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「ふるさとテレワーク」は地方を救うか!? 第4回

塩尻市・富士見町・王滝村が連携

県内全域へ、長野3市町村が切り開いた「地域テレワーク」

2016年03月18日 06時00分更新

文● 川島弘之/TECH.ASCII.jp

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「生活直結サービス」の検証も

 このほか「生活直結サービス」の検証も行った。

 例えば「防災情報伝達システム」。長野県では近年、自然災害が相次いでいる。そこで災害時に、行政担当者が地域を細かく指定し、その地域にあるスマホやケータイだけにSMSで情報を届ける仕組みとして構築した。除雪・交通状況がマップで視覚的にわかる機能や、身の回りで発生したまちの出来事について、住民側がアプリを介して行政側に送信する「まちレポ」の機能も備えている。

 併せて、移住者が日常の疑問などを掲示板に書き込み、地域住民が回答する「地域SNS」も構築した。生活環境が異なるテレワーカーやその家族が、いち早く地域と馴染み、地域住民の一人として過ごせるようにするのが狙いだ。

地域SNSの画面

 「地域には独自のしきたりがあるもの。また、積雪状況などの天候も含め小さなことでも知らないと困るということが多い。さらに言えば、地域は新参者について根ほり葉ほり知りたがるところがあり、そうなると移住者も住みづらくなるので、『多数派(受け入れる側)の配慮』となるようなシステムを考えた」(中村氏)。

 これらをテレワーカーに実際に利用してもらい、アンケートを実施。「地域の旬な情報が得られるので、とてもありがたい」など、概ね好評を得ていた。

子育てしながら働けるように

 王滝村のギークハウスでは「遠隔教育システム」の検証も行った。

ギークハウス信州王滝

テレワークの様子

 内閣府の調査では、移住の問題点として「子どもの教育施設が少ない」という回答が25.8%に上っている。都市部の住民は、地方で生活することで子育て環境の1つである「高度な教育環境」を失いたくないと考えているのだ。ならば、地方で都市部と同等の教育環境を実現できないだろうかと考えたのが背景。

 具体的には、都市部から移住してきたテレワーカーの子どもたちに、ギークハウスのICT設備を使って教育環境を提供。主に中高生を対象に、信学会ゼミナールなどの講義のライブ配信、講師によるマンツーマン指導、各生徒にあったカリキュラムのオンデマンド配信などを行った。

 先生の立場、生徒の立場に沿って品質を上げようとすると、沢山の細かな工夫が必要となることや、コスト面に課題は残るものの、生徒側の感想としても「画面がとても見やすく、音声も聞き取りやすく、隣に先生がいて授業をしてもらっているようだった」と好評だったという。

 「ふるさとテレワーク」は、地方に移住する働き方なので、移住者が地域に溶け込めるかが重要となる。中でも、親であれば子育て環境の充実はおそらく最優先事項だろう。成果報告書では「実証期間中の不具合ゼロ、映像・音声とも高品質の遠隔授業ができた」とされている。きっと今後の参考になるはずだ。

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