インターフェースの進化とバッテリー駆動時間の延長
全体を通した話として、パソコンのインターフェースや基本性能の向上についても触れたい。この辺りは細かく書くときりがないが、ひとつ大きなところはSSDの進化だ。毎秒600MBにとどまった従来のmSATAから、PCIe 3.0接続で毎秒2000MB越えの高速な読み書きが可能になったSSDもハイエンド機中心に搭載されるようになっている。ここまで高速化すると、大容量のデータ転送はもちろん、OSやアプリの起動、ちょっとした操作の切り替えでも確実に体感できる違いが出てくる。
NEC PCの「LaVie ZERO」やレノボの「ThinkPad X1 Carbon」などが直販モデルで採用したほか、VAIO ZやBTOパソコンメーカーの製品などで搭載が進んでいる。
バッテリー駆動時間もより長時間になった。SkylakeでCPUの省電力化が進んだことには2つの利点があって、ひとつはCPU自体が消費する電力が減ること。もうひとつが冷却のシステムがよりシンプルになるため、空いたスペースを追加のバッテリーなどで埋められることだ。となると当然バッテリー駆動時間も伸びるわけで、レッツノート RZ5などはJEITA 2.0測定基準で20時間を超える寿命をうたっている。
いつでも使えて、バッテリー切れを心配しなくていいというのは、ノートがこの世に誕生してから常に求められた要素だが、それが当たり前のものになってきている。
USB 3.1 Type-Cの今後も興味深い。現時点では周辺機器が圧倒的に少ないが、Thunderbolt 3と共用する端子を搭載する製品が増えてきている。Thunderbolt 3はディスプレー出力にも対応しているので、ノートやタブレットでもマルチディスプレーがより手軽になる。現状では「MacBook」のようにType-Cのみに潔く割り切られてしまうと、若干不自由ではあるが、端子の小ささ、抜き差しのしやすさ、供給電力、データ転送速度など様々な利点があり、一般化していくとより薄型で、拡張性の高いノートパソコンの登場が期待できる。
国内でも外資系を中心に搭載機種が増加している傾向なので、数年先を見据えるなら搭載モデルを選択しておくというのも視野に入れたい。
過渡期となったが、長く使えるパソコンが選べるいいタイミング
このように2015年はパソコンの使い方が少しずつ変わっていくようなトピックスがいくつも登場した1年となった。冒頭で書いたWindows 10の登場が示したのは、ユーザーはパソコンに保守的な操作感を求めたということかもしれない。
とはいえ、保守的というのは決して悪い意味ではない。現在主流になったクラムシェルを開くノートのスタイルは大体20年前に確立したものだ。パソコン業界は少しずつそれを改善して、快適で完成度の高いものへと育てていった。現在のハードは性能面でも携帯性の面でもバッテリー駆動時間の面でも、その集大成として大体必要なことに答えてくれている(細かな改善要望はもちろんあるが)。
一方でネットワークに常時接続し、クラウド上にファイルを共有し、タッチやペン、場合によっては音声で様々な操作をこなすスタイルも一般的となっている。こうなると、いままでのパソコンのスタイルが絶対とは言えない。モバイルを中心に新しいデジタルライフのあり方を提案する機器(必ずしもパソコンである必要はない)が必要だ。
2015年を振り返ると、生産性や創造性を高める機器として、パソコンの完成度は本当に高い水準になったと実感する。そしてこの記事では紹介しきれないほど魅力的なパソコンが市場に出たのだと実感する。過渡期ではあるが、改めて見てみると、いろいろ工夫されている製品が多かったし、「使いたい、よくできている」と感じる製品との出会いもあった。
残念ながらそのすべてを紹介することはできなかったのだが、年末年始、ちょっと時間があるという読者は、ぜひ2015年を振り返りながら、ASCII.jpが紹介したパソコンの情報を眺めてもらえたらうれしい!