ESO(欧州南天文台)は1月13日、オリオン大星雲に新たに二重星を発見した。4つの望遠鏡を連動させて解像度を上げた新システムの試運転で、本番ではブラックホールの縁ぎりぎりを観測する計画だ。
望遠鏡はレンズ口径が大きいほうが分解性能がよく、解像度の高い画像が得られる。今回使用されたのはVLTI(超大型干渉望遠鏡)と呼ばれ、チリにあるVLT(超大型望遠鏡)の4台を光ファイバーで接続、光学干渉によってひとつの大口径望遠鏡としたもの。
従来から複数台の連携は行なわれていたが、新開発の光学干渉装置GRAVITYをインストールして撮影を試みたもの。新たに得られる解像度はハッブル宇宙望遠鏡よりも高いという。これにより、これまで単一の星と考えられていた(解像度が足りなかった)オリオン大星雲中央のシータF星が二重星であると確認した。
新発見があったとはいえ、今回の撮影はあくまで試運転という。VLTIは今年中にはこれまでにない解像度でブラックホールの縁を観測、ブラックホールのジェットや降着円盤の構造、事象の地平線の近くにある空間の歪みを観測し、相対論的空間の謎を解明することを目標としている。
なお、VLTIは光学(赤外線域~可視光)望遠鏡を並べて解像度を上げているが、電波望遠鏡でも同様かつ最大級の計画が進んでいる。多くの国や研究機関が勧めている「イベント・ホライズン望遠鏡」は各国の電波望遠鏡を連動させて地球サイズの超長基線電波望遠鏡とするもの。その名のとおりブラックホールの事象の地平線すれすれのところを超高解像度で観測する計画で、現在多数の電波望遠鏡を連動させる機器の開発を進めており、2017年頃に観測を行なうとしている。