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ITと東日本大震災、グーグルはいま何をしているか 第1回

災害時、オフラインになったら? 「IT災害訓練」してますか

震災から5年、グーグルは「まだまだ走り続ける」(未来形)

2016年03月09日 09時00分更新

文● 西田宗千佳 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

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3月17日時点でのデータ入力作業状況。この時点で4000枚を超えるなど、アップロードされた避難所の名簿画像が急激に増えたため、7割が未着手であった

 いつのまにか、登録された写真から効率的に多人数で文字入力を行う方法をマニュアル化した人が出てきた。いまとなっては、最初に思いついた人が誰かもわからない。さらにWikiにまとめられ、持続的にボランティアが作業をするマニュアルになっていった。最終的には、この作業には約5000人が参加することになったが、もちろん一人ひとりはどこにいる誰かもわからない。

3月14日以降、名簿の受け付けは写真だけではなくFAXも追加され、その後、名簿をデジタルデータとして持っている避難所に向けて、入力作業の短縮、データ精度の向上のためテンプレートを公開した

 「ネットでつながっていないとやりようがなかった。クラウドのパワーそのもの」と賀沢は振り返る。

組織を超えて安否データを集積

 パーソンファインダーには4月下旬時点で67万件のデータが登録された。情報源は、個人ユーザーが入力したもの、Picasaなどに寄せられた避難所からの情報、そしてメディアや各組織と提携し得た情報も集約された。特に大きかったのが、NHKと携帯電話事業者に集まったものだ。「もともとは、そんなことができるのだろうか……と思ったものだったのですが」と牧田はいう。NHKに声をかけてみると、彼らは月曜の夕方にも飛んで来てくれたという。NHKも安否情報の公開方法に苦慮していたのだ。

 NHKは、「安否情報ダイヤル」に視聴者から電話で寄せられた情報を持っていた。通常、放送の中でテロップとして流されるのだが、東日本大震災ではそれも間に合わなかった。あまりに被害が甚大だからだ。本来、情報は報道のために使うもので、第三者への提供は困難が伴う。

 だが、NHKは提供を決断した。15日の夜には、NHKの担当者が安否情報のデータを持ちグーグルを訪れた。当時の社内規則では、データを直接送信できなかったためだ。その後は定期的にNHKとグーグルの間を安否情報データが、やりとりされたという。

 携帯電話事業者はそれぞれ災害伝言板をもっていたが、そことも連携した。「14日にはコンタクトを開始し、15日には実現した。すぐに副社長レベルに話があがり、話も決まりました」(牧田)「いつもなら判子が5つくらいいるようなところを全部すっとばした感じ」(賀沢)だったという。

 当時は、どこも現状把握と復旧に精一杯だった。携帯電話事業者としての優先順位は、現地の回線復旧にある。そこに社のリソースを集中させる必要がある。ならば、他社と連携してできるところは分担したい……との思いもあったようだ。もはやどこか1社だけのことではない。オールジャパンでやらなければ、との意識から、どこも素早い決断が行われ、補いあう形で進んだのである。

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