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業界人の《ことば》から 第186回

小さな企業は下請け・孫請けという常識を崩す

赤字はわざとと語るサイボウズが次に注力するkintone革命

2016年03月08日 09時00分更新

文● 大河原克行、編集●ASCII.jp

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今回のことば

 「創業1年目から18年間に渡って黒字だった。だが、創業者も一度赤字を出したという実績を作っておきたかった」(サイボウズの青野慶久社長)

赤字の背景は広告投資と「裏ミッション」

 サイボウズが発表した2015年度(2015年1月~12月)連結業績は、売上高が前年比17.6%増の70億1300万円、営業損益は前年の2200万円の黒字からマイナス3億8100万円の赤字、経常損益は前年の700万円の黒字から、マイナス3億3800万円の赤字、当期純損益は前年の1100万円の黒字から、マイナス2億1700万円の赤字となり、創業以来、初の赤字決算になった。

クラウド関連の売上増加とそこに広告投資をした結果がよくわかる

 だが、サイボウズの青野慶久社長に悲壮感はない。

 「パッケージと、クラウドの収益率には大きな違いがあり、そのビジネスの転換期にある」としながら、2015年度は、同社の次代を担うクラウドサービスの地盤づくりへの投資のひとつとして、クラウド関連の広告を積極化。クラウド市場におけるブランドづくりに力を注いだことを示してみせる。前年度も広告費は14億8000万円と大量に投下したが、2015年度は、18.0%増となる17億4600万円へとさらに積み増しした。ここに赤字転落の要因がある。

 実は、青野社長は2014年度にも赤字を見込んでいたが、結果として黒字化したことを受けて、「どこかでアクセルを踏み切れなかったところがあった」と反省。2015年度は、期初から8億円の赤字計画を打ち出し、より強く広告投資のアクセルを踏み込んだともいえる。

 創業以来初の赤字は、将来に向けた先行投資の意味があり、いわば計画通りの赤字というわけだ。

 そして、「裏ミッション」として、次のようなことも語る。

 「サイボウズは、創業1年目から黒字化し、これまでの18年間、黒字が続いている。これがそのまま継続し、常に黒字体質を維持しなくてはならないということが定着したまま、次世代にバトンを渡すようなことはしたくはないという気持ちがあった。創業者も、一度は赤字にした、という実績を作っておきたかった」と語る。

 負債は30億円にのぼるが、固定負債がゼロで、短期の流動負債のみ。現預金は24億円、自己資本比率は51.3%。財務面でも余力を持った形での赤字計上となっている。

発表された財務状況

 2016年度は、売上高が前年比14.1%増の80億円、営業利益、経常利益、当期純利益は黒字転換し、いずれも1億円を目指す。

 「2期連続での赤字は、パートナーに対して、不要な不信感を抱かせる温床にもなる。だが、必要があれば、アクセルを踏み込む」として、状況次第では2期連続の赤字もいとわない考えだ。

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