![](/img/2016/03/08/493729/l/f6b467fb29f4450d.jpg)
今回のことば
「創業1年目から18年間に渡って黒字だった。だが、創業者も一度赤字を出したという実績を作っておきたかった」(サイボウズの青野慶久社長)
赤字の背景は広告投資と「裏ミッション」
サイボウズが発表した2015年度(2015年1月~12月)連結業績は、売上高が前年比17.6%増の70億1300万円、営業損益は前年の2200万円の黒字からマイナス3億8100万円の赤字、経常損益は前年の700万円の黒字から、マイナス3億3800万円の赤字、当期純損益は前年の1100万円の黒字から、マイナス2億1700万円の赤字となり、創業以来、初の赤字決算になった。
だが、サイボウズの青野慶久社長に悲壮感はない。
「パッケージと、クラウドの収益率には大きな違いがあり、そのビジネスの転換期にある」としながら、2015年度は、同社の次代を担うクラウドサービスの地盤づくりへの投資のひとつとして、クラウド関連の広告を積極化。クラウド市場におけるブランドづくりに力を注いだことを示してみせる。前年度も広告費は14億8000万円と大量に投下したが、2015年度は、18.0%増となる17億4600万円へとさらに積み増しした。ここに赤字転落の要因がある。
実は、青野社長は2014年度にも赤字を見込んでいたが、結果として黒字化したことを受けて、「どこかでアクセルを踏み切れなかったところがあった」と反省。2015年度は、期初から8億円の赤字計画を打ち出し、より強く広告投資のアクセルを踏み込んだともいえる。
創業以来初の赤字は、将来に向けた先行投資の意味があり、いわば計画通りの赤字というわけだ。
そして、「裏ミッション」として、次のようなことも語る。
「サイボウズは、創業1年目から黒字化し、これまでの18年間、黒字が続いている。これがそのまま継続し、常に黒字体質を維持しなくてはならないということが定着したまま、次世代にバトンを渡すようなことはしたくはないという気持ちがあった。創業者も、一度は赤字にした、という実績を作っておきたかった」と語る。
負債は30億円にのぼるが、固定負債がゼロで、短期の流動負債のみ。現預金は24億円、自己資本比率は51.3%。財務面でも余力を持った形での赤字計上となっている。
2016年度は、売上高が前年比14.1%増の80億円、営業利益、経常利益、当期純利益は黒字転換し、いずれも1億円を目指す。
「2期連続での赤字は、パートナーに対して、不要な不信感を抱かせる温床にもなる。だが、必要があれば、アクセルを踏み込む」として、状況次第では2期連続の赤字もいとわない考えだ。
![](/img/blank.gif)
この連載の記事
-
第600回
ビジネス
個人主義/利益偏重の時代だから問う「正直者の人生」、日立創業者・小平浪平氏のことば -
第599回
ビジネス
リコーと東芝テックによる合弁会社“エトリア”始動、複合機市場の将来は? -
第598回
ビジネス
GPT-4超え性能を実現した国内スタートアップELYZA、投資額の多寡ではなくチャレンジする姿勢こそ大事 -
第597回
ビジネス
危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか? -
第596回
ビジネス
孫正義が“超AI”に言及、NVIDIAやOpen AIは逃した魚、しかし「準備運動は整った」 -
第595回
ビジネス
DX銘柄2024発表、進行する日本のDX、しかし米国よりもここが足りない!! -
第594回
ビジネス
自動車工業会は、今年もJapan Mobility Showを開催、前身は東京モーターショー -
第593回
ビジネス
赤字が続くJDI、頼みの綱は次世代有機EL「eLEAP」、ついに量産へ -
第592回
ビジネス
まずは現場を知ること、人事部門出身の社長が続くダイキン -
第591回
ビジネス
シャープが堺のディスプレーパネル生産を停止、2期連続の赤字受け -
第590回
ビジネス
生成AIに3000億円投資の日立、成長機会なのか? - この連載の一覧へ