

高品質イメージの取得が東芝買収の大きなメリット

 「お手軽価格」の印象を打破しようと、美的は2015年前半に、爆買いで日本製炊飯器がよく売れたのを受け、高級炊飯器「鼎沸」(ディンフー)などのハイエンドモデルをリリースした。しかし、まだまだブランドイメージ改善には至っていないように思える(もちろん1機種だけでイメージを変えるのは難しい)。

 また筆者が知る限りでは、タイやベトナムなどの東南アジアにおいては、美的、いや中国家電全般に対し、消費者が品質に不安で多少安くても買わないきらいがある。

 これまで美的は、東芝とエアコンの方面で技術提携していた。今回の東芝の白物家電部門買収で、何が美的にプラスになるのだろう。

 中国国内では、日本製品に近い、壊れないモノづくりをとり入れるだけでなく、海外では美的と東芝の2つのブランドで同社製品を売ることで、弱点を補完できそうだ。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場」「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 」(星海社新書)。

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