スタートアップ企業と、国内ネット業界のキーパーソンが参加する招待制イベント“B Dash Camp 2016 Spring in Fukuoka”が、2016年3月3日、4日に福岡のヒルトン福岡シーホークで開催された。
今回のテーマは“チェンジ”。金融、ヘルスケア、クルマ、家、宇宙、あらゆる産業界にテクノロジーが結びつき、新たに強い産業を生みだしている“インドストリアル・インターネット”の世界では、ネットは構成要素のひとつだ。インターネットを踏まえたうえで事業を考え、知見、経営などあらゆるレベルを上げねばならない。そのような変わらないといけないという提言のもと、イベントはスタートとした。
オープニングのセッションでは、ウェルスナビの柴山和久代表取締役、ソラコムの玉川憲代表取締役社長、ユーザベースの梅田優祐代表取締役共同経営責任者が今注目の経営者として登壇。
ユーザベースの梅田氏は、市場や業界、経済の分析ツール『SPEEDA』運営のなか、スタッフがみな自分の考えをわかっているだろうと思ってやっていたが、ニュース事業、現在の『NewsPicks』を始めたいと言ったところ「梅田は方向性を見失っている」と言われたという。社内の飲み会では、将来の話をすることが多かったが、悪口や愚痴が増えていくというのを内部崩壊として目の当たりにしてしまった。
梅田代表は、言葉にしなくてもわかるだろうという考えは甘く、会社としてミッション、ビジョン、ユーザベースの価値観を定めることが重要と悟った。そこから企業としての指針となる、ビジョンを作成。“世界一の経済メディアをつくる”という目標のもと、「自由主義で行こう、創造性がなければ意味がない、ユーザーの理想から始める、スピードで驚かす、迷ったら挑戦する道を選ぶ、渦中の友を助ける、異能は才能」といった行動指針を作成した。事業運営、サービスの開発もこの指針にそうよう進められている。
ウェルスナビの柴山氏もミッションの大切さを説く。「世界標準の資産運用をすべての人に」と、個々人の投資リスクに合った資産運用を世界中に分散投資できるサービスを運営。
だが、順調に進んでいった中で、サービスのリリース後に勢いが止まってしまった。「サービスのアップデート、リリースのサイクルが伸びていって、スピードが落ちていき、内部崩壊に近い状況になっていた」という。そんな中、柴山氏はひとつの決断をする。日々のサイクルに必要なものを除き、業務を3日間、完全に止めたのだ。
自社のバリューが何なのか、徹底的に話し合い、自分たちで信じられるものをつくろうとした。そんな中、社員たちが代表の柴山氏がふだんから口にする癖をピックアップしたところ、笑いが出て盛り上がったという。「ゼロベースで良いものをつくろう」など、会社としての指針になった。
セッションのファシリテーターを務めたGREEの田中良和代表取締役会長兼社長も、「ミッション、バリューを考えたときに、前の会社がこうだったとか、先輩に教わったとか出るが、現在の会社にとっていいか、成功体験とは違う。前の会社のことを出すと、価値観のぶつかり合いになる」と、代表がふだんから口にしている言葉が行動指針になったことを評価した。
AWSのエバンジェリストとして活躍し、IoTのプラットフォーム事業を手掛けるソラコムを起業した玉川憲代表取締役社長。仕事をするうえで大切にしていることとして、“会社の価値観”をあげる。会社の価値観で物事を話し合えると、たとえミスがあっても、「会社としてこれが正しいよねと、個人攻撃にならない」とする。
現在活躍を見せている面々がそろったが、それぞれ今があるのは危機があり、失敗を乗り越えた結果だと、経験が語られた。このイベントに集まった、スタートアップ企業にとって、チームビルディングや企業運営に役立つセッションになったのではないだろうか。
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