「イノベーションの中心は日本、箱崎だろうと。大きなVRムーブメントを起こせるようにがんばっていきたい」
そう語ったのは、Tokyo VR Startups(TVS)の國光宏尚代表。スマホゲーム配信元gumiの代表だ。1月12日、VRコンテンツ開発者を集めるインキュベーションセンター「TVSインキュベーションセンター」開所の挨拶をつとめた。
同所はゲームをはじめとするVRアプリ・VRサービスの開発者たちを支援する施設。支援プログラム参加者のVRプロダクトの開発に1件あたり最大500万円を出資し、1月から6月までは施設および開発環境も無料で提供する。
運営はgumiの100%出資。國光代表は「まずは市場を作るのが重要。大きな市場をつくることにフォーカスしたい」としながら「意地でもシリーズA(最初期段階の資金調達)につなげる会社を出していきたい」と意欲を見せる。
「インターネットがあり、モバイルが来て、そのあとにVR。そのくらい大きな括りで世の中を変えていく。モバイルもいろんなサービスが出て世の中を変えた。それらを飲み込む形でVRはいろんなものが出てくるだろうと」(國光代表)
SCE元会長、スクエニ元社長が相談役に
相談役のメンターにはゲームやエンタメなど各業界の重鎮が顔をそろえる。
グリー取締役執行役員の青柳直樹常務、プレイステーション発売当時にソニー・コンピュータエンタインメント会長だったトゥー・フォー・セブンの丸山茂雄取締役、フジテレビの山口真コンテンツ事業局長、元スクウェア・エニックス・ホールディングス代表取締役の和田洋一氏などだ。
挨拶でみなが口をそろえて「未知の可能性に期待している」旨のコメントをしていたのが印象的だった。「新しいことをやろうとするとビジョンと勇気がいる。この組織はみなさんに勇気を与えるのが役割」(和田洋一氏)
なぜ同所ができたのか。理由は、いまの日本ではまだVRまわりのエコシステムがうまく育っていないためだ。具体的にはアライアンスや投資が少ない。
ジャーナリストでTVS取締役の新清士さんは、現在VR開発者コミュニティは盛り上がっても資金が集まりづらい状況にあると指摘。小規模の開発者を集めて支援する「トキワ荘」のような施設が必要ではないかと開所を提案した。
VR先進国のアメリカでは、VR開発が日本とはとても比較にならないほどの速度で進んでおり「置いていかれていくんじゃないかという強烈な危機感をおぼえた」(新さん)ことも開所を急いだ理由の1つだったという。
儲かるVR開発者にならなければいけない
参加者に選ばれたのは、IcARus、桜花一門、CANDLIFY VR Technologies、ハシラス、よむネコの5社。東大生から、コーエーで「真・三國無双」シリーズ開発に携わった男性や、手妻師・藤山晃太郎さんなど、出自はさまざま。
プロダクトの種類も幅広い。「ドローンに乗ったような体験をしながら空中戦ができるゲーム」「乗馬マシンを使ったVR」など。3月末までに最初のデモデイを開催し、6月にはオープンな形でプロトタイプの最終報告会をする予定だ。
プロダクトについて國光代表が気にしていたのは「面白い」で終わるのをいかに避けるか。今後VR業界はこう動く、だからこう儲かる。参加者たちはそうしたビジネスモデルをしっかり作る必要があると口すっぱく話していた。
國光代表はgumi創業からスピード上場、上場後の苦労で経験豊富なアントレプレナー。起業経験が浅いVR開発者たちも学ぶところが多いのではないか。
なお同所ではVRメディアPANORAと共同で月1回のセミナーを開いたり、一般人も利用できるスペースをつくるなど、オープンな場所にしていく考え。今後VRまわりの情報は、箱崎を中心に発信されることになりそうだ。