栄えある「iTunes Best of 2015」を受賞!
スマホの常識を変えるリッチさが魅力「MOBIUS FINAL FANTASY」開発秘話
2015年12月09日 22時20分更新
動きの速いスマホアプリは、ユーザーとの距離が近い
――コンソール系開発者がスマホアプリを開発するにあたって、困難なポイントはありましたか。
浜口 GPUは基本的にはPowerVR系で「PlayStation VITA」と同じですので、描画という面ではあまり変わりありません。いちばん違うのは先ほどお話ししたとおり、スマホアプリでは電力消費の点からスペックをを100%使い切ってしまってはダメというところですね。メモリーに関してはiPhone 6sシリーズでは2GBになり、iPhone 5/5s/6シリーズは1GBですが、アプリとして使える領域は512MBぐらいです。意外ですが「PlayStation 3」と同じぐらいなんですね。
――コンソール機のアプリからスマホアプリになってもっとも大きく変わった点を教えて下さい。
浜口 iPhoneなどスマホの世界は、とにかく動きが速いですね。今日イベントがスタートしたら、来週はまた別のイベントがスタートするといった感じです。このようなスピード感をスマホ版のユーザーは求めているんですね。その中で、ユーザーと運営側でコミュニケーションも発生します。コンソール版のファイナルファンタジーは、開発側がイメージしている理想を作り込んでお渡しするケースが多かったのですが、MOBIUS FINAL FANTASYではなるべくユーザーに寄り添って意見を見つつ、取り入れながら「いっしょにいいものにしていく」という流れです。これはコンソールの開発を続けてきた私にとって、もっとも意識しているポイントです。
App Storeは、例えばゲーム内イベント開始日のランキングで売り上げの変化がわかりますし、「こういう施策がヒットするんだ」という動きがリアルタイムで確認できます。こうしたインタラクティブさと速度感がスマホの魅力ですね。公式のツイッターや公式のWiki、SNSもチェックして貴重な意見をくみ上げるようにしています。また、ユーザーとの距離を縮めるという意味では月1~2回の公式生放送もあります。
――ファイナルファンタジーシリーズは非常にファンが多い作品です。今作で採用したFree to Playの課金システムとゲームシステムは、どこでバランスをとっているのでしょうか。
浜口 バランスという点では非常に明確な意思があります。10%の課金ユーザーに依存するビジネスはリスクがあります。エンターテイメントとしてコンテンツを出している側として、それだけバラツキがあること自体もリスクです。ARPU(ユーザーひとり当たりの売上)を無理に上げるのではなく、「課金してもいい」というユーザー層を広げたいというのが、開発チームのポリシーです。これは誰もが思うことで、なかなか実現は難しいとは思いますが、これを実現するには「ユーザーさんにMOBIUS FINAL FANTASYのファンになってもらう」、これに尽きます。真摯にお客さんユーザーと向き合って、一緒にコンテンツを良いものにしていくという姿勢が大切なのです。
また、このポリシーはもちろん課金商品にも適用しています。スマホアプリの課金としてメジャーな方法に「ガチャ」があります。MOBIUS FINAL FANTASYのガチャは“外れがないガチャ”と言っていますが、適材適所はあるものの基本的には外れがありません。例えば星が3つのものでも、ゲーム内で育てることで星5つにすることができます。また、1ヵ月に1回しか買えない「ギフトボックス」はMMORPG的なアプローチで、月額課金感覚でセットガチャなどさまざまなサービスが受けられます。課金した商品の価値を保証することで、ユーザーとの信頼関係を構築したいという観点からこのような方式にしました。
今回、優れた数多くのアプリの中から「iTunes Best of 2015」に選ばれたことは非常に光栄です。スマホゲームというとシンプルなゲームがまだまだ多いという印象もありますが、MOBIUS FINAL FANTASYは「ちゃんとスマホでもリッチなゲームが体験できる」を目指して開発しました。本作がこれまでのスマホアプリという認識を変えるきっかけになればと考えています。よく言われる「スマホだから」というセリフを変えたかったんですね。これを実現するために、より間口が広く分母が圧倒的に多いFree to Playを選びました。より多くのユーザーに「スマホのゲームはここまでできる」というものをお見せしたかったのです。
――「Apple TV」や「tvOS」などの登場とユニバーサルアプリ化により、スマホやタブレットのゲームアプリだけでなく、さまざまなコンテンツが自宅のテレビで楽しめるようになります。ゲームではなく、他のエンターテイメントもコンテンツとしてのライバルとなる中、どのような未来が来ると思いますか。
浜口 難しい質問ですね!ただ、私の4歳の娘も自分でApp Storeにアクセスして自分でアプリをインストールして楽しんでいます。これほど身近にあって、つねに触っているスマホでゲームをプレイして頂くということは、「ユーザーの時間を取っている」んです。ライバルがゲームだけではないのは当然として、テレビや映画も決まった時間に座って鑑賞する時代でもありません。ユーザーが見たいとき、プレイしたいときにすぐに楽しめないとダメなんです。
しかし、ある物語を見て感情移入するという人間の自然な動作は、これからも変わりませんし、ゲームはこういう分野に強いんです。映画や映像作品は自分から動きませんが、ゲームは自分が行動して、それに対するフィードバックがあります。どんなにエンターテイメントのカタチが変わっても、表現するものが変わっても、このインタラクションのカタチは必ず残ると思いますね。それがこの先「ゲーム」と呼ぶモノなのかはわかりませんが、ユーザーに感動を提供できるようなコンテンツを開発を続けていきたいと思っています。
――今後、技術的にチャレンジしたい分野があれば教えて下さい。
浜口 これは個人的な考えなのですが、今の世代の方はみんな周りと「ゆるくつながっていたい」と考えているのではないでしょうか。現在「Ingress」などのオンラインゲームがありますが、あれは今の世代にあった素晴らしいアプリだと思います。周囲の見ず知らずのユーザーとゆるやかにつながることでもっと面白いモノができるのではと考えています。今はゲーム内のユーザーどうしなら協力できますが、これがリアル世界や生活を巻き込んで協力できるといいですね。
最後に。少し宣伝にはなってしまうのですが、1月ごろになるとは思うのですがMOBIUS FINAL FANTASYでゆるくつながりつつ、複数人で協力してバトルを出来るシステムを配信しようとしています。非常に良いものに仕上がりつつありますので、期待していただきたいなと思います。
――本日はお忙しいところ誠にありがとうございました。
iTunes Best of 2015ゲーム部門の情報は以下のサイトでご覧頂けます。
※このサイトはMac版のSafariやiPhoneなどでご覧頂けます。
©SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.