目の前でレンズをカットしてくれる
JINSのメガネは、矯正の度合いに合わせてレンズがすでに用意されており、店舗でフレームに合わせてレンズをカットして作ります。サンフランシスコ店は米国初の拠点であることから、オンラインでオーダーされたメガネについても、レンズをここでカットして発送するそうです。
さて、フレームと適切に選ばれたレンズは、赤いトレーの上に置かれます。そこから先は、スタッフが流れ作業でメガネを作っていける仕組みになっています。工程としては、レンズを正確に位置決めし、カットする機械へ入れ、できあがったレンズをフレームにはめ込むというもの。30分足らずで、新しいメガネができあがってきます。
その演出は面白いものでした。赤いトレーは、店内の1/4周分、敷設されたベルトの上を移動しながら、店内奥のレンズをカットする装置へと運び込まれます。トレーのバーコードを読み込むと、カットすべきフレームに合わせて、自動的にカットされるのです。
30分の待ち時間はサンフランシスコの中心部の街を散歩しても良かったのですが、ついつい自分のメガネがができる過程をフルで眺めてしまいました。目の前で作業を見せてくれる演出も、米国の人には喜ばれそうです。
こうして、レンズがカットされ、再びベルトに乗ってスタッフのいるエリアにトレーが戻ってきます。ここで手作業のレンズはめ込みと最終調整が行われ、お客さんの元にメガネが渡される、という旅でした。
日本ならではのものは製品だけではない
ものづくりから接客へ
2015年で印象に残っている、そして非常に納得のいくフレーズは、「『クールジャパン』はクールではない」というものでした。クールジャパン官民連携プラットホームの設立総会において、ファッションジャーナリストのミーシャ・ジャネットさんが「クールを自己主張しても共感されない」という発言をして話題になりました。
JINSのフレームは、中国で作られています。この時点で、前述の「クールジャパン」の文脈からは外れてしまうことになるでしょう。しかし、メガネ自体の軽さ、ブルーライトカットといった機能性、多様なデザインからの選択、眼科検診と一体化された店舗、そして自分のメガネが出来るまでをプレゼンテーションするといったサービスは、米国でもユニークで、面白く、カッコイイ存在と言えます。
もちろん、日本でしか作れないものは、大切に育みながら紹介していくべきです。筆者もバークレーの自宅では、可能な限り日本から持ち運んだ、そうしたものに囲まれながら暮らしています。ただ、ものづくりだけでなく、サービスや接客の部分も、もっと海外で消費される存在になれば、とも思いました。
もちろん、ブランドをゼロから建てていく大変さをJINSも経験していることと思います。しかし、日本人が日々経験している便利さが断片的にでも伝わっていくことは、筆者もぜひ後押ししたい、と感じる体験でした。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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