47万5000ドルと安価な
Convex C2シリーズ
さて、このC1をもう少し高速化したのが次のC2である。当初はCXS(Convex Extended SuperComputer Architecture)という呼び方がなされ、製品名もC1 XLだったが、どこかのタイミングでわかりやすいC2に切り替わったようだ。
このC2ではいくつかの改良がなされている。まずは4コアの密結合プロセッサー構成としたことだ。
このあたりはCRAY X-MPと似ているが、通信レジスターを1024個用意したり、メモリー間帯域を200MB/秒まで広げるなど、性能を落とさない工夫をしている。
※画像の出典は、"THE CONVEX C240 ARCHITECTURE"。
加えてプロセッサーそのものの高速化も行なわれた。C1とC2は基本的なアーキテクチャーには一切変更がない。物理メモリーを2GBまでサポートする程度であるが、製造技術はCMOSとECLのハイブリッドとなっている。
論文によれば、スカラーユニットは合計100KゲートのECLで製造されたが、これは富士通が提供する3000/4500/10000ゲートのECLゲートアレイで構成された。
またベクトルユニットは、20000ゲートのCMOSゲートアレイと4000/4500ゲートのECLゲートアレイのハイブリッドだ。
システム全体としての動作周波数は25MHzであるが、主要な回路部分は50MHz動作となっている。下の画像が当時のプロセッサーボードであるが、ECLのゲートアレイが整然と並んでいるのがわかる。
※画像の出典は、同社の1998年のカタログ“The CONVEX C Series”。
一方下の画像がメモリー用のクロスバースイッチ(とおそらくはメモリーモジュール)で、こちらはECLベースだそうだ。
※画像の出典は、同社の1998年のカタログ“The CONVEX C Series”。
C2シリーズは1998年にリリースされるが、さまざまな構成と動作周波数をサポートした。カタログによればC2世代では以下の6モデルがラインナップされている。
C2世代のラインナップ | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
モデル名 | CPU数 | 動作周波数 | 性能 | |||
C201 | 1 | 18MHz | 36MFLOPS | |||
C202 | 2 | 18MHz | 72MFLOPS | |||
C210 | 1 | 25MHz | 50MFLOPS | |||
C220 | 2 | 25MHz | 100MFLOPS | |||
C230 | 3 | 25MHz | 150MFLOPS | |||
C240 | 4 | 25MHz | 200MFLOPS |
ちなみにこのConvex C2シリーズはお安かった。下の画像はCOMPUTERWORLDの1986年12月号に掲載された新製品紹介の抜粋だが、この当時の予想価格ではプロセッサー1つのもので47万5000ドル、4プロセッサーの最上位構成での135万ドル程度を想定していた。
あるいは実際の価格を調べてみると、computermuseumのページによれば、ロンドン大学バークベック校が1992年にC220を導入したときの価格がおよそ140万ドルだったそうである。
冒頭に紹介した、SCDに納入されたCRAY X-MP/48と単純に比較は難しいが、仮にC240の価格がC220の倍だとすると280万ドルほどなので、Convex C240の価格はおおむね5分の1となる。
一方性能はCRAY X-MPのプロセッサー1台の理論性能が210MFLOPSほどなので、Convexの方は4分の1となる。
つまり価格/性能比で言えばConvexの方が20%ほどCRAYを上回っている。このあたりは同社の目的がきちんと達成された形になる。
→次のページヘ続く (ガリウム砒素を採用したConvex C3)
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